せっかく育てたブランドは大切にしたい --- 岡本 裕明

2012年12月26日 07:05

世の中には無数のブランドが存在します。そして人々は消費する際にそのブランドに対して一定の評価と価値感で購入の最終判断をします。

たとえば私はレクサスに乗っていますが、それはこの車ならばプラスアルファが期待できるという評価のみならず彼はレクサスに乗っているんだ、という他人の評価もあるでしょう。企業がブランドイメージを作り上げるのはそれこそ薄いパイ生地を一枚一枚積み重ねていくようなもので時間と顧客の差別化、そのブランドに対する愛着心を作り上げることでようやく達成できると思います。


日本の車でいえばレクサスは紆余曲折ありましたが成功組と考えてよいかと思います。一方、日産のインフィニティと本田のアキュラについてはどうでしょうか? 例えば日本ならスカイラインを海外でインフィニティG37と称しただけと消費者は考えています。いわゆる専用モデルではないのでブランディングが小手先でギミッキーな感じに見えてしまうのです。だから私はインフィニティは7、8年前に一度だけ短期間乗ったのですが満足せずそれ以来一度もそのブランドには戻っていません。

むしろ海外では日産の名前で売り出しているGTRのほうがはるかに強いブランディングになっていると思います。初めの頃はカナダではほとんど縁がない車とされてきましたが、最近は名前と噂が浸透し、いまだにあまり見かけないGTRにカメラを構え、指を刺し、美女が振り返るイメージを強く打ち出しています。

ところがブランドイメージも手を抜けば簡単に崩壊してしまうのもビジネスの性だと思います。長い年月をかけて作り上げた基盤は不祥事などが起きれば瞬く間に価値を失ってしまいます。

一方で孫正義氏が面白いことを雑誌で述べています。「ソフトバンクグループは960社になりましたがコア中のコア企業と一部を除けばソフトバンクのブランドをつけることを許していません。ブランドを許すと硬直化するからです」。

孫氏の意味は業績が悪いブランド、関連会社はいつでも切るつもりがある、そしてそこにソフトバンクのブランドがついているとそれが邪魔になるというわけです。逆に言えば孫氏はソフトバンクのブランドに頼らず960社も会社を興しているともいえるわけで恐るべき起業者ともいえるのですが。

そういう意味ではファーストリテイリングもユニクロとジーユーという全く別ブランドで展開しています。これも孫氏風に言えば切りやすいともいえますが、何かあった時に売却しやすいというメリットも生まれます。

フランスのモエヘネシールイヴィトン(LVMH)といえば泣く子も黙るデザイナーズブランド大手。ファッション系とジュエリー系をバランスよく所有している世界最強のブランド会社と称しても良いでしょう。昨年ブルガリを傘下におさめ、今、エルメスの最終戦略にかかっていると噂されています。

フランスではブランド勢力は大きく三つ。LVMHに加え、グッチ、イヴサンローランなどファッショングッズに力があるPPR(ピノー・プランタン・ルドゥート)およびジュエリー、時計に強いRichemont(リシュモン)が三大勢力といわれています。これらの大手はそれぞれのブランドをうまく生かしそれぞれのテイストを引き出しながら、弱くなったところはデザイナーを変えるなど資本の力を武器にブランドがブランドを磨きあがる工夫をしています。

ブランドはそれぞれの特性、顧客をうまくつかみながら価値あるものに引き上げていくというのが企業戦略としてきわめて重要です。日本の場合、古いブランド名を割りと捨て去ることが多いのにはちょっと残念な思いがすることもあります。自動車業界は特に多いのですが、先日、日産がブルーバードを遂になくしてしまったようで至極残念であります。昔の人はブルーバード510とか511なんて言ったら盛り上がるはずで往年の名車だったのです。

今日はブランドあれこれの話でしたがブランド戦略は企業経営の要であり経営のバリエーションを大きく広げる実にうまみのある戦術がとりやすいものだということで今日の締めにしましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年12月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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