自由主義 vs 社会主義

2013年01月05日 19:34

中小企業金融円滑化法が三月末に失効するのに伴い、6万社に及ぶ中小企業が倒産の危機に瀕するという。 政府は、この問題に対し、地域活性化支援機構(仮称)を設立し、地銀などが作ったファンドに出資し支援することで、対応するようだ(地域活性化機構を設立=中小企業の再建支援-政府)。要するに地銀が不良債権の顕在化に耐えられないので、所謂、「飛ばし」で対応するということのようだ。

企業内失業も深刻で、昨年末、朝日新聞が報じた、余剰人員に自主退職を強要するパナソニックの追い出し部屋の存在が話題になった。

日本の雇用が危機に瀕していることは間違いない。 一見すると、雇用の危機に雇用の維持を支援する政策は正しいようにも思われる。


しかし、雇用調整助成金、中小企業金融円滑化法、製造業の設備の買い取り、といった先送りが有効なのは、景気悪化が景気循環による短期的なものである場合に限られる。中小企業金融円滑化法の顛末に見るように、景気悪化が構造的なもので、長期化する場合には、先送りを何らかの形で継続することになり、雪だるま式に問題が大きくなってゆき、解決が極めて難しい状況に追い込まれる。

このように前記事で書いたように先進国経済全体が疲弊し問題が長期化する状況では、こういった社会主義的な先送り策は、むしろ経営が行き詰まった企業を存続する形になり、却って健全な企業の経営をも悪化させたり、企業内失業を大量に抱えた企業の経営を圧迫する。

困難な成長分野への人材移動

藤沢さんの記事は、こういった状況では、失業を顕在化させ、雇用を流動化させることで、成長産業への人材の移動を促すことで、成長を促進させようという、極めて常識的な考えを述べたものだ。

しかし、実際には、成長産業への人材移動は、ほとんど起きておらず、高生産性の製造業から介護、飲食業などの低生産性のサービス業へと人材が移動している。そのために、賃金が低下している。

同じようなことは、お隣、韓国でも見られる。一昨年、韓国に出張した際に、サムスンなど一流企業でも、韓国のホワイトカラーは、余程の幹部社員でなければ、40代半ばで、肩たたきに遭い、それらの人たちが、セカンドライフの糧として食堂を開くので、こんなに食堂が多いのだと、韓国人の友人に伺った。 これも同じように、高生産性企業から、低生産性の企業への人材の移動である。日本と比較して、成長率の高い韓国だが、その陰では、こういった事情もあるのだ。

こういった現象の起きる理由は、新たな成長分野を見出しにくい現在の状況がある。

エネルギー制約、フロンティアの枯渇のために、世界の経済のパイがなかなか大きくならない現在の状況では、新たな成長分野を見出すのは、極めて困難になっている。

実際、高度な金融工学を用いた金融商品の開発は、実体が伴なわなかったために、リーマンショックという形で頓挫しているし、オバマ大統領の提唱したグリーンエコノミーも成功しているとは言い難い。 何かと言うと成功例として引き出される、アップル、グーグルといった企業は、確かに素晴らしいが、アメリカ全体から見ると、雇用という面では大きな貢献をしているとは言えない。新興国企業を手足のように使って生産を行う、多国籍企業である。

グローバル化の恩恵を上手く取り入れている一握りの人たちと、残りの人たちの格差が拡大しているのである。 このように雇用の流動化による、成長分野への雇用の移動というのは、尤もではあるが、簡単なことではない。
   

社会主義と自由主義 

現在、先進国全体を覆っている閉塞感は、正に成長分野が見えないことにあり、
その根本的な原因は、地球の有限性に起因すると言ってよいだろう。

私が小学生の頃は、将来は探検家になりたいと願ったものだが、今やアマゾンの奥地まで開発が進んでいる。 石炭から、石油へのエネルギー革命が起きた時期で、世の中はどんどん便利になり、将来は超音速旅客機でニューヨークまで数時間で行けるものだと本当に思っていた。 しかし、今は生活は著しく便利になったが、石油は高騰し、他の天然資源、食糧も高騰し、明らかに地球の有限性が顕在化している。 

閉塞感の中で、日本では、法科大学院がブームになったり、医学部人気が上昇したりしているが、これも、新しい成長分野と言えるものが見つからない現状の裏返しである。

他の先進国を見ると、自由、平等、博愛をモットーとする国、フランスでも、「迷走する資本主義ーポスト産業社会についての3つのレッスン」に書かれているように、経済格差の拡大、社会的同類婚による格差の固定化など、社会の歪みが大きくなり、人々の不満が高まっている。

