安倍政権の真の目玉人事は三木谷氏 ---新田哲史

2012年12月22日 11:28

●視点が良かった日経の記事
今日の日経新聞は目の付け所がさすがだと思った。
紙で購読されている方は4面(東京14版)の左手を参照いただきたい。「新経連、安倍総裁と会談」の記事だ。新経連の知名度は一般にまだ浸透しきれていないので、一応触れておくと、正式名称は「新経済連盟」。代表理事はご存じ、楽天の三木谷浩史氏。理事は、サイバーエージェントの藤田晋氏、フューチャーアーキテクトの金丸恭文氏、GMOインターネットの熊谷正寿氏、ライフネット生命保険の岩瀬大輔氏の4人。ベンチャー界のスーパースターが顔を並べている。日経によると、金丸氏が安倍さんとパイプがあるそうで、政権始動前にこの会談が実現する運びとなったようだ。


このニュースのツボは、むしろサブ見出しの「IT企業など経団連に先手」だ。日本維新の会の石原代表が「タヌキみたいなオッサン」と評した(笑)経団連の米倉会長や、日本商工会議所の岡村会頭に先んじての会談実現である。記事では、三木谷氏が経団連を飛び出して新経連を組織した経緯に触れ、「新興企業が自民党政権に食い込むのか注目が集まる」と煽る。そして記事の最後では、財界ツートップの米倉、岡村両氏が「体調不良」を理由に安倍総裁との会談がまだ実現していないとダメ押しの記述をしている。

眠気まなこで紙面を開いた日経4面を開いた直後は、右肩にある「ネット選挙 機運高まる」の記事に目が留まった。昨日の三木谷氏らが会談でネット選挙を申し入れた記述がなく、例によって新興企業の存在感を軽視しているのかと一瞬思いきや、同じページのエラく離れた位置に件の記事を配置していた。新聞社時代に半年余りレイアウトの部署で紙面づくりに携わった経験があるが、二つの記事は相関性が強いのだから、私がこの面の編集担当者なら薄めの仕切り線で隣り合わせに組みますけどね。ちょっと読者的には不親切だな。

●組閣よりも目玉人事
ま、それはそれとして、安倍政権の景気浮揚策を巡っては、インフレターゲットを始めとする金融政策に焦点が過度に集まり、選挙後は「株価が劇的に回復したぜ!」的な期待感満載の報道が目に付く。しかし経済政策は金融政策だけでなく、民間企業の国際的競争力を強化し、時代に合わせた産業構造に変えていかなければ片手落ちも甚だしいのは、エコノミストでない私でも……いや中学生にだって理解できるお話だ。いまや日本の電機大手が束になってもサムスンに勝てない惨状。旧来型の公共投資をしたって景気浮揚の特効薬にならないことはこの20年の経験で十分学んだわけで、200兆円を投じる国土狂人…もとい、強靭化計画なんて大丈夫かいな?と心配は尽きない。筆者は、数少ない政界人脈の一人がたまたま安倍さんの側近なので、当選のお祝いメールを送った時に「金融政策プラス規制緩和、産業構造転換あっての景気浮揚ですよ」と念押ししたほどだ。

ただ、安倍さんは思ったほど旧い政治家ではないようだ。橋下さんが去年の夏だか、維新への引き抜きを画策したと言われ、Facebookを存分に活用し、時には1万を超える「いいね!」を集めるだけのことはある。政権発足に、既存の経済団体よりも先に三木谷さんたちに面会したことは、産業構造の転換の必要性をきちんと認識し、さらにはTPP参加後の日本の生き残り策を本音では模索しているのではないだろうか。

新政権では、経済財政諮問会議の復活に加え、日本経済再生本部の発足が目玉となる。昨日の会談後には三木谷さんを再生本部に招聘する考えを明言した。実現すれば、“タヌキ親父”の話よりも、永田町や霞が関にはよっぽど刺激になるに違いない。その意味で、安倍政権の目玉人事は、組閣よりも三木谷さんであると言える。

●“三木谷効果”の余波にも期待
三木谷さんの“政権入り”は、メディア側にとっても「新興企業」に対する認識を変える契機となればと思う。ITバブル崩壊後、日経では新興市場低迷でベンチャー専従の記者が激減したと聞くが、大企業重視の取材シフトを敷いているメディアのマインドにも少しは影響を与えるだろう。まぁ、そもそも、今や日本を代表するネット通販に成長した楽天を「新興」と称して、そこいらのヘッポコなベンチャーと一括りにするのもおこがましいんだけど。

あとは三木谷さんたち「新興」企業のトップリーダーたちが政治への影響力を高めることによって、後に続く若い経営者の方々が政治への関心を取り戻すきっかけにもなってもらいたい。ライブドア事件以後、三木谷さんの少し下の世代の、例えばホリエモンあたりの70年代生まれの方々は、アレルギーすら見せることもある。以前も取り上げたが、元ライブドア幹部が「間違ってもTシャツを着て、『稼ぐが勝ち』と言ってはいけません」と述べたように、この世代の政治や日本社会に対する諦念が漂う。これは打開したい。

かつて私が取材したプロ野球の世界では、今季引退した阪神の金本選手が「アニキ」と呼ばれ若手を引っ張っていたが、「新興」企業のアニキである三木谷さんがどこまで安倍政権の政策形成に影響力を及ぼすか大いに注目している。あ、でも、「日本人は仕事中の言語は、英語しか使ってはいけません!」なんて法律は作らないでくださいね。俺、英会話が大の苦手なんで。。。(汗)

新田 哲史(にった てつじ)
メディアストラテジスト

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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