安倍政権の危険な経済政策

2012年12月27日 16:29

安倍政権が発足し、経済政策を最優先課題として取り組むという。 結構なことだが、残念ながら、安倍政権の経済政策(アベノミクス)は、有害無益な政策と断じざるを得ない。 その経済政策とは

(1) 日銀と政策協定を結び、2%のインフレ目標を設定し、強力に金融緩和を行う。
(2) 大規模な公共事業を行い。総需要を増大させる。

というものである。
  


現状分析

まず安倍首相が、しきりに問題にしている「デフレ」なるものはどのようなものなのだろうか。 これは次のような事情のことではないかと思われる。

(A) 国際競争力の低下、新興国との競争の激化や高齢化による国内市場の縮小により、価格低下圧力が掛っている。 

(B) その一方で、エネルギー、食糧、鉱物資源といった、国内生産、国民の生活に必須な一次産品の価格は、産出の限界、新興国の旺盛な需要により、急激に上昇している(「エネルギー価格と日本経済」参照)。

実際、化石燃料費の推移は、次のようになっている。

FossilFuelsImport-thumb

日本が化石燃料に払うお金は?から転載)

その結果、消費者物価は、ほとんど上がらず、(B)のコスト増を、人件費の抑制などで吸収せざるを得なくなっており、これが実質賃金の低下、生産の海外移転に繋がっている。

ここで注意すべきは、(A),(B)は為替の変動に対して逆向きの影響を受けるということである。 即ち、円安になれば、一次産品の価格高騰のダメージは大きくなる一方、輸出品の価格は上げやすくなり、円高の場合には、丁度、逆になる。

我々の生活の豊かさを支えるのは、何よりエネルギーであり、エネルギー価格が高騰する現状で、日本の豊かさが減じてゆくのは、自明の理である(こうした状況にも関わらず原発再稼働が何十万年に一回動くかという断層を懸念して、遅れているのは理解し難い)。

安倍政権の経済政策の基本的考え方

アベノミクスでは、このような現状をどのように改善しようというのだろうか? 

詳細は不明だが、凡そ、次のような考え方ではないか、と思われる。

(a) 円安にして輸出品の価格競争力を回復する。
(b) 国内の需要を公共事業を行うことで拡大することにより景気回復と物価上昇を促す。

この手段として、日銀とアコードを結んで、国債の買いオペを増額し、財政ファイナンスに踏み込むということだ。 これは選挙期間中の安部首相の「日銀に、輪転機をグルグル回してもらって」とか「スケールの違うデフレ対策」といった発言から読み取れるし、国土強靭化による10年で200兆円の公共事業という発言を見れば明らかだ。 つまり、200兆円もの財源はどこにも存在しないから、財政を悪化させても、日銀に買い取ってもらう、としか受取りようがない。 簡単に言えば、金が足りないから需要が足りない、だから金をばら撒けばよいという単純な話なのだ、 それを金融緩和といって、正当な政策に見せかけているだけで、実態は財政ファイナンスなのだ。

アベノミクスの問題点 

アベノミクスのどこが問題なのだろうか?

まず第一に、経済政策として有効なのかが疑問である。 

まず現状分析で述べたように、(A)と(B)は為替に対して、丁度逆向きの影響を受けるのであって、これらを同時に改善することできない。 為替水準は、各国政府が操作している訳ではなく、こうした様々な要因が、バランスする点(均衡)に自然に収斂する。 これが市場による最適化である。 

従って、日本政府が為替を操作して、円安にしたとして、それが均衡点でない場合には、市場が歪められ、最適化ができなくなったアンバランスな状態であるから、当然、経済にはマイナスの影響が出ると考えられる。

従って、均衡を人為的に動かすことが有効であるためには、池田先生が書かれているように複数均衡がないといけないが、もう一つの均衡は、存在しない可能性が高い(「デフレ脱却の目指す均衡は存在するか」参照)。 

第二に、年2%のインフレが仮に、達成可能だとしても、それが財政悪化に与える影響は非常に大きいということである。 

年2%のインフレ率が実現すれば、長期金利は、1%ということはなく、2%以上、3%の名目成長を実現するといっているのだから、過去のデータから考えて、4%以上の長期金利になる。これは、毎年、借換債も含めて150兆円規模の国債を発行している状況では、とても耐えられない。 また財政ファイナンスに踏み込めば、当然、通貨の信認は毀損される。 ほんの少しだけ毀損する、などということは起きない。  信用とはそういうものだ。 国債や円は暴落する危険性がある。

期待水準と生活水準を下げることが必要

私は、「低下する経済成長、行き詰まる資本主義」で、(1)フロンティアの枯渇 (2) エネルギー制約(エネルギー産出の絶対量が今後減少する) (3) 技術革新がエネルギー革命でない、という三つの要因から、先進国は、今後、非常に低いかマイナス成長に陥ると予測した。 

一方、ノースウエスタン大学教授のGordon氏は。「米国経済は、もうイノベーションでは救われない」で同じように技術革新が経済成長に結びつきにくくなっていることを主張し、やはりアメリカ経済は実質年1%程度の低い成長に留まることを予測している。

米国の経済成長の先行きは暗い。政策によって解決するのは困難だ。それを疑う人は相応の反論を示す必要がある。

 

とGordon氏が述べているように、アメリカのみならず、今後、先進国は高い成長をすることは望めない。 技術革新が、世界経済のパイを大きくしないのは、ほとんどの技術革新が一人あたりの使用可能エネルギーを拡大しないからだ。 例えば、Gordon氏が挙げる、Googleの自動運転自動車は、実用化すれば確かに便利だが、既存の自動車が自動運転車に置き換わるだけで、世界経済全体のパイは大きくならない。 今の世界経済は殆どゼロサムゲームになっているということだ。 高い経済成長は最早望めないことを覚悟すべきだ。

また、ここまで財政危機が深化した状況では、 生活水準を下げ、増税に耐えることがどうしても必要だ。 現在の我々の生活水準は、持続可能でないことを認識することが必要だ。
  
現実的な対応は、現在ある均衡を、望ましい方向に動かすように、経済の基礎条件を変えてゆくこと、即ち、潜在成長率を上げてゆくことであり、それが望ましい。 

国を開き、移民を受け入れることで、生産年齢人口の減少や、市場の縮小を防ぐ、ことを考えるべきだ。 エネルギーの大半、食糧の半分以上(カロリーベース)を海外に依存する国が、国内市場を海外に閉ざしても破滅を招くだけだ。 日本は単独では成り立たない国なのだから、海外との連携を強め、国際社会で一定の役割を果たしてゆかない限り、未来は閉ざされる。国際分業の一端を担うことで、多くの国と経済を地続きにしてゆかないと、生きてゆけない。

あとがき

真っ当な意見を述べる経済学者、たとえば、岩本康志先生などが、政治家に重用されず、鎖国して公共事業の拡大で明るい未来という、国土強靭化の総本山、藤井聡、京都大学工学部教授が、内閣官房参与に起用されたりするのは、政治家の経済学に対する無理解と国民の経済成長に対する、期待水準が高過ぎることが原因だと思われるが、経済成長への期待や必要性だけで経済は運営できない。 

以前、私が日銀総裁になれば、一発で景気を良くして見せます、と言っていた御仁がいたが、今は、三橋貴明が、GDP1000兆円計画なるものを提唱しているらしい。こういう空想経済学は、話のネタとしては面白いが、真に受ける人がいるのは困りものだ。

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