ヨーロッパ、アメリカ全般を見ても、若年層の就職は非常に厳しく、閉塞感は非常に深刻だ。

こうした中で、社会主義的な政策がもてはやされるのは、当然のなりゆきである。 

実際、昨年、フランスでは、社会党のオランド政権が誕生し17年ぶりの社会党政権が誕生した。さっそく高額所得者への懲罰的な重税を課し問題になった。 またオランド大統領は、家庭の教育環境に格差が存在することを理由に、「小学校で、宿題を出すべきではない」など行き過ぎた平等主義ともいえるような発言をしている

アメリカでも、接戦ではあったが、どちらかと言えば大きな政府の、民主党のオバマ政権が誕生した。

日本でも、安倍政権は、為替操縦、日銀に圧力を掛けて財政ファイナンスをし、巨額公共事業を行うといった、社会主義的な政策を打ち出している。

このまま、社会主義へと世界は突き進むのだろうか? 

社会主義は実現可能か? 

社会主義に移行することは、現実には難しい。これは、経済がグローバル化しているからである。 

経済の多国間の連携、依存が進むと、一国が他の国と異なるルールで動くことは難しくなる。 これは、崩壊前のソ連と西側の人やモノの行き来が自由でなかったことを見ても分かるだろう。

エネルギーの殆ど、食糧の半分以上を輸入に依存している日本が、今日の繁栄を築くことが出来たのは、正に自由貿易の恩恵によるものであって、エネルギー、食糧の輸入が途絶すれば、日本という国は成り立たない。 その代わり、国内産業は、グローバル競争に晒されるのである。   

国内産業は保護して、自由貿易の恩恵だけには与ろうという虫の好い話はない。TPPに関連して、農業がよく話題になるが、逆立ちしても日本は食糧自給はできないのだから、TPPに参加して、多国間の連携を強め、食糧の輸入先をきちんと確保しておくことが、食糧安全保障の上でも重要であり、食糧自給率を盾に、TPP参加を拒むというのは、筋がとおらないように思う。

実際には、日本だけでなく世界の国々は、相互依存関係にあるのであって、その中でしか生きられない以上、グローバルな競争からは逃れられない。  「「談合」の解体を求める米国の外圧の存在を知るべし」といった発言をしている藤井聡氏が、内閣官房参与という安倍内閣の布陣には疑問を感じざるを得ない。

社会主義的政策は止めるべき 

始めに述べたように、現在の日本の状況は、雇用が脅かされ、それを吸収すべき成長分野も見通せない。雇用を吸収する成長分野が見つかるまで、雇用の維持を優先すべきなのか、あるいは、雇用の維持を諦めるべきなのか、どちらなのだろうか。

私は雇用の維持を諦めるべきではないかと思う。なぜなら、日本の失業率は、他の先進国と比較して低く、人為的に低く抑えられており、失業率を低く維持する(潜在的な)コストが、限界に達しているように思うからだ。

実質的に破綻している企業を存続させるといった社会主義的な政策は、社会の内包する矛盾を増大させるものだ。 確かに大変なことではあるけれど、財政赤字という巨大な矛盾を増大させつつある状況では、これ以上の矛盾の拡大は控えるべきだろう。 

国債の海外投資家の保有率は、間もなく10%を超える。 財政赤字の問題も、今までは、日本の国内問題で済んでいたのが、次第に、国際問題になりつつある現状を見据えなくてはならない。 

現在の数字より、本来の失業率は高いことは間違いない。その顕在化は恐ろしいかも知れないし、実際に一時的に経済も落ち込むだろう。 しかし、これ以上の先送りは困難だ。

正しい政策とは、簡単に言えば、均衡に向かって、均衡の実現を妨げている人為的な外力を取り払うことである

社会主義の欠点は、人間が考えるより、社会は複雑で、人為的に社会を制御しようとしても、大きな歪みを生み出すということだろう。 均衡を人為的に破壊するアベノミクスのような社会主義的な政策が、グローバル化した世界経済の中で、通用するとはとても思えない。 

政府の経済への関与は小さくし、政府は、市場原理で解決しにくい、財政再建、持続可能な社会保障制度の設計、地球温暖化などの長期的課題に取り組むべきではないか。

 

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