大いなる可能性を秘めた孫正義氏の挑戦 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

ソフトバンクのスプリントネククステルの買収は経済界を中心に思った以上の反応があるように見受けられます。

いろいろ目にするのは「孫正義は嫌い」といった拒否反応を示す人が案外多いことです。その理由はさまざまだと思いますが、大局的に見ると「日本の伝統的なやり方やビューティーさに欠ける」ということではないかと思います。ビューティーさというのは実に抽象的な表現ですが、日本人が日本人のやり方にこだわり、枠からはみ出さないやり方ということであります。おっとりしているとも言えるし、日本という島国の中でぬるま湯に浸かっているとも言えるかもしれません。


日経の電子版のある記事には「… 日本の企業経営者の反応は『そんな大胆な冒険はできない』ということかもしれない。しかし、米国の経営学大学院では、企業に変革をもたらす挑戦をしないのならば、経営者には存在価値がないと教えているそうだ。」とあります。つまり皆によい顔をして丸く収めるというのが一番ダメで51%の味方と49%の敵の中で生き延びる算段を計るぐらいでないといけないということであります。

更に孫氏のツィッターで「少し守りに入りかけている己を恥じ入る。もっと捨ててかからねば」「目標が低すぎないか? 平凡な人生に満足していないか?」と呟くあたり、現状に満足せず、常に前に進むその姿勢には感服するものがあります。

ビジネスも戦争と同じでどうやったら更なる手を打てるか、あるいは手柄を立てられるか、如何に人が考えつかない手段で攻略するか、どれだけ先手必勝の策が練られるか、といったことではないかと思います。

思うに日本のビジネスは政治家と経団連といった組織や「お上」に守られ続けた経営スタイルだったと思います。それは護送船団と同じ発想であり、金融機関や企業が苦しんだ株の持合いにも例えられると思います。逆に言えば一人では戦えないから皆で行こう、ということにも繋がります。

もちろんロビー活動などを含め、経済団体の発言力は維持すべきかとは思いますが、それに頼ることで本来しなくてないならない自助努力が欠如してはいないでしょうか? 楽天の三木谷社長が経団連から脱退したというのはそういう意味で次の日本を頭に描いているのだろうと思います。

もしも孫正義の今回の判断をやりすぎ、と見るならばそれは日本がバブル崩壊後20年以上経つのに浮上できない理由とも言えるのではないかと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。