日本経済の実力と冷静に向き合おう

2012年12月05日 18:30

前記事:「景気は何故悪いのか?」で書いたように、日本はエネルギー、食糧、資源を海外に依存しているために、海外に貢献することでしか、経済成長できず、内需主導の経済成長は起きない。

日本を一つの生物と捉えれば、外部からエネルギー(=食糧)を得ているため、血液の循環を良くしたりしても(=金回りをよくしても)、成長には繋がらない、海外への貢献を増大させ、海外からエネルギー(資源、食糧もエネルギーに換算)を得る力を増強しない限り、日本経済の成長はない、と書いた。


これは

物質的豊かさ = エネルギー量 × エネルギー効率

ということから必然的に導かれることで、栄養を摂らずに、生物が成長するはずがない、という位、当たり前の話である。

日本の経済力の源泉

それでは、日本の経済力の源泉は何かというと、それは、日本人の労働力と蓄積してきた技術力である。資源小国である日本は、その労働力技術力だけが頼りの国である。 

国際社会で、日本が確固たる地位を築くには、海外のそれと比較して、高い労働の質と技術力が必要である。 「経済成長」を、という前に、それらの前提条件が満たされていなければ、ならない。 

しかし、その前提条件は満たされていない。 端的に言えば、世界の中で相対的に、日本の労働の質は低下し、高齢化で労働力そのものが低下し、技術力は下がっている。 これこそが、日本経済衰退の原因である。

これ以上でもこれ以下でもない。なぜ、こんな当たり前のことを忘れて、「公共投資の拡大だ」、「デフレ脱却だ」、「日銀法の改正だ」と政治家が主張するのか、私には全く理解できない。 現状を改善する努力をせずに、「金をばら撒け」、「もっと金をよこせ」と言っているようにしか私には聞こえない。  

こういうことを主張する前に、日本人の労働者は、世界の中で、どれほど優れているか、日本の技術力は世界の中で如何に圧倒的な力を持っているのか、きちんと示さない限り意味がない。 

私の正直な意見は、世界の中で相対的に見た場合、日本の労働力の質は、かつてのような高さはなく、技術力もかなり低下しているというものだ。 

技術力、人材、それぞれについて少し点検してみよう。 

日本の技術力の優位性はまだ健在だろうか? 本当に技術力が圧倒的なら、現在苦境にある日本の電機メーカーも、画期的な新製品を世界に向けて発信し、アップルやグーグルを圧倒しているだろうし、本当に、日本人の労働力が優れているのなら、もっと世界の国々が日本に投資しているはずだろう。

実際、日本の電機メーカーは、有機ELパネルの大型化では、サムスンに先を越され、有機ELパネルでは韓国勢に叶わない状況になっている上に、スマートフォンでも出遅れており、今後、基幹部品で韓国勢に負けることになると、復活は難しい。  

全体的に見て、日本の技術の優位性は、かなり失われている。

一方、人材という面で見て、世界的に見て優れていると本当に言えるのだろうか。 

私は大学で長年、数学を教えているが、率直に言って、学生の数学力の低下は著しい。 また、「今、日本企業の理系学生採用は海外へ」

工学系の中でも、機械系、電子・電気系という、多くの日本のメーカーが必要としている学生の質が相対的に下がってきています。例えば東京大学では3年に進級する際に試験によって専攻を決めていきますが、ここ数年、機械系、電子・電気系進学者の合格ラインが著しく低くなっているというデータが出ています。これらの分野は昔は名門・花形だったのですが、今では「他に入れないから」「電気は好きではないけれど」という学生も入れる状態になってしまっているということです。

という記述があるように、理系人材の質が下がってしまい、企業は海外に人材を求めざるを得なくなっている現状がある上に、昔から言われるように、文系学生は勉強しない。

私は1986-88年にアメリカのハーバード大学に留学したが、印象的だったのは、午前3時に図書館に行っても(アメリカの大学の図書館は24時間開いている)沢山の中国人学生が勉強していることだった。その当時から、将来は中国が力を付けてくると思っていたが、それが、現実のものになっている。 私の専門、数学のように、国境がなく、個人の能力が全ての学問では、力関係の変遷は手に取るように分かるのである。 

このように、日本の人材の質は、世界の中で相対的に見て、決して高いとは言えない。

以上、技術、人材という日本経済の成長の原動力について簡単に点検したが、正直なところ、現在の日本経済の状況は、実力以上とさえ感じられる。 

選挙が近づき、政治家は、「デフレ脱却により、日本経済を復活させる」とか、「日本経済再生」といったスローガンが連呼されているが、私には、何を言っているのだろう、としか、思えない。 日本経済を成長させたいのなら、海外から優秀な人材を獲得すると共に、雇用の流動化を進めて、限られた人材を有効に使うと共に、教育に力を入れ人材の質を高める以外にない。 

自民党が主張するように、日銀を政府が支配下に置き、公共事業で金をばら撒くといった社会主義的な政策を行っても、実力以上の経済状態は持続しない。 国際社会の一員として生きるしかない日本が、国際競争に背を向ければ、悲惨な結末になることは疑いようがない。

私は、日本人を信じているし、信じたい。 選挙が近付いた今、有権者の方々にお勧めしたいのは、虚心坦懐に、日本の実力を世界標準に照らして検証することである。

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