恐怖をあおる地震報道とメディアの責任

2013年01月21日 16:53

「地震ジャーナル」54号に、松村正三氏の『最近の地震報道に見た問題点』という論文が掲載された。研究者は単に科学情報を発表したつもりなのに、『首都直下型4年内70%』であるとか、『M9級、30年以内に30%』といった恐怖をあおる生活情報として報道される問題を取り上げた論文である。松村氏は、論文の最後で次のように訴えている。

研究者一人一人が、国民の寄せる地震研究への期待を受け留めたうえで、アウトリーチ活動の意義を理解し、自覚的にかつ意識的にそうした活動の場に臨むことが重要となる。

真面目なリーダから研究者に向けた真面目なメッセージではあるが、松村氏はメディアの責任に言及していないので、一言発言したい。


なぜ、メディアは恐怖をあおる報道をするのだろうか。それは、後で責任を取らなくて済み、楽だからだ。大地震が来る可能性について警告したが実際には来なくても、誰も非難はしない。逆に、大地震が来ないと報道して実際には来たら、大問題になるというわけだ。福島の原子力発電所の事故も同じで、放射能の恐ろしさを大声で伝えるほうがメディアとしては有利だった。

しかし、メディアには、研究者と市民の間に立って、正しい情報を伝える責任があるはずだ。少なくとも、科学部の記者は市民よりも科学リテラシーが高くあるべきだ。それが、「首都圏」を「首都」と混同したり(後者のほうが範囲は狭い)、「津波マグニチュード」を普通に使われている「マグニチュード」と間違えたりするから、記事はセンセーショナルになった。温厚な松村氏も論文の中で次のように指摘している。「朝日新聞がMt(津波マグニチュード)という指標であることを注釈しないままM9級と報道したことは、不正確との謗りを免れないだろう。」

人々がネットに依存するようになってメディアの存在感が薄れている。それを食い止める一つの手段が、調査を重ねてより正確な情報を伝えることだ。蓮舫氏の「2番じゃダメなんですか」騒動でもそうだった。安易な報道はメディアの死を近づけるだけだ。

山田 肇 -東洋大学経済学部-

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