アコーディアゴルフ株へのTOB「たかが20%、されど20%」 --- 山口 利昭

2012年11月22日 07:00

アコーディアゴルフとPGMといえば、今年6月の「24時間を超える株主総会」で委任状争奪戦を繰り広げた同業者ですが、いよいよ第2ラウンドが勃発したようです。11月15日にPGM側が株式公開買付(TOB)の公告を行い、前日値の株価に50%のプレミアムを付けて一般株主から株式を買い付けるとのこと。これに対して11月20日、アコーディア側としては、金商法上の(TOBに賛同するかどうか)意見表明は未だ行っていないものの、PGM側の主張事実に認識の相違があるとする説明を開示しています。


アコーディア側がTOBへの意見を表明するためには、おそらく同社の社外取締役や上場規則上の独立役員(同社では社外監査役)の意見、そして外部第三者の評価結果などを参考にしなければならないでしょうから、そういった意見等を待って、必要があればPGM側に質問をしたうえで開示する、ということになると思います(しかし同業者による敵対的買収といえば、王子・北越のバトルがなつかしいですね)。

すでに「一個人株主」さんよりコメントをいただいておりますが、なぜTOBによる取得予定株数の範囲が下限20%、上限50,1%なのか、というのは私にも実はよく理解できないところです。上限50、1%というのは、東洋経済ニュースにおけるPGM社長さんのインタビューにもあるように、今後の経営統合まで企業価値の推移を見守りたい、という一般株主さん方は、そのままお持ちいただいて結構です、というPGM側の余裕の姿勢なのかもしれません(ただし、取得のための資金が不足しているのでは?という見方もできるかもしれませんが・・・)。

いっぽうの下限20%ですが、これはプレミアム50%上乗せということと併せて「なにがなんでもTOBは成立させたい」というPGM側の強い意思の現れではないでしょうか。しかし一般に経営に関与するためには、最低でも(重要な経営判断に拒否権を持ちうる)34%程度を取得することが目的とされるので、なんで20%なのか、20%で何ができるのか、という疑問もわくかもしれません。いくらPGM社の親会社が80%の株式を保有しているとはいいましても、多額の買収資金を投入してまで、20%の株式を取得するメリットがどこにあるのか、持分法適用会社となること以外にも合理的な説明が必要となるのではないでしょうか。

たしかにベンチャー事業等において、株式に流動性がない場合や株主間契約を締結する場合のように、元々経営の安定性が図られているケースでは、35%が重要な意味を持ちます。しかし、アコーディア社のように株式の流動性が高い上場会社の場合には、20%(関連会社等を含めれば23%ほどではないでしょうか)というのも相当な威力になるのではないかと。これはヤクルト本社とダノンとの攻防を見ていても明らかでして、20%のヤクルト本社株式を取得しているダノンに対して、ヤクルト本社がたいへんな交渉を続けているところからも頷けるところです。

ましてや、6月の委任状争奪戦で、PGM側(オリンピア側)としては、一般株主のPGM社に対する賛同は、そこそこ得られるとの確信を得たのではないでしょうか。最低でもTOBで20%を取得すれば、十分に経営に関与できるとの予測があるものと推測いたします。例のトライアイズの元監査役さんのケースように、会社側が、わずか22、2%の株式を自由にできるだけで特別決議の必要な監査役解任決議を通してしまえるのです(1/3×2/3=0,222)。それだけでなく、機関投資家等の他の大株主への発言権も強くなりますし、第三者割当増資等に対して(主要目的ルール等により)法的に有利な立場にもなれます。現実の株主総会を念頭に置いた場合、この20%というのは、かなり意味があるのではないかと思われますが、いかがなものでしょうか。

なぜ下限が20%なのか、会計ルールの適用や実質影響力以外に、もっと根源的な理由がございましたらご教示ください。本件のようなM&Aネタは、専門家によって関心事が異なりますが、ガバナンスの視点からすると、アコーディア社の社外取締役や独立役員という立場であえば、どのようにふるまうべきか、興味のある視点から、またいろいろと眺めていきたいと思っています。

追記:masakoさんのコメントから示唆を受けましたが、通常は事前警告型の買収防衛策は20%以上の大規模買付行為によって発動されることになりますが、これと関係あるのかもしれませんね。先にとりあえず20%以上の株式を保有してしまえば、たとえ経営権を取得できなくても、防衛策がなければ交渉を有利に展開できるのではないか、との狙いかもしれません。いまのところアコーディア社は買収防衛策を導入していませんので、今後の防衛策導入をけん制することが目的、というのは有力な考え方かと思います。


編集部より:この記事は「ビジネス法務の部屋 since 2005」2012年11月21日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった山口利昭氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はビジネス法務の部屋 since 2005をご覧ください。

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