新たな成長産業と雇用創造の可能性について

2013年01月08日 12:00

前記事「自由主義 vs 社会主義」で、述べたように、先進国全体を覆う閉塞感の原因は、成長分野が見えないことにある。


前記事で述べたように、矛盾を拡大させる、政府による雇用維持政策は、限界に達しており、雇用の流動化は待ったなしだ。  しかし、雇用の流動化を行っても、成長産業に人材が移動せず、低生産性のサービス業に人材が移動するのであれば、生産性は上昇せず、経済の活性化に繋がらない可能性がある。 

溢れ出た雇用を吸収する、高生産性の新たな産業が必要だ。

しかし、そのような新たな産業は見えていない。 ここでは、大きな雇用を生み出す新規産業が、今後見つかる可能性について考えたい。

雇用創造に必要な新産業は存在するか? 

産業構造の転換をするには、少なくとも100万人単位で、雇用の移動が必要になる。 従って、求められる新産業は、100万人単位の新たな雇用を生み出す産業でなくてはならない。

100万人単位の人たちが従事できる新たな産業とは、どのようなものだろうか? 

100万人という単位からすると、100万人単位の高スキルの人材は、そう簡単には見いだせないから、その新産業は、その産業で働く大部分の人たちに高スキルを要求しないものでなくてはならない

しかしながら、高スキルを要しない仕事であれば、それが国内でなければ出来ない仕事でない場合、海外にアウトソーシングしない限り、国際競争に勝ち抜けない。

実際、アップル、グーグルといった、海外の成長企業の業態を見ると、自前の工場を持たず、海外の企業に受注を競争させ、コストを削減しつつ海外で製造を行うという所謂ファブレス方式を採用している。

これは国際競争を勝ち抜くためには、どうしても避けられない方式のように思われる。

こう考えると、新たな成長産業が日本で育っても、それは、国内に僅かしか、雇用を生み出さない可能性が高いように思われる。

つまり、国際競争に晒されている分野で、新規の成長産業が立ち上がっても、要素価格均等化圧力が掛るため、低スキルの仕事は、海外にアウトソーシングしないと、国際競争に勝ち抜けず、新たに発生する雇用は、極めて限られる。

勿論、アメリカに於ける、シェール革命のように、現地で生産を行う必然性があれば話は別で、シェール革命で実際に大量に新規雇用が発生しているようだ(但し、投資家は大損をしているが)。 しかし、日本では、望み薄なように思う。 一部で期待されているメタンハイドレート、シェールオイル、シェールガスは、とても大規模な商業生産が可能であるとは思えない。
 
従って、新たな成長分野として日本プロパーの産業というと、観光、医療、農業といったものしか思い浮かばないが、これが大規模な雇用を生み出すのか、非常に疑問だ。

それではどうするのか 

以上のように、新たな成長産業が育っても、それが直接的に有意な形で雇用を増やすことは期待できないように思う。  

しかしながら、成長産業が少しでも育ってくれば、雇用は増えなくても、日本全体で考えれば、内需の拡大には貢献するだろう。 その一方、低スキルの仕事については、海外との競争に晒される限り、賃金は低下するために、成長産業に従事する一握りの人たちと、残りの大部分の人たちの賃金に大きな格差が生じることになる。 こういった労働の二極化の問題は深刻になるだろう。 これは難しい問題だが、最低限の再分配機能を整備するしかないだろう。  

政府は成長戦略を策定するようだが、新エネルギーといった分野で雇用を拡大しようとしても、アメリカやドイツの例を見ても、要素価格均等化圧のために中国など新興国に仕事が流れてしまい、目論見通りにはゆかないだろう。

結局、我々にできることは、非常に限られているのであり、巨額の公共事業で景気を持ち上げている間に、新規産業が立ち上がって、経済が発展してゆくといった戦略は、国の財政を危うくするだけだ。

現在の日本人の食生活を世界の人々がした場合、地球が1.64個必要であるという試算が示す通り、世界の豊かさには限界があるのであり、我々は、現在の生活水準をある程度落とすことが、どうしても必要なのだと思う。 我々は限られた豊かさを、先進国、新興国で分かち合ってゆかなくてはならない。

現在の生活水準をいつまでも財政出動や財政ファイナンスで下支えすることは不可能であり、財政破綻という、より大きな不幸を招くことを、全ての日本人が念頭におくべきだろう。

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