読んではいけない『出版・新聞 絶望未来』

2012年12月23日 09:00

「読んではいけない」と題して池田信夫氏が書評を連載していたが、僕も「読んではいけない」指定の書籍に遭遇した。東洋経済新報社から2012年11月に発行された、山田順著『出版・新聞 絶望未来』である。

この本の最終章は「デジタル化は不況を招く」である。この見出しに象徴されるように、デジタル化の波が出版・新聞衰退の原因と言いたかったらしい。しかし、出版・新聞産業へのデジタル化の影響が検証されていないので、主張はさっぱり理解できなかった。


音楽関連産業は1996年がピークで、それ以来、縮小を続けてきた。1998年にはナップスターが登場し、ネット上で音楽コンテンツを交換する習慣が生まれた。だから、デジタル化が衰退の一因であるというのは、まだ納得できる。出版・新聞産業もピークは1990年代後半だが、それ以降、違法な出版・新聞コンテンツがネット上にあふれただろうか。そういうことはない。それでは、なぜ読者が離れていったのだろう。ここを分析しなければ衰退を止める策も生まれないが、この本にはこの分析が欠ける。

「デジタルは悪」という思い込みからスタートしているから、「Stay hungry. Stay foolish」はエリート大学生への訓示で、それをありがたがる貧民は愚かと、まげて解釈して見せる。

困るのは、東洋経済新報社という経済関係ではそれなりの出版社から、このような粗雑な本が出版されたことだ。良質の原稿と良質の編集によって読者に評価されるヒットが生まれ、絶望未来にも歯止めがかかるというのに。

山田 肇 -東洋大学経済学部-

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