初セリ1億5千万円マグロの価値 --- 岡本 裕明

2013年01月10日 07:00

正直パッと聞いてマグロ一匹1億5千万円が高いかどうか判断はつきませんでした。なぜなら、そこからどれだけの切り身が出来て標準的にはいくらぐらいの売り上げがあるか見当がつかなかったのです。ですが、握り一貫あたり換算で原価2~3万円、売値6~10万円と聞けばこれは狂っているとしか思わないでしょう。


いわゆる初モノというのは高いものでメロンでもマツタケでも庶民の口に入るかどうかというよりいったい誰が買って誰が食べるのだろう、という疑問以外の何ものでもありませんでした。ずいぶん昔に高級な料亭で初モノのマツタケなるモノをほんの少し、おっそわけしてもらったことがあるのですが、店の人が一生懸命初モノです、といってもほんのわずかの量でマツタケの味は覚えていません。

マグロを競り落とした「すしざんまい」の喜代村。原価2~3万円のマグロを通常価格の「128円から」で売り出すそうですから1億5千万円から回収できるマグロ代金は100万円にも満たないのでしょう。とすれば、その差額は「広告宣伝費」ということになるようですが同社の売り上げからしたら妥当な経費水準になるそうです。

初セリで落とすのは数が限られます。そしてその価格は市場価格とは異次元の世界がごく普通であるとすれば学校で習う需要と供給から導き出される経済学などはそこには存在しないということになります。初セリに限らず、世の中、希少性のあるものに関しては価格が暴騰するケースはかなり多く存在します。そしてその暴騰した価格は需給に裏づけされたものでないために結果として価格暴落の運命を辿ることもごく普通におきているのです。

たとえば2008年ごろの原油価格。150ドル近くまで上がりましたが理由は金余り現象の中、原油先物という小さな市場に大量の資金が入り込んだことでマネーゲームと化したためでした。結果としてその後の暴落はご承知のとおりです。或いは中国のレアメタル。これも希少性が価格高騰を生み、国家間紛争にまで発展しましたが結果としていまや中国のレアメタル生産者は青色吐息の状態です。

まだまだあります。バンクーバーの銀座通りとも言われるロブソン通り。ここに並ぶ服飾などのリーテールはほとんど赤字だといわれています。その中でももっとも不動産価格が高いといわれた交差点にあったスターバックスでさえ撤退しました。なぜロブソン通りは儲からないかといえば賃料があまりにも高すぎてペイしないのです。私の会社で運営する商業物件とロブソン通りは2ブロックですが、賃料はざっと3倍もの差があるのです。これではコーヒーやラーメンを何杯売っても賃料で全部消えていくわけで大手企業がマーケティングと割り切らない限り経済価値はサポートできないのです。

もしもこのマグロがマーケティング効果を生んでいるとすればそれは結構なことです。ただ海外ではこの取引に関してむしろマイナスイメージが出ています。例えばここバンクーバーの地元紙にはマグロ資源が減少する中、日本人の根強いマグロへの需要がこの価格を導いたとされ環境的にも疑問視する厳しい内容の記事でした。

つまり、競り落とした会社が広告宣伝のためという目的であることにはもちろん触れられず、マグロ好きの日本人の狂気というぐらいの感じだとしたらこれが果たして正しいメッセージだったか疑問は残ります。もっともそんなこと、気にしない、というのも典型的日本企業の体質であるのですが。

とにもかくにも隔世の感があるマグロのニュースでした。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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