カリスマ創業者の引き際を考える --- 岡本 裕明

2013年01月21日 12:06

一週間ほど前のブログで「アップルは普通の優秀な会社に変貌する」と書かせていただいていたのですが、ここにきてiPhone5の売れ行き不振から部材の発注を半分に落としたことが次々と判明し、アップルの先行きに暗い影を落としています。一部ではこのニュースは誤解を招くという反論もありましたが、ピークから低迷しつつあるという点ではほぼ間違えないと思います。私は以前からアップル社に対しては一貫して同じことを繰り返してきました。つまり、

スティーブ・ジョブズの独創性やカリスマ性はほかの人に代替できない。

ティム・クックは優秀であってもそれはジョブズのやり方を熟知しているだけで彼がジョブズになるわけではない。


ジョブズは彼がいなくても2年ぐらいはビジネスがうまくいくようプランをしていたはずだがその先はアップルという会社が事業をドライブしない限りなにもおきない。

昨年前半まで多くの機関投資家はプログラム上、アップルの株を買わないわけにはいかない状況が生じていて結果として700ドルを超える水準まで買いあがっていたわけですが、それ自体が間違いだと気がつく人はあまりいなかったのはジョブズ亡きあとのレールが無限に続くと思っていたからでしょうか?

いわゆるカリスマ性の高い経営者がリードしている会社の最大の弱点はその経営者がいなくなった時、そのポジショニングが大きく変わるということです。マイクロソフトはその典型だったと思いますがそれでもビル・ゲイツ氏は健在ですからアップルに比べればはるかによい状況だと思います。

なぜカリスマ性の高い会社がうまく運ばないか、というのは私がかつて秘書をしていた建設会社のオーナーがまさにそのものだったがゆえであります。カリスマ性とは多くの最終判断を当人がしてしまうことに最大の弱点があります。それも現場に入り、こと細かいことまで立ち入り指示をします。この結果、何が生じるかというと社員はカリスマから学ぶのではなく、カリスマを宗教的に信仰するが如く、指示を鵜呑みにする傾向が強く出るのであります。

結果として会社組織そのものは役員会を含め、カリスマ氏に対するイエスマンと化し、役員の業務は事実を的確に伝え、判断を仰ぎ、それを履行するというスタイルに変貌するのです。これは洋の東西を問いません。

ですから日本を代表するカリスマ経営者諸氏は今、焦っているはずです。なぜなら彼らのクローンは絶対に出来ないし、組織はカリスマ氏が思っているようには育っていないからです。それは数を増やせばよいというものでもないということです。

私も小さい会社ながら社長として好き勝手やらせていただいていますが、今、権限委譲をさまざまな形で進めています。それは考え、判断する能力を身につけさせるためであり、その判断力をつけるため、自分を経営者から指導者という立場に落とし込むようにしています。つまり、「社長がそう言った」と言わせない体制作りを時間をかけて進めています。

大きな会社であればあるほどカリスマ氏の身の引き方は難しいと思いますが、それは仮に3年でも5年でもかけて行わなければスムーズな自分の引退は決して起こりえないということでもあるのです。体質改善は漢方薬を飲むように本当に時間がかかるということでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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