選挙か正義か、板挟みのアウンサンスーチー --- 坂田 航

2012年10月16日 07:30

アウンサンスーチーがここ数ヶ月「silent」だとして、一部の民主化団体から非難の声が上がっている。ビルマ建国の父であるアウンサン将軍の娘である彼女は今もなお軍政と対峙する民主化の象徴であるが、そんな彼女がどうして批判されるのか、国内情勢から分析する。


2011年6月、カチン州に対してビルマ国軍が17年間の停戦を破って攻撃を再度開始し、約9万人の難民が発生している。それだけでなく、国軍は国際的な救援を妨害し、支援が届かないようにしているばかりか、子ども・女性を性的に暴行したり、強制労働を課す等の人権侵害を公然と行なっている。

また、その直後の夏には西部ラカイン州にて仏教徒と少数派ムスリム(ロヒンギャ族)の対立が激化し、89人が死亡、ムスリム9万人・仏教徒3000人が避難、そのうち最大で7万5000人のムスリムがシットウェのキャンプで生活している。

そんな情勢にも関わらず、民主化運動の指導者的存在であるアウンサンスーチーは国際社会・議会内での言及を控えている。軍によるビルマ国内の少数民族への暴力・虐殺行為などの人権侵害については批判をするものの、具体的な固有名詞の使用は避けている傾向が見られる。それが現在国際社会で非難の的になっているのだ。

ではなぜアウンサンスーチーがそのようなことをするのか。それは少数派である彼ら・彼女らを弁護してもNLD(National League for Democracy/国民民主連盟)の得票には繋がらないと考えているから、との見方がある。
※NLDはアウンサンスーチーが書記長を務める政党で、民主化の象徴的政党。

ビルマの国民のうち約7割はビルマ族であるから、彼らに迎合した政策を訴えたほうがNLDに人気は集まりやすい。少数派のムスリムを擁護するよりも、ビルマ族のことを考えている発言を増やしたほうがビルマ族から支持を得やすいと考えたというのだ。

この説は必ずしも正しいとは限らないが、今後NLDは政府に歩み寄る姿勢を示していることから、選挙での勝利を念頭に置いてアウンサンスーチーが行動をしているのは疑う余地がない。ただここで誤解してはいけないのは、アウンサンスーチーの人権への思いが変わったわけではないことだ。彼女は昔と同じように少数民族の人権を常に念頭に置いて物事を考えているであろうことは容易に想像できる。

確かにいざ選挙という現実を考えてしまうと、どうしても多数派に受けの良い行動をするのは政党としては仕方がないことなのかもしれない。しかしながら、いくら逆境に直面しようとも、彼女が常に掲げてきた人権の重要視の姿勢は変えてはならない。それは選挙という現実を目の当たりにしても同様のことだ。

<<参照>>
Arakan Rohingya National Organization – “About 75,000 Rohingyas in Myanmar camps: Refugee International”

坂田 航
大学生ブロガー
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