もらえるものはもらおう、一度もらったら離さない

山田 肇

主に過疎地にブロードバンドを提供するために、地域WiMAXが2008年にスタートした。多くの地域ケーブルテレビ会社が手を挙げ、事業者免許が付与されている。しかし、普及は進んでいない。総務省の情報通信統計データベースには、ブロードバンドサービス等の契約数の推移が掲載されているが、2012年6月時点でBWA(ブロードバンドワイヤレスアクセス)の加入者数は305万である。このうち、UQコミュニケーションズのWiMAX加入者が291万で、Wireless City PlanningのAXGP加入者13万だから、地域WiMAXは1万加入者に満たない。

地域ケーブルテレビはケーブルインターネットを提供しているので、それと共食いする地域WiMAXの普及には熱が入らない。それでも、総務省が地域WiMAX推進の方針を掲げたので、他社の参入を防ぐ意図で、「もらえるものはもらおう」と手を挙げたのである。


総務省はWiMAXが利用している帯域を拡大する方針であり、その準備として2.5GHz帯広帯域移動無線アクセスシステム(BWA)の利用に係る調査を実施し、その結果が公表されている。これは、とんでもない調査結果である。ケーブルテレビ無線利活用推進協議会と地域WiMAX推進協議会が、一言一句変わらない回答をしているのには笑わされる。もっとおかしいのは、地域WiMAX事業者が「今後のトラヒックの逼迫」に対応したいと言っていることだ。加入者がいないのだから、トラヒックが逼迫するはずはないのに。地域WiMAX事業者は、そもそも「もらえるものはもらおう」と獲得した免許にすぎないのに、「一度もらったら事業者免許は死んでも離さない」と考えているようだ。

すでに免許を持っている事業者にヒアリングして次の方針を定めよう、という総務省の姿勢が疑問である。これは今の電波行政の問題点を象徴するものであり、新自民党政権は改革に乗り出してほしい。

山田 肇 -東洋大学経済学部-