参議院選まで経済は上向き…その後は? --ニコ生アゴラ報告

アゴラ編集部

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ニコ生アゴラ(1月11日放送)。左から田原氏、深尾教授、土居教授、池田所長

アゴラ研究所は1月11日、ニコ生アゴラ「知らないと恥ずかしい?基礎の基礎? 財政・金融の常識を田原総一朗が聞く!!」を放送した。ジャーナリストの田原総一朗氏が、ユニークで素朴な疑問をぶつけ、土居丈朗慶応大学経済学部教授(財政論)、深尾光洋慶応大学商学部教授(金融論)が答えた。司会はアゴラ研究所の池田信夫所長が務めた。


放送日の11日に安倍内閣は緊急経済対策を発表した。国・地方合わせ20兆円超、そのうち「真水」と呼ばれる財政出動10兆円程度という。「経済の再生が政権の政策の『一丁目一番地』だ」。安倍晋三首相は同日の記者会見で強調した。

視聴者の関心は高く同時視聴者は約3万人と、ニコニコ生放送では多数となった。視聴者の6割が「よかった」「まあよかった」と感想を示した。

安倍政権の経済政策は通称「アベノミクス」。その内容の公共事業の増加などによる景気刺激策はこれまでの自民党政権が行ってきたものだ。ところが今回は、一見すると新しそうに思える試みを意欲的に取り入れた。

日本銀行に「インフレ目標」の設定を要請。「実弾」と呼ばれる直接介入はしていないものの政治家の口先で円安誘導を導いた。日銀は1月21日に予定する政策決定会合で、2%程度インフレ目標を導入すると言われている。一連の政策は正しいのだろうか。

インフレはいいものなのか?

「インフレって経済にいいものなんですか」。田原氏は聞いた。「1%程度の上昇が続くマイルドなものなら、経済にはプラスの側面が多いでしょう」と深尾教授は応じた。土居教授も「デフレがすべて悪というわけではないが、それが長すぎて、マイナス面も増えている」と認めた。

「アベノミクスはこれまでと、どこが違うの」。田原さんは聞いた。「それほど変りません。公共事業主導による景気下支えを行う政策です。しかし安倍さんがどこまで意図、理解しているか分かりませんが、『日銀が仕事をしていない』として金融の大規模緩和をこれまで以上に強調した点と、円安誘導を打ち出したことが違うでしょう」と深尾教授は指摘した。

金融政策とは、日銀が国債などの金融市場取引を通じて、通貨の供給量を増やし、物価や景気に影響を与えること。「日銀の国債引き受けの増加は、政府支出の増加を意味します。これは金融政策というより、政治が責任を負う『ばらまき政策』です。一時的には景気にはプラスでしょうが、それは続くものではありません」と、土居教授は述べた。

効果は永続するものなのか

「ほんとに日銀は仕事していなかったの。どんどん貸せばよかったじゃない」。田原さんが突っ込む。「お金を欲しい人はたくさんいるでしょう。けれど経済の先行きに不安があるなどの理由から、資金を欲しいという人が少ない。だからお金が余る。日銀だけではどうにもできなかった面がありました」と、深尾教授は指摘した。

けれども今回のように安倍首相の言うことを、「すぐに聞いたような格好になったのはよくない」と土居、深尾の両教授は一致した。「政治に屈する日銀」というイメージをつくり、信頼性をなくしたためだ。深尾教授は日銀勤務を経たエコノミストだが、「日銀総裁は時に『役者』、つまり人を信じさせる演技も必要です。真面目な白川日銀総裁にはそれができないようでした」と述べた。

「アベノミクスはうまく行くんですか」。田原氏は聞いた。「今年中、夏の参議院選挙までは効くでしょう。ところがそれが永続するものかは不明です」と2人は一致した。日本経済には1000兆円超と詰み上がった政府債務の問題がある。GDPの2倍以上に借金が膨らむ現状は、歴史上最悪の財政の姿だ。

また円安は今の日本では企業業績を下支えし、短期的には経済にプラスになる。しかし円安は、ドルをはじめとする他国通貨の上昇。輸入物価の上昇などのマイナス面もあるし、他国との調整が必要になる。

「この借金、そして少子高齢化、産業の競争力の低下など経済の力が落ちる状況では、財政破綻の危うさは残ります」と土居氏は述べた。「何の痛みもなく、経済がアベノミクスで好転して行くということはか考えられないのです。国の借金、そして競争力が落ちる経済をどう立て直すか。これを考えることが、必要です」と、土居氏は述べた。

一連の刺激策で、株式市場や為替相場は反応し、ニコ生アゴラの視聴数が多かったように、国民の経済政策への期待と関心は高い。このスピード感と意欲は「停滞と混乱」のイメージしかない民主党政権にはなかったもので評価されるべきであろう。しかし経済学者らのこれまでの研究、理論に照らすと、人為的な操作を経済に加えるゆえに、危うさも伴うものだ。

「うまくいくのか。それをみんな知りたがっている。今までだめだったんだから」。田原氏が国民を代弁して、繰り返した問い。期待が高まっていても、その答えを現時点では完全に示せないことを、私たち一人ひとりが認める必要があるだろう。