安倍政権への期待と不安

2012年12月24日 11:52

あさってにも概要があきらかになってくる危機突破をめざす安倍新内閣ですが、政権に復帰できたのも、国民からの強い支持を得てスタートするというよりは、民主党政権に国民がレッドカードをつきつけた結果でした。そのことは、なんとしてでも実績を生み出さないといけないという緊張感につながり、党内が結束させる原動力にもなるとしても、逆にそれが焦りとなれば裏目にでることにもなってきます。国民の多くは、なんとか閉塞した状況を打開して欲しいという期待と、ほんとうに自民党の体質が変わったのかという不安とが入り混じった気持ちでいるのではないでしょうか。まあまだ分からないないことが多いのですが、期待できるのは外交で、不安材料は経済政策だと感じています。


外交では強い姿勢を取る安倍総裁に中国や韓国は警戒感があるようですが、逆にそれが外交手段を広げ、民主党政権がこじらせてしまった日中、日韓関係を改善するのではないかと感じます。交渉とはそういうものだと思います。

野田総理とは対照的だと感じます。野田総理は各国の政権交代期という微妙で不安定な時期に、尖閣の国有化を急いでしまったことが最悪の事態を起こし、日中の対立、さらに日韓の関係までこじらせてしまいました。素人から見ても、読みが甘く、また決定が唐突でした。決めることができる政治を意識するあまり、決定の質が犠牲になったのです。

しかし、状況は変わりました。中国、韓国も政権交代が行われ、また日本も安倍政権が誕生することで、互いに事態の収拾をはかりたいところだと思われます。すでに、中国は安倍内閣当時の「戦略的互恵関係」をもちだし、秋波を送ってきています。報道官も女性となり、かつての挑発的で敵対的な報道からすっかり様変わりしています。
中国から見た安倍政権、意外な秋波 強硬論の行間に見え隠れする本音~中国株式会社の研究(194) :

長期を考えれば、互いに経済の互恵関係にあるので、対立はどちらにも損失となり、落ち着くところに落ち着かせる方向で動いていくはずです。中国経済が底を打ったと伝えられていますが、それもいい材料です。また安倍総裁は、外交に関しては一貫して発言も慎重で、外交能力やセンスを感じさせます。それは積極的に外需を取り込んで行く必要のある日本の経済にとっては好材料だと思えます。

しかし不安材料は経済政策です。大胆な金融緩和政策を打てば、すぐさまインフレが起こらないとしても、ただインフレが起こると市場が予想すると、それを読み込んで実質金利が低下します。それが、円安となり輸出増になる、また株高となりそれが消費心理を温め消費が増える、また設備投資が増えてくるという理屈ですが、国民は疑心暗鬼に見ています。金融緩和政策に反応して、円安や株高は起こっても、消費や投資が増えてくるのは数年先となってくるのではないでしょうか。しかもそもそもインフレ期待、あるいは予想が起こってくるとは限りません。
池田信夫 blog : 2%のインフレ目標は可能か – ライブドアブログ :

一方で、国債への信用が下がり、国債の暴落の引き金にもなりかねないリスクもともなっています。そうなると国債を大量に保有している日本の金融は危なくなり、金融危機につながってきかねません。最悪は日本の財政危機、経済危機を生むリスクも伴っていることもありえることです。体力があり、リーマンショックで衰退した需要が回復してきたアメリカと、すでに金融緩和を幾度も行なってきた日本とは状況は異なっています。
日本の場合は競争力や収益力を失った産業の体質や構造から変えていかなければ根本的な解決はないことは安倍総裁も承知の上で、そのための投資を呼び込むために、まずは脱デフレだとしていると思うのですが、リフレ派が描く教科書通りに行くようになるかどうかです。
不況がデフレを生み、それがさらに不況を呼ぶという悪循環が起こっているのですが、原因を辛抱強く除くのか、結果としてのデフレを退治すればこの悪循環を断てるのかが焦点になってきます。

しかも、そのきっかけとなるインフレ予想をつくるためには、強い政治メッセージが求められるために、安倍総裁はあたかも経済学者や専門家の多くは大胆な金融政策を求めているとしています。しかし実際はそうではありません。おそらく新内閣と市場関係者、とくに海外投資筋との駆け引きがつづくのでしょう。その駆け引きに成功するかどうかの試練が待っています。

もうひとつの不安は、国土強靭化計画に見られる公共投資です。それでなくとも、高度成長期に広げに広げたインフラの整備に公共投資が増加してきます。そこにさらに新設のインフラをつくる、しかも自民党の過去の体質が残っているとすれば、地方再生にもつながらない、地方へのバラマキとなり、一瞬の雇用を生むだけで将来に負の遺産を残しかねない点です。それよりは、大胆な規制緩和を行う特区政策や都市インフラへの投資によって、都市経済の再生をはかるほうが日本の成長戦略となり、より効果的だとビジネス現場の実感としては感じます。

安倍内閣が、危機突破内閣だとするともっとも期待したいのは、インフレ期待よりも、日本が変わっていくという変革への機運づくりです。その点でいえば、インターネット選挙解禁への言及、IT企業が多く参加している新経団連との接触、また医療制度改革などは好感できます。

国民の期待と不安が交じり合ってスタートする安倍内閣ですが、すくなくとも安定した政権づくりだけはお願いしたいものです。それが日本の経済再生にとって、必要条件ではないでしょうか。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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