クリスマスにディズニー映画最高の5分のシーンを @sorahikaru

2012年12月24日 12:30

クリスマスに家族や恋人同士で見たい映画としてディズニーの「塔の上のラプンツェル」をオススメしたい。

年間無数の映画と無数の海外ドラマを見ているのだが、この映画はアニメ映画業界に留まらず、IT業界、クリエイティブ業界の方々にこそしっかり見てほしいと思わせる一本なのだ。この映画のあるワンシーンこそコンピュータがついに人間の微妙な心の表情を創りだし、「技術と人間工学の交差点」を示唆するものでもあるからだ。


なぜそこまでラプンツェルがすごいのか、自分なりに思うことを書いていきたいと思う。すでに見た人ももう一度じっくり見てほしい。クリスマスイブに見る映画として、家族でも恋人同士でもぴったりの一本であることはまちがいない。

「塔の上のラプンツェル」に至るまでのディズニー映画を振り返っておこう。
これはディズニーアニメやPIXARアニメファンなら周知の事実かもしれないが、ラプンツェルまでには歴史がある。

代表的な作品を上げていくと、

リトル・マーメイド (1989)
人間世界に夢見るアリエルの海の世界の物語。セバスチャンやフランダーとの友情、アースラー魔女のキャラが立っておもしろい。

美女と野獣
ミュージカルでもロングランの正統派プリンセスの流れを組む名作。

アラジン (1992)
こそ泥と王女の物語よりアラジンのコミカルな動きや表現が見る人を虜にする冒険物語。

プリンセスと魔法のキス (2009)
ディズニー映画初の黒人プリンセス。ジャズを絡ませたちょっと大人な感じの物語。

ディズニーが6年ぶりに手描きアニメーションを復活させた『プリンセスと魔法のキス

これら一連の作品は製作陣をみてみよう。

グレン・キーン:リトル・マーメイド、美女と野獣、アラジン
すばらしい才能を持ったアニメーター。彼なくしてジョン・ラセターのPIXARアニメとディズニー・アニメのキャラクターはあり得なかったかもしれない。

ジョン・マスカー:リトル・マーメイド、アラジン、プリンセスと魔法のキス
どんなに素晴らしい映像や音楽も、そのストーリー(物語)がなければ意味をなさない。そういう意味において彼の創造力は目に見えないだけに貴重だ。ストーリーこそがクリエーターに創造力を与える原動力である。

ジョン・ラセター:プリンセスと魔法のキス
言わずと知れたPIXARの創業者の一人で、ウォルト・ディズニーの後継者に最もふさわしい人物と言われている。スティーブ・ジョブズもその才能を認めた数少ない人物。

アラン・メンケン:リトル・マーメイド、美女と野獣、アラジン
美しく素晴らしい音楽を生み出すアラン・メリケン。彼の創りだすミュージカル風の音楽は物語に欠かせない要素であり、印象的なシーンを生み出す。音楽、映像、ストーリーが見事に融合したシーンを創りだす天才で、リトル・マーメイド、美女と野獣、アラジンはグレン・キーンが監督を務め、音楽をアラン・メリケンが担当している。

まずこれらの映画の特徴として何より音楽が素晴らしい。ところどころミュージカル風に物語を進めるところはディズニークラシック映画の特徴でもあるが、この音楽と一緒に表現されるキャラクターの表情や精細な振る舞いがすーっと心にしみてくるのである。

代表的なシーンを見比べていけばアニメーションとコンピュータテクノロジーがどのように進化してきたかわかるだろう。

リトル・マーメイド – Under the Sea

リトル・マーメイドで最も有名なシーンだろう。東京ディズニー・シーのマーメイドラグーンシアターでも使わているので馴染み深いと思う。コミカルで楽しく、だれもが笑顔になる音楽。

美女と野獣

あなたがもしクリエーターだとしてこれほどロマンチックなシーンを創りだすことができるだろうか。まさに美女と野獣が愛を芽生えさせるシーンにふさわしい音楽である。このシーンはコンピュータの背景とアニメーション(ベルと野獣)を合成したシーンとしても有名である。

アラジン

さぁ、世界に飛びだそう!自由に飛び回る魔法のじゅうたんを美しい曲で創りだした名シーン。美女と野獣で培ったコンピュータとアニメーションの融合が実に見事に実現したシーンである。

魔法にかけられて(実写)

アラン・メンケンがディズニーアニメ以外で手がけた実写ムービーの「魔法にかけられて」のミュージカル風ワンシーン。このシーンを見ればわかるが、アニメと実写の決定的な違いはその人の表情にある。アニメは実写にできない夢のような動きや映像を作り出せるが、人の微妙な表情や心を表現することができない。

プリンセスと魔法のキス

ジョン・ラセターがディズニーアニメーションの責任者になり最初に取り組んだのが手書きアニメーションの復活である。コンピュータ・グラフィックスに頼らずもう一度ディズニーの魂を呼びもどす作品となっている。

