エネルギー効率からみたエネルギー資源の枯渇

2012年10月15日 12:30

昨年、IEAはAre we entering a golden age of gas ? を発刊し、シェールガスが可採になったことなどから天然ガスの可採埋蔵量を250年分以上と発表した。

それより前、統計学者ロンボルグは、その著書「環境危機をあおってはいけない」 の中で、我々の使える石油は未だかつてなく多い、とし、シェールオイルなども含めれば膨大な量の化石燃料があると述べている。これらの情報からは、我々の前にはエネルギー問題は、存在しないように見える。 
しかし、それは本当だろうか? 


ここでは

[1]Steve St Angelo: Peak Silver and Mining by a Falling EROI

[2]Natural Gas: A Critical Look at Conventional Wisdom,J. David Hughes
President, Global Sustainability Research

の内容の一部を紹介し、我々が直面するエネルギーの問題を考えたい。

エネルギー効率から見たエネルギー源 

EPR(energy profit ratio) = EROI(energy returned on investment)とは、産出エネルギーを、そのエネルギーを得るために使ったエネルギーで割った値のことである。これが大きな値になることが、良いエネルギー源の必要条件となり、1を下回るとエネルギーロスが生じることになり、エネルギー源にはならないことになる。 

たとえば、オイルサンドから石油を採取するには、大量の天然ガスを使って乾留する必要があり、得られる石油の持つエネルギーの凡そ3分の2のエネルギーをその製造工程で消費する。従ってオイルサンドのEPR=EROIは1.5となり、オイルサンドから得られるネットのエネルギーは製造した石油のもつエネルギーの3分の1に過ぎない。 

EPRは、変動する。 例えば、原油のEPRは1930年に100あったものが、1970年にEPRは30に低下し、現在は11程度になっている。これは、初期の何もしなくても原油が噴き出る状態から、海水や高温の水蒸気を投入して、原油を回収するというように、投入エネルギーを増やさなければ、原油の回収が出来なくなったことに対応している([1])。

EPRの低下は何をもたらすか、これは文献[1]のアメリカにおける、エネルギー(oil)の産出に要したエネルギーを差し引いたネットのエネルギー産出を示すグラフは以下の通りである。

peak-silver_image023

青い山がネットのエネルギー産出であり、ネットとグロス(赤線)の乖離の拡大が良くわかる。

シェールガス革命という幻想

文献[2]を見れば分かるようにシェールガスのEPRは、ごく僅かに1を上回る程度と思われる。文献[1]ではもっとひどく、シェールガス開発はエネルギーのロスを生じる「逆錬金術」であるとし、次のように述べている: 

Shale Gas wells are such LOSERS, only 28% of them return a reasonable profit.[2] The only way it can be sold to the public is by ANALYST HYPE. There is this grand illusion that because we now have a huge glut of natural gas in the United States, it is time to export the surplus and sell it for peanuts. Not only are energy analysts guilty of propagating this nonsense, many energy companies have joined the bandwagon. Prices of energy are traded in such an incredibly insane system, it behaves as if humans have a lifespan of a gnat. This is the same kind of lunacy the grand oil gurus were stating back in 1999 when oil was $10 a barrel. The oil analysts back then were saying, because there was such a glut of oil on the market, oil would drop to $5 a barrel a stay there for a decade. Silly forecasts from silly people. Today we find, nothing has changed.

問題は可採埋蔵量ではないのだ。 いかに大量のエネルギー源が地中に埋まっているとしても、それを採取するのに、得られるエネルギーと同等かそれ以上のエネルギーを必要とするならば、エネルギー源と見做すことは出来ない。  シェールガスをさらに液化して日本に輸入するとなると、EPRは完全に1を下回る。 エネルギー収支から考えれば、シェールガス輸入は画に描いた餅だ。 

枯渇する石油と低下するEPR

現在、既存の油田の生産能力は、次の図が示すように2年に2008年度のサウジアラビア一国の生産量が減少するペースで減少している。 
PetrobrasSlide7

World Oil Capacity to Peak in 2010 Says Petrobras CEO (updated)より転載)

そのため今後、需給ギャップが拡大すると予測されている。

PetrobrasSlide6

World Oil Capacity to Peak in 2010 Says Petrobras CEO (updated)より転載)

一方、新規油田の発見は大きく減少したままだ。 その上、文献[1]の次のグラフのようにEPRは低下し続けている。 このまま進むと2030年台初頭にはEPRは1に低下することになる(これはあくまで線形補間)。
peak-silver_image024

文献[1]でSt Angeloは次のように述べている。

The world is peaking in global oil production. The downside slope of the graph is much worse when you factor a falling EROI (energy returned on invested) into the mix. If the certain data listed above is correct we may see the USA hit a 1:1 EROI ratio by 2020’s and the world by the 2030’s. The real damage to a modern society starts when the EROI figures reach 3-5:1. When 1:1 is reached….the movie has been over for quite a while and the theater is officially closed for business.

Liquid energy fuels are such an important part of our way of life, to transition to another type of technology or energy would cost countless trillions of dollars in an upgrade. People talk about changing the auto fleet to electric. This sounds nice on paper, but the economics, cost and logistics would make this theory, DEAD IN THE WATER. We have to start making wise decisions with the resources we have left. Until we find ZERO POINT ENERGY or some poor Alien Slob crashes his ship here on earth, we are going to have to tighten the belts, bite the bullet and get to work.

EPRの低下が指し示す未来は、何か、それは、St AngeloやHughesの言うように、低エネルギー社会でしかない。

あとがき: こういう深刻な事情を知らないのか、日本は原発再稼働を先送りし、国民の声に押されて脱原発に舵を切ろうとしている。 しかし、否応なく事態は進行し、エネルギーコストの上昇となって我々に降りかかる。 早期に低エネルギー社会への舵を切らなくてはならない。 あくまで私見だが海底のメタンハイドレートもエネルギー資源とはなり得ないだろう。 もしメタンハイドレートが資源なら、ツンドラの凍土の中にあるメタンハイドレートが既に資源化されているはずだろうと思うからだ。 

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