消費活性化で経済成長が加速するという説は本当か?

2013年01月19日 10:38

よく聞く話に、「皆が財布の紐を固くして、お金を使わないから、不景気で、デフレなのだ」というものがあります。 

実際、インフレ待望論の中に、インフレになれば、将来の値上がりを見越して、消費が活発になるので景気がよくなるという話がありますし、財政再建の道筋を政府が示すことで、国民が安心してお金を使うようになるので、景気にはプラスだという話もあります。

こういった話の根底には、消費を活性化することが経済成長を加速する(減退する場合は逆)、という考えがあるようです。確かにGDPの6割を占める消費が活発化すれば、GDPは大きくなり、企業は潤い、国全体が活気付きそうに思えます。

しかし、これは本当なのでしょうか?


経済成長をもたらすものは何か?

我々の豊かな生活を支えるものは、エネルギーと水です。 

実際、食糧の生産には肥料やトラクターなどの機械を使ったり、輸送や配送、パッキングに膨大なエネルギーが使われていますし、1トンの穀物を作るのに2000トン以上の水が必要です。我々の使う、工業製品の原料である金属やプラスチックは、膨大なエネルギーを使って作られています。 

例えば、現在の世界の粗鋼生産量を、木炭を燃料にして製造すると、数年で世界の森林は全て姿を消す計算です。我々はそれだけ化石燃料に頼って生活しています。水は重くて運搬が難しく、地域に遍在するものなので、除いて考えるとマクロでみれば

       経済規模 = エネルギー供給量 × エネルギー効率

が成り立つことが分かります。 両辺を微分すると、経済成長率は

経済成長率= エネルギー供給の増加率 + エネルギー使用効率の増加率

という式で表すことができます。実際にこれは、下のグラフで検証できます:

world-average-growth-rates-e1343173232258

Gail Tverberg: An Energy/GDP Forecast to 2050から転載)

つまり、エネルギー消費と経済成長には強い相関(相関係数:0.74)があり、その乖離は、エネルギー消費の効率化によるものと考えられます。 グラフから効率化が、近年、限界に近づいていることが見て取れるでしょう(最近進展の著しいIT化は、生産性を上げると考えられますが、その一方で失業を生むことも否定できません。 IT化は、エネルギーの供給量を増やさず、エネルギー使用の効率化もわずかなため、経済成長を大きくできないのではないでしょうか)。 

従って、経済成長のためにはエネルギー供給の増加または、エネルギー使用の効率化が必要であることが分かります。これは何も新しいことではなく、化石燃料を使う以前には、森林が主なエネルギーの供給源でした。人口も経済成長も森林の量が規定していたのです。 森林を伐り尽くしたために滅亡した文明の記録が、いくつもあります。 皮肉なことに、今、経済危機に瀕しているギリシアでは、ガスや電気を止められた人たちが公園などの木を切り倒し、薪にするため公園などから木がなくなりつつあるそうです。  

日本の場合の考察 

さて日本の場合、国内ではエネルギーをほとんど産出していません。 従って日本の場合は

日本経済の成長≒ エネルギー獲得量の増加 + エネルギー使用の効率化

です。 

エネルギー獲得量の増加は、輸出の増加や、海外での経済活動による外貨獲得により、エネルギー使用の効率化はテクノロジーの進歩によります。 従って、日本経済の成長は、外貨獲得量の増加とエネルギーの生産や効率化の技術革新によってもたらされることがわかります。

日本経済は海外に貢献することにより外貨を獲得することによって成り立っており、その外貨を使って手に入れたエネルギー、食糧、天然資源で我々の生活を支え、生産活動を行っているわけです。

従って、外貨を稼がないドメスティックな産業で成功を収める人が出てきても、これは国を豊かにはしません。

例えば、介護や医療は確かに成長産業ではあるのですが、外貨の獲得という点でも、エネルギー使用の効率化にも資さないので、高齢者の介護や医療は、日本を豊かにはしてくれません。むしろ、高齢者の介護や医療に労働力をつぎ込むことは、経済成長にはマイナスです。 介護は、現役世代の労働に支障が出ない範囲に留めるべきでしょう。 高齢者の増加は経済成長には明らかにマイナスなのです。 即ち

        高齢化=人的資源の劣化 

であることが分かります。

公共インフラの老朽化も同じで、国全体としてはコスト増になるわけです。公共インフラの老朽化は、必要性を検証し、生産性の立場から必要性の低いものは、補修せず、使用をやめて放置するのが賢いやり方です。 

内需主導の景気回復は起こり得るか?

よく内需を活発にすれば、経済が活性化するということがまことしやかに言われますが、これは、国内の富の平行移動に過ぎず、無意味です。 内需を活発にすれば、内需主導の景気回復が図れるというのは、幻想に過ぎないでしょう。 獲得するエネルギーが増えるわけでもエネルギー効率が上がるわけでもないからです。

唯一内需を活発にして経済成長が起きる可能性があるとすれば、次のようなシナリオです。

それは内需の拡大により、国内産業が強くなると同時に、輸入が増加するため円安に振れるので、輸出が増えるのではないか?、ということです。 

しかし、このシナリオは、既に家電エコポイントで実験済みです。つまり需要の先食いが起きるだけです。 エコポイント導入前の消費水準が正しい消費水準だったことを検証したことになります。  

それでは、円安効果は、ということになるかと思いますが、これは獲得するエネルギーそのものの価格が上がることになるため、恐らくトータルではマイナスです。そもそも必要以上の消費を行うことは、正しいことであるとは思えません。為替レートは思惑で動くこともありますが、長期的には自然水準に収斂するものと考えられ、それを無理やり動かすのは、非効率を生むというのが常識的な考え方です。 

現在安倍内閣が打ち出している公共事業は、外貨の獲得に繋がるとは言えず、むしろ、エネルギーや資源の海外からの輸入を増やすため、国富の流出を招き、経済成長にはマイナスです。 

自民党が主張している国土強靭化計画はどうでしょうか。 日本は確かに他の先進国と比較して地震、津波、台風といった自然災害が多い国で、防災に費用が掛かるというのは理解できます。

しかし、これは客観的に見れば、日本の持つハンディであって、防災に

           発生確率 × 被害軽減効果 

以上の金を使うというのは、経済成長にとっては、明らかにマイナスであり、自民党が主張する国土強靭化に200兆円もの公共事業というのは、どう考えても過大です。 どんなに大きな災害が起こっても、その被害額は数兆円でしょうし、公共事業でその被害をどの程度軽減できるのかというと、それはかなり低い割合でしかないでしょう(最近の原発と活断層の関係も同様に費用対効果で考えるべき問題です)  

そもそも防波堤や耐震化を行っても、外貨の獲得には繋がらず、従って、エネルギーの獲得にも、エネルギー効率の上昇にも全く資するところがなく、むしろエネルギーなどの輸入増加に伴う国富の流出を招くということになるわけです。  

以上のように、人為的な内需の活性化は単に国富の流出を招くだけではないでしょうか?。

社会保障の削減と労働市場改革が大切 

それでは、どうしたら経済成長を加速できるのでしょうか? 

これには、まず高齢者福祉を切り下げることが必要でしょう。これには勿論、人道上の配慮は必要ですし、高齢者の過去の貢献は評価されるべきです。 しかし、高齢者は経済成長に貢献しない人たちが大部分なのですから、ここに経済資源を手厚く配分するのは非効率的なことと、世代間格差を考えれば、高齢者福祉の切り下げは妥当なように思います。 

また、現在、中小企業金融円滑化法などで、人為的に非常に低く抑えられている日本の失業率を考えると労働の規制緩和は大事なように思われます。

実際、失業率の国際比較のグラフを見ると日本の失業率は、他の先進国と比較して突出して低いことが分かります。 これから考えて、日本の潜在失業率は、かなり高いのではないでしょうか。 

社会保障を切り下げ、最低賃金などを廃止し、企業の負担を減らして、雇用を増やすことも考えられますし、解雇規制の緩和も必要なように思います。昨年末、朝日新聞が報道したパナソニックの追い出し部屋の存在が話題になりましたが、こういった手法が使われること自体、現在の制度が限界に達しているように感じます。 

労働規制の緩和は、格差を開く可能性がありますが、前記事でドイツの例を書いたように、雇用の拡大と格差の拡大はトレードオフの関係にあるので、致し方ないように思います。  

グローバル化した世界経済において、国として競争力を保つには、社会保障制度や雇用のあり方や税制も、世界の主要国とどうしても合わせてゆかなくては、立ち行かない。 そういうことではないでしょうか。

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