PIXARのジョン・ラセターがコンピュータアニメーションにかけたビジョンはいろいろあるが、その中でもコンピュータで作り出されるキャラクターにどのように命を吹き込むか、というのが一つの大きなテーマだった。最初の長編コンピュータアニメーションTOY STORYではウッディやバズライトイヤーなど様々なおもちゃに命を吹きこんでいるが、人間のような感情を吹き込むことは難しかった。しかしTOY STORY 2のこのシーンで、ジョン・ラセターはもはやコンピュータアニメーションはおもちゃを単なるおもちゃ以上のものに、人の感傷に触れることのできるものになったと表現している。

When She Loved Me – Toy Story 2 (HD)

TOY STORYを持つPIXARの成功によってディズニーのアニメーション制作の方針は大きく変わった。PIXARを買収したディズニーは白雪姫から続いていた伝統的なアニメ制作手法、手書きのアニメを捨て去り、CGアニメーションだけにすると宣言したが、その手書きアニメーションを復活させたのがCGアニメーションを創ったジョン・ラセターというのがなんともおもしろい。

ウォルト・ディズニー氏は、ミッキーマウスというアニメキャラクターに命を吹き込んだ。世界中でミッキーは本当に実在しているのだ。

そしてジョン・ラセターはコンピュータが創りだすキャラクターに命を吹き込むことができると確信したのだろう。

この一連の流れの中で生み出された作品が「塔の上のラプンツェル」で、このシーンはコンピュータテクノロジーが人の心に染み入る感情を表現できる域に到達したことを証明している。

もしあなたが何かしらクリエイティブな仕事についているとしたら、ラプンツェルとユージン(相手の男性)のふたりの心が打ち解け、心が近づいている様をどのように創造するだろうか。娘を失った王と王妃が灯篭に込めた思いと、子どもの頃からずっと夢見てきた美しい灯篭が流れるシーンを眺めるラプンツェルの感情の揺れと、それを見る盗賊ユージンの心の変化をどう創り出すだろうか。美しい曲に合わせ、こんなにも美しい映像を作り出すことができるだろうか。このシーンがコンピュータ100%で生み出した映像であることに驚きを感じずにはいられない。

長ったらしい解説になってしまったがこうしたことを踏まえもう一度、ラプンツェルのこの美しいシーンを見てほしい。

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無数の灯篭が空中に上がっていくシーン。このシーンはカールじいさんの風船のシーンの応用だろう。

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手書きアニメーションで決して表現できないだろうロウソクの微妙な明かりの変化。水面に映る灯篭のシーンと合わせてコンピュータが創りだす自然のゆらぎをじっくりみてほしい。

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夢に見た灯篭の流れるシーンをみてうっとりするラプンツェル。その表情や感情も見事に創りだされている。

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ラプンツェルの純粋な心に惹かれ、ユージンの心に中に変化が訪れるシーン。この前後の曲の変化と合わせて実に見事にシーンのつなぎを創り出している。音楽、映像、ストーリーの創造力が最も素晴らしく表現されているシーン。

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このふたつの灯篭はふたりの”こころ”を表している。そしてこの後のシーンに続くふたりの心の感情が美しも見事に創りだされている。

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ふたりの心が寄り添ってふたつがひとつに交わっている感じを受け止められるだろうか。ついにコンピュータの映像がここまで人間の心を映し出すことができるようになった印象的なシーン。曲も本当に似合っている。このシーンは3Dで見るとさらに格別です。

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最後にふたりがそろって「 Now That I See You」という口元をみてほしい。完璧に口元が発音を表現している。これまでの手書きアニメーションではぜったいに不可能だったセリフと口の動きを合わせることが実現され、より感情の高ぶりを表現している。そして目の動き、ユージンの愛おしい手の動きに注目してほしい。ひよこを大事に抱き上がるかのようにラプンツェルの髪に指を絡ませ、そして耳元に微妙な感覚を持ったまま指を当てる。まるで実写のワンシーンのような人の微妙な動きをここまでコンピュータが作り出せるようになったのだ。

そして言うまでもなく美しい灯篭のゆらぎ、音楽、すべてが芸術的に融合したこのシーンは、ディズニー映画史上最も美しい5分間を生み出した。

クリスマスイブに、これからの年末の休暇にぜひこれらのディズニー作品を見なおして、コンピュータとアニメーションの創造力に触れてほしい。

ここから学べることは、コンピュータがどんなに進化しても、デジタル社会がどんなに発展しても、人の心に染み入る感性と創造力こそがいかに大切かということである。

渡部薫

※本日12月24日20時よりWOWOWで「塔の上のラプンツェル」が放映されるようです。

※YouTubeの動画には著作権が含まれる場合があり、Disney社の申し出で削除、閲覧不可になる場合があります。

※ここで使用された画像、映像の著作権はWalt Disney Company(および関連企業)に属します。

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