友人でゲイのディックが結婚しましたが、それが何か?

2012年11月15日 02:56

10月末、ニューヨークの古い友人でゲイのディックがわが家に遊びに来てくれた。彼は9月初め、25年間付き合ってきた恋人のピーターと結婚した。今回のイタリア訪問は、晴れて正式の配偶者となったピーターを伴なっての新婚旅行だったのである。

僕がニューヨークでディックと仕事をしていた頃は、彼がゲイであることはいわば公然の秘密だった。いや、秘密というのはちょっと語弊があるかもしれない。なぜならディックの「秘密」には何も暗いものはなく、また彼自身があえてゲイであることを隠している様子もなかった。

彼はごく自然体で生きていて、周りの人々が勝手に彼がゲイであることを察して憶測したり、噂をしたり、陰で軽く揶揄したりしている、というふうだった。僕が知る限り、ディックが自らゲイであると周囲に宣言したことはなく、人々が彼にあえて「君はゲイか」と聞くこともなかった。

何が言いたいのかというと、要するに、そこは自由と寛容と闊達の風が吹くニューヨークである。ゲイなんて誰も問題になんかしていない、というのが真実だったと思う。

ディックとは25年ぶりに再会した。時どき連絡はし合うものの、なかなか会うことができずに長い時間が経ってしまった。今あらためて考えてみると、僕がニューヨークで最後に彼と会った頃に、ディックはピーターと付き合いを始めたということになる。

初日、ディックとの再会、またピーターとの出会いを喜んでシャンパンを開け、サラミを肴(さかな)に祝杯を挙げた。続けて、夕食を挟んでその晩は大いに飲んだ。二日目の昼、庭でバーベキューをした。僕はその時、温存している1997年物の赤ワイン、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを開けた。1997年物のブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、20世紀最高のイタリアの赤ワインというのが通説である。ディックの結婚にはそのワインを開けるだけの価値がある、と僕は判断したのだ。

2人はとても良い夫婦、ならぬ、良いカップルでありパートナーである。同性愛者への偏見、という理不尽な色眼鏡をかなぐり捨てて見れば、きっと「同性愛差別主義者」でも僕の主張に頷(うなづ)くに違いない。もっとも差別をする人間は、どうしても色眼鏡を捨てられないから「差別者」なんだけれど・・

僕はゲイではないが、同性愛者に対してはほとんど何の偏見も持たないし、もちろん差別もしない。彼らの結婚に対しても賛成である。

僕は今、同性愛者に対して【ほとんど】何の偏見も持たない、と言った。なぜ【全く】ではなく【ほとんど】なのかというと、僕は彼らの結婚には賛成だが、彼らが子供を持つということに対して、少し疑念を抱いているからである。そして、そういう疑念を抱くこと自体が既に同性愛者への偏見、という考え方もできると思う。だから僕は今のところは、同性愛者に対して【全く】何の偏見も持たない、と胸を張って言うことはできないのである。

実はそのことについて、僕は今回ディックとピーターの2人と議論した。それはとても意義深いものだった。そのことと、同性愛全般というテーマでは、今後もまた書くつもりでいるが、僕はその前にこのエントリーで、ゲイの人たちを偏見・差別する者にあえて聞いておきたいと思う。

即ち

「ゲイの人たちは、ゲイであることであなたに何か迷惑をかけていますか?」

と。

彼らはゲイではない者に別に何らの迷惑もかけない。もちろん、家族や環境などの状況によっては、ゲイであることで波風を起すケースもあるだろう。しかし、そういう場合でも「先ず同性愛者への差別・偏見ありき」という事例がほとんどだと思う。

ゲイの人たちは僕に対して何の迷惑もかけていない。だから僕には彼らを差別する理由がない。差別しない理由はそれだけではないが、僕に何の迷惑もかけないという事実は、それだけでも差別しない巨大な理由になると思う。差別するどころか、実は僕はどちらかと言うとゲイの人々が好きである。

ディックをはじめとして僕には何人かの同性愛者の友人がいて、知り合いも少なくない。そして多くの場合彼らは、ディックのように性格が明るくてユーモアのセンスに溢れ、才能が豊かである。そうではないケースももちろんある。が、僕が知る限り、ゲイの人たちは面白くて有能な者である割合が高い、と感じる。ただ僕が彼らを好きなのは、才能が豊かだからではなく、性格が明るくてユーモアがある、というのが主な理由だけれど。

元々そんな事情があるが、僕の大好きな友人のディックが、彼のゲイの恋人・ピーターと正式に結婚した。25年という長い春を経て。そして米ニューヨーク州が同性愛者の婚姻を正式に認めた、という歴史的な変革を経て。

僕は20世紀最高峰のイタリアワイン、1997年物の「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」を開けて、妻と共にディックとピーターの結婚を祝った。ほぼ15年の歳月をかけて熟成した赤ワインは絶妙な味がした。25年の歳月をかけて愛を育て、結実した2人の友のように・・

仲宗根雅則
テレビ屋
イタリア在住

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