あぁ高野連。老害日本の象徴よ

2013年01月21日 07:30

元プロ野球関係者が高校野球の指導者になる際の条件が大幅に緩和された。教員免許取得2年を経過しないと学生野球の指導者資格を得られなかったのが、プロとアマ双方の座学での研修を受け、最終審査をパスすれば教員でなくても高校野球の監督ができるようになるという。


アルジェリア事件の影響で一般紙は抑え気味の扱いだったが、スポーツ紙では、日刊スポーツが「プロアマ終戦」の大見出しで一面を飾るなどトップニュースで報じた。筆者がネットで一報に接したのは、出張帰りの新幹線の車中だったが、当初は「プロ嫌いの高野連がどこまで門戸を開くのか」と懐疑的だった。野球記者の頃の強権的で保守的な印象が拭えなかったためだ。地元商店街の応援の仕方やら、テレビ局の取り上げ方へやら、官僚的に「指導」するのが大好き。筆者自身も、取材に関与した高野連の金の使い方を検証した記事に対し、抗議文を送られて、それが各紙の社会面沙汰になってしまったのは懐かしい思い出だ。

帰京後、次第にプロ側に示したという新制度案の詳報が分かるにつれ、「まぁ少しは変わってきたのか」という印象を抱くとともに、これまでの規制がいかに根拠薄弱だったかを痛感、高野連の「アマチュア原理主義」のアホらしさを再認識した。日本社会の老害を象徴する原理主義者の頑固ジジイたちに、真っ向から改革を訴えてきたプロ野球選手会の新井貴浩前会長らの熱意には頭が下がる思いだ。

●高野連は本気で指導者を育成してきたのか?
プロ側から見れば、まずは高野連が大幅に譲歩することが先決だったわけで、とりあえずは及第点なのだろう。しかし、かつては教員免許取得後10年も経たないと許されなかった高校野球の指導者に、今度は数日の座学でなれてしまうという豹変ぶりからは、高野連が指導者育成システムを真剣に構築してこなかったとも感じる。

そりゃ座学で、プロアマ断絶のきっかけとなった柳川事件の歴史を学ぶのもいいでしょう。学校における部活動の位置づけや教育的配慮、安全対策などは指導者として当然必要な知識だ。しかし座学をやって、はい明日からOKというのも難ではないか。特に実技指導や、指導者として必要なマネジメント能力の要請はどうするのか。サッカーの場合、協会公認の指導者ライセンスが段階別にあり、最上位のS級の講習では、戦術などの理論を学ぶだけでなく、指導の実地研修も行う。野球だって、元プロであったとしても野手出身者は投手の技術的な指導は難しい人は多いし、ノックもさっぱりという人は実は少なくない。指導者としてのスキル養成は必要なんじゃないか。

そもそも、高野連は、4000の加盟校の8割を占める公立校の指導者不足を放置してきた。もう10年近く前、都立高で、前年の主将から19歳の若さで監督になった大学生を取材したが、当時は彼の健闘を祈る反面、監督の成り手がいない公立校が多いのに何も手が打たれていない状況に暗澹とする思いだった。もし地域にプロで数年プレーした経験のある人がいて、会社勤めの傍らでも彼らを指導できるようになれば、少しでも指導者不足を解消できるのではないか。しかし残念ながら、当時の高野連はプロ嫌いの姿勢を見せるばかりか、2007年の特待生問題の折には、一競技団体に過ぎないくせに特待生を排除するという私立校の経営に干渉する姿勢に打って出た。国民的な甲子園人気におごれる裁量主義が極地に達したもので、さすがに社会的な批判を浴びて撤回したが、理事の顔ぶれを見ていても、その根本的な体質があまり変わってない印象がある。特に、誰とは言わないけど。

●ライセンス制度作ればいいじゃん
今回、教員免許不要になったことは出発点に過ぎない。もともと野球界はプロでも指導者になるのに技術的なライセンスの類が無いのだが、これを機にプロとアマで共通の指導者ライセンス制度の構築を話し合ったら、どうだろう。まあ、プロはプロで別途に投手や打撃など専業別の細かい制度を作るにしても、1人~数人の大人で指導する高校生に関しては、全体を目配りできるマネジメントの素養が求められる。元プロだからといって、全員が指導者に向いているわけでもない。まして高校生は多感な時期であり、力でねじ伏せるような指導は一歩間違えば、大阪市の体罰問題のような事態に発展しかねない。ライセンス取得の過程でふるいに掛け、知識、実技で指導不適格な人物は落としていけばいい。

 柳川事件の後、プロ出身者として初めて高校野球の監督になった後原富氏は、スポーツニッポンの取材に「長すぎた。もうちょっと早かったらここまでサッカーと(人気の)差がついていなかった」と悔しがったという。プロ経験者が加わって、高校野球の底辺拡大に寄与するという合理的かつ本質的な考えを高野連が持っているのかどうか――。懸案はサッカー人気だけでない。野球界でも楽天の三木谷オーナーはユースチーム構想を抱いているそうだ。高野連が昭和ロマン的なアマチュアリズムを掲げ、現状維持に汲々とできる時代でなくなっているのは確かだろう。

新田 哲史(にった てつじ)
メディアストラテジスト

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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