ハイパーインフレは起きない 質問への回答

2012年11月21日 12:38

前回の記事に対して、ワシントンのあるエコノミストから質問を頂いた。

ここで、それに対する回答を公開することで、多くの人々の疑問に答え、それにより、何が起こると考えられるか、わかりやすく解説したい。


小幡様
量的緩和は景気を悪化させる、という話は良く理解できました。
他方で、ハイパーインフレは起きないという点は、いまだに理解が及びません(ハイパーインフレが起きる、という説明も同様に納得できないので、結局、どうなるのか分からないというのが正直なところ)。
以下が疑問点です。

というメールを頂いた。これに回答することにより、何が起こるかについて、説明したいと思う。

(1)日銀引受で国債発行した場合、市中消化量は変化しないのだから、「それだけで」国債価格が下落することはないのでは?

回答:そうなったら、民間保有者が売りに回ります。売りのサインになり、投機的な売りも入って仕掛けとなります。かなり下がったところで、買いに回り閉じます。日銀の買い支えは、実需というか、物理的な発行に対するもので、買う量も宣言しているので、投機家としては戦いやすいです。

(2)他方、仮に日銀の国債購入により通貨が供給されたとしても、市場の通貨需要に変化がなければ、結局日銀当座預金に積みあがるだけなのではないか?

回答: それはそのとおりの可能性もある。しかし、資産価格が上昇すると思えば、その資産の購入に資金を回すはず。それは、日銀の購入の規模および、それを他の投資家がどう捉えるかによる。資産購入に資金を回した場合、それが国内資産であれば、株高、不動産高になるが、普通の小国の場合は、海外に逃避する。日本売りとなり、すべては暴落する。これが普通の国の財政破綻、インフレ、経済崩壊のシナリオ。

(3)実物資産インフレのリスクはあるが、日銀が実物資産を直接購入するのでなければ、ゼロ金利状態の現状に比べてリスクは上昇しないのではないか?

回答:国債から資金が移る。現金を資産に投資するインセンティブが生まれる。金利ゼロで借り入れてリスク資産に投資するいわゆるキャリートレードも起こりうる。

(4)ギリシャのように自国通貨を持たないわけではないので、原理的には日銀はいくらでも国債を買い支えることが可能ではないか?

回答:無制限には現実的には買えない。日銀が音を上げるまでに、投資筋が音を上げればそうだが、実際には、売り浴びせ続け、そうなると、名目金利が上がってしまっているから、民間経済主体、事業体はカネが借りられない、金融機関は時価会計により破綻寸前、財政当局も新発国債の名目利回りが上昇し、コストが膨れ上がる、などの理由で、日銀に何とかしろ、お前の責任だと圧力がむしろかかる。制御できなくなっているから、現象としては金融的に解決するしかない。こうなると、引き締めを行わざるを得なくなり、無限の買い入れはやめることになる。

(5)問題が起きるとすれば、国債価格が下落し、かつインフレにもなっている場合。けれど、そもそもインフレは起きそうにない。

回答:インフレは起きない。円安による、輸入インフレは起きる。エネルギー関連を中心にGDPの一割が影響を受けるとして、そこが80円がたとえば100円になったとすると、2.5% インフレ率は3%程度になるかもしれない。ただ、このときは、名目金利が上昇しているから(たとえば8%とすると)実質金利は5%で結構きつい。だから不況にはなっているはず。円安による輸出効果が出る前に、金融機関の破綻が起こり、不況となるだろう。

(6)他方、(財政を通じて)インフレが起き、国債価格が下落したとしても、合理的に考えれば国債の「暴落」は起きない(買い手が無い場合、無理に値を下げて売るより保有し続ける方が合理的)

回答:インフレは起きない。先に起きるのは、国債価格の下落。このときに暴落となるかどうかは、そのときの投資家の動向次第。政治の対応が悪ければ、投機売りが勢いを増し、そうなると投売りが続く可能性はある。合理的に動けるとは限らない。一定程度下落すると自動的に売らなければいけない投資家、保有者もいるので。ただし、そのときは、日銀が買い支えることになるだろう。そこで押し戻される可能性はある。

(7)結局、恐いのは、「不安」によりインフレ予想が生まれる場合や、国債の狼狽売りか。狼狽売りに日銀が対抗しようとしても、日銀保有資産の価値下落→通貨信認の毀損を通じてインフレが加速する。金利で抑制しようとしても、インフレ予想は合理的な理由に基づかないので、抑制できない。こういった、「不安」や「狼狽」が連鎖すれば、ハイパー・インフレは起き得るのではないか?

回答:何度も言うが、インフレと国債の暴落とは別。一般消費財市場と資産市場とは別。金融的現象は、まず、資産市場のみに起こる。だから、国債が暴落し、名目長期金利は急騰する可能性はあるが、このとき、短期金利を引き下げても金利は下がらず、むしろ (国債以外のリスク)資産インフレを加速する。国債を買い入れて対抗するしかない。このときに、マネーが市場にあふれてインフレになるというが、このときもマネーは資産に向かい、消費財には向かわないので、一般財のインフレにはならない。円安による輸入インフレのみ。小国であれば、輸入依存度は高いが、日本は高くなく、エネルギー、食料以外は、国内生産により需要をまかなうことが概ね可能と思われるので、輸入インフレは、経済全体のインフレとしては、高いインフレ率にはならない。

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