国債の「市場原理」からみれば日本は財政破たんしていない --- 藤井 まり子

アゴラ

「日本国債10年物利回り:0.70%」の超低金利でも「財政破たん説」が流れる「怪」。

日本の財政破綻、財政再建の重要性の必要性が叫ばれるようになって久しいです。はや15年以上の歳月が流れています。

1994年から2008年までの15年間の日本国債10年物の利回りの推移を眺めてみても、ここ15年間、トレンドとして、日本国債の利回りは下がる一方です。ここ15年の間、日本国債10年物の利回りはずっと2.0%以下で推移しているのです。

この低金利のどこが「財政破たん」なのでしょうか?


それなのに1997年には、橋本内閣が、日本の「財政規律」を重んじるあまり1997年4月1日に消費税を5%へと増税しました。
当時も、「イタリアでは、財政破たんが起きてキャピタルフライが起きている!!! このままでは日本の財政もイタリアみたいになってしまうかもしれない!!!」といった「怪」情報が、日本国内でも大量に流されました。
なにをかくそう、この私も、当時は若かったのでこの「怪情報」にすっかり騙されてしまったくちの一人です。

2004年に財務省が為替介入をして「ドル高円安」を演出したときも、外貨建ての金融商品を大量に売りさばきたい金融関係者たちから、「日本の財政破たん」の「怪情報」が大量に流れました。
多くの人々が慌ててドル国債や外貨建て債券や毎月分配型の外債ファンドを購入しました。
こういった人々は、2008年のサブプライム危機をきっかけとして巻き起きた「急激な円高」「円キャリートレードの急激な巻き戻し」で、多大な大やけどを負ってしまいました。

さて、話を「日本の財政破たん」そのものに戻しましょう。
2012年12月、現在の日本国債10年物の利回りは、およそ0.7%前後で推移しています。この0.7%という「異常な低水準」の、どこが「財政破たん」なのでしょうか?

さらに「2010年春から2011年12月まで世界中のマーケットて吹き荒れた欧州ソブリン危機」の例でも分かったように、スペイン・イタリアなどの大国の場合は、一つの国が財政破たんしそうになるときは、もちろん、長期金利が急騰します。
しかしながら、大国の場合は、長期金利が急騰するときは、突然急騰するのではなく、じわじわじわじわ、ある程度時間をかけて、金利がゆっくりと上昇してゆくのです。

もちろん、日本はイタリアやスペインよりは大国です。
しかも、日本の場合は、共通通貨ユーロに加盟しているイタリアやスペインと違って、「円」という独自の通貨を保有しています。
その日本では、国債の長期金利でも、欧州ソブリン危機とは正反対のことが起きています。
すなわち、今の日本の長期金利は、じわじわじわじわ時間をかけて、ゆっくりとゆっくりと下がって来ているのです。

このことは、何を隠そう、日本国債の流通マーケットでは、「日本国債への需要量のほうが日本国債の供給量よりも、はるかに多い」ということを意味しているのです!!!

財務省が何と言おうと、日本国内の「まずは増税ありきの財政タカ派」「20世紀型の古い『財政の規律』を重んじる人々」が何と言おうと、日本の国債マーケットは、「日本国債の供給が足りない!!!」「日本国債への需要が多すぎて、国債の供給量(国債の発行量)が追い付いていない!!!」と、叫んでいるわけです。

日本の国際マーケットは、「日本国債の発行量が足りない!」と、悲鳴を上げているといってもよい。
すなはち「国内外で、日本国債を購入したいという機関投資家が多いのに、日本財務省が日本国債の発行を大いに渋っている。日本財務省は新規国債発行を渋りすぎている。」ということを、厳然と意味しているのです。

もちろん、こうのように「日本国債のマーケットでは、日本国債の発行量が足りていない!」と聞くと、とても驚いてしまう人が多いと思います。

かくいう私も、こういう話を、山崎元氏などのマーケット関係者から初めて聞かされたとき、最初は(5年前だったかな?)、「財務省が国債の発行を渋っているだって!!!???」「私は騙されていたの!!!???」と、とってもびっくりした記憶がいまだに鮮明です。

そうなんです。
この私も5年前まではすっかり、騙されていたのです!
日本国内の「まずは増税ありきの財政タカ派たち」や「財政破たん論者たち」が大量に流す「日本の財政破たんのうわさ」に、わたしもすっかり騙されていたのでした。

「真実」は、「日本国債の発行量が少なすぎる」「日本国債の供給量(発行量)が需要量に比べるとはるかに少ないので、日本国債の利回りは、ここ15年間、ずっとずっと『異常なまでの低金利』だったし、その低金利も、じわじわじわじわ、さらなる低下を続けてきた」のです。

藤井 まり子
ブログ:貞子ちゃんの連れ連れ日記