経済成長しても実質賃金が下がるのは何故か?

2013年01月29日 12:00

最近20年間の日本の実質経済成長率は平均年0.9%である。 これは確かに低成長ではあるが、着実に成長しているし、名目経済成長率は、ほぼ0%ではあるが、それでも大きく経済規模を縮小したわけではない。 

しかし、下のグラフを見れば分かるように、この間、日本人の賃金は明らかに下落している。 

2

「GDPと給与総額との関係」から転載)

これは何故だろうか? 


日米の比較

成長にも関わらず、賃金が低下する現象は、実は日本だけではない。

下のグラフは、アメリカの賃金総額の対GDP比率のグラフである:

wage-base-divided-by-gdp

Wage Base (defined as the sum of “Wage and Salary Disbursements” plus “Employer Contributions for Social Insurance” plus “Proprietors’ Income” from Table 2.1. Personal Income and its Distribution) as Percentage of GDP, based on US Bureau of Economic Analysis data. *2012 amounts estimated based on part-year data.(How high oil prices lead to recssionから転載) 

このようにアメリカでも日本と同じように、しかも同じ程度のGDPに対する賃金比率の低下が見られる。
 
この一因は、「デフレの原因は名目賃金の低下である」で池田先生が紹介されている吉川洋先生の「デフレーション―“日本の慢性病”の全貌を解明する」 に書かれているように、新興国との競争のために、賃金を低下させなくてはならなかった、ということだろう。 しかし、それだけだろうか? 

賃金の低下とエネルギーコスト

これは、エネルギー価格の上昇でも大部分、説明がつくように思われる。 実際、日本の化石燃料輸入額の推移は、次のようになっている:

FossilFuelsImport-thumb

日本が化石燃料輸入に払うお金は?から転載)
 
エネルギーコストは大幅に上昇していることが分かる。

さて、全ての仕事は 

 労働 =  人の労働力 + 機械による労働

で、現在は、人の労働は、どんどん機械の労働に置き換えられつつある。 このため、機械を動かすためのエネルギーは、より一層、経済活動に必須かつ重要になっている。このため、エネルギーとして機械に支払われる賃金(=エネルギーコスト)を考えると

人と機械の労働コスト ≒ 賃金 + エネルギーコスト 

という近似式が成り立つ。 この式を意識しつつ上のグラフを眺めると、エネルギーコストの上昇分を人件費の削減という形で対応してきた日本経済の姿が浮かび上がる。 つまり、機械の労働の取り分が大きくなる分、労働者の取り分が減るのだ。   

これは、アメリカのように、エネルギーコスト上昇分をインフレの形で転嫁しても、結局のところ、実質でみれば、全く同じことが起きている、と言ってよい。  

デフレ脱却なんて意味がない 

このように、エネルギー的な視点から見ると、名目賃金の低下の大きな要因は、エネルギー価格の上昇であり、これを新