イスラエルの戦略をどう読むか --- 岡本 裕明

アゴラ

イスラエルがパレスチナ自治区ガザとの戦いに今、立ち上がったのはなぜでしょうか? 私はある意味、不意を突かれたと思っています。なぜならばイスラエルの当面の敵はイランだと思っていました。ですので、この時期に隣地との戦いとは奇妙な感じがいたしました。

まずタイミングについては明らかにアメリカの大統領選挙の結果を待っていたと思われます。以前、このブログにも書きましたが、イスラエルのネタニヤフ首相は共和党が勝つか民主党が勝つかによってポジショニング変わってきますのでその結果を踏まえた行動オプションがあったのだろうと思います。


もともとイスラエルが天敵イランを攻撃するには戦略的に難しいところがあります。それは空路の確保であります。イスラエル空軍が途中の国の領空を通過する了承が取れない場合、紅海経由となり攻めにくいとされています。ところがイランそのものが経済制裁などで国内経済は相当厳しいのではないかという噂もあり、二ヶ月ぐらい前にはトルコ経由でイランが大量の金を購入したとされています。私は自国通貨の暴落を受けての対応だったと見ています。

ならば、イスラエルとしてはもう少し時間を稼いでおけばイランは自壊とまではいかなくてもかなり弱体化するかもしれないと見ていた節はあります。

ではなぜ、ガザなのか、といえばそこにイスラム原理主義のハマスが活動しており、ハマスに武器が着々と集まっているということから先制攻撃でそれを抑えるというのがイスラエル側の主張であります。原理主義という言葉は若い方にはとっつきにくいのかもしれませんが、「ある思想の究極」であると言っても良いかと思います。

私が大学生の時、「原理研」と称する活動が大学サークルルームの一角にかろうじてありましたが、多分、60年代、70年代の学生運動の最後の名残だと思います。今でもあるのかは知りませんが、少なくとも日本ではもはやあまりポピュラーではないでしょう。ですが、宗教上の原理主義となるとタリバンもそうですし、それを暴力に訴えるテロリストのアルカイーダにも繋がってきます。ただし、ハマスの場合は政党を持つもう少しきちんとした組織ではあるようですが。

ではなぜハマスに武器が集まっているかといえばそれが結局アラブの春が原因だった、といわれており、まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりだったということでしょうか?

さて、この戦争、収まるのでしょうか?国連やフランスなどの必死の停戦の呼びかけをふまえどこかで停戦するとは思います。ただ、オバマ大統領はアラブの春の時同様、今回も比較的後方支援的なポジションの発言となっています。多分、財政の崖問題で外交まで手が回らないというのが本音かもしれません。

イスラエルとしてもアメリカの本格的支援がなければこれ以上突っ込むことは出来ませんし、ネタニヤフ首相としては来年早々のイスラエルの選挙における「戦歴」をアピールできますのでほどほどのところで止めると見るのが正解だと思います。割と早い終結になるのではないでしょうか?そしてイランとの対決のエネルギーは蓄えておくということでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年11月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。