一方で高まる金融緩和のリスク:地方銀行

2012年10月19日 17:10

10月30日の日銀・金融政策決定会合で,追加の金融緩和が行われる可能性が高まっています。物価が上昇せず,景気後退傾向にあり,また世界的にも景気減速傾向で,金融緩和を行うことはある程度やむを得ないのかもしれません。

しかしながら,一方でその副作用について,現状ではさらに深刻な状況になっているのではないかと思われます。金融緩和を続けることのリスクもよく知っておくことが必要です。


1. 低金利が続く日本,特に10年国債

前回書いた記事(円高状況は変化するか?日銀)のその後の状況が下の図で確認できます。そこで私が気になったのは,日本の国債金利について,なぜ米国債やEU債務危機との連動性が弱まったのかということです。リスクオフの流れでは日本国債が買われていたのにもかかわらず,それがなぜ戻らないのでしょうか。

20121019_01

最近では円安傾向が現われてきており,遅れて調整が始まったと考えることはできます。あるいは,前回の記事のように,9月の日銀の追加金融緩和による買いオペの影響が出ているとも考えることができます。

けれども次の図をじっくり見て,おそらく別の要因のほうがより強く出ていると思いました。この図は,財務省の統計で,20年国債,10年国債,5年国債,2年国債の金利の平成22年1月からの推移です。長期の方が金利が高くなります。

さらに,下段の図で20年国債と10年国債10年国債と5年国債を描いてみました。

20121019_02

すると,明らかに「20年-10年」は上昇傾向にあり,「10年-5年」は下落傾向にあります。これが意味することは,なぜか10年国債だけが相対的に割高(低金利)になってきているということです。(ただし,5年との差は,中期債金利が下限が近づいたためのイールドカーブの低下もある。)

一つの解釈はEU債務危機にともなって,10年国債が外国人などに買われて割高となっているというものです。しかしながら,スペインの国債金利動向をみると7月24日以降は金利は低下してきており,リスクオフの傾向が変化してきました。外国人が日本国債だけはとっておくとは考えにくい。

直線で7/24の金利差水準を示していますが,日本はそれ以降も,あるいはそれ以降さらにその線を越えて,10年国債が割高になってきています。もし,日銀の追加の金融緩和が効いているのだとしたら,このような相対的な差の拡大は考えにくく,もう少し均一的な変化になるはずです。

2. 追加の金融緩和は地域銀行のリスクを増大させる

そこで仮説ですが,おそらくリスクオンへの変化は日本の国債にも生じているが,それ以上に,10年国債を特別に買い増している経済主体があり,そのため10年国債の低金利が継続されているのではないでしょうか。このときの低金利は表面的なものなので,為替への影響が少なく遅れているのでしょう。

その経済主体はどこかというと,国内の金融機関,とりわけ地方銀行などの地域銀行です。地域銀行は10年国債を特に多く買入れています。

池田先生の「地方銀行の国債リスク」(2011/2/14)という記事がありますが,実はその後も地方銀行は債券の金利リスクを増加させています。(『金融システムリポート(2012年10月号)』47ページ,55ページ参照)(リスク総量は減少傾向)

なぜ,そのようなことが起きているのでしょうか。やはり日本全体では資金が余っていたり,地域の投資機会が少ない(実際に預貸率が低下している)ため,地域銀行は国債の購入をいやおうなしに増やしているのだと予想します。カネあまりの背景には,金融緩和の拡大があります。

問題は,これがどこまで続くかです。地域銀行は10年国債を買い支えることがいつまでできるでしょうか。世界的なリスクオフにより,これまでこの問題は一時的に隠れていました。けれどもそれが終わりそうなため,これからは顕在化する可能性があります。

もし,買い支えが終わり,金利が世界動向と連動して高まり始めると,地域銀行の金利リスクは一挙に顕在化します。そのため,金融政策は出口を見失う可能性があります。これは財政危機につながる危険があるでしょう。(財政危機は現状の段階では政府債務の水準よりも,きっかけが何かということが重要だと考えます。)

経済というのは微妙なバランスの上にあります。単に,金融緩和をすれば景気が支えられるというだけではなく,その一方にある様々な影響を考慮する必要があると考えます。統計的にはまだ明らかではないのですが,30日に金融政策決定会合があるため考えてみました。

岡山大学経済学部・准教授
釣雅雄(つりまさお)
@tsuri_masao

2012年10月22日 追記

10月22日発表の「9月」国債投資家別売買高(日本証券業協会)によると,「長期利付債」売買の差引(売り-買い)は以下の通りで,都市銀行の買い超過が多くなった。< >内は8月の数字

 都市銀行(長信銀等を含む) -14,219 (億円)  <-2,197>
 地方銀行 4,531 <-4,429>
 信託銀行 -4,405 <-4,529>
 外国人 -1,596 <1,547>
 全体では -11,623 である。

すなわち9月に限っては地方銀行はむしろ調整し,逆に都市銀行が(ネットで)買い増していたことになる。ただし,買い付けを増やしたのではなく売り付けを減らしている。

なかなかわかりにくい動きだが,一時的なのかどうかについて,もう少し確認が必要だ。ただし,中期的には記事の通りで,国内金融機関,特に地方銀行の金利リスクをどう解消していくかが問題である。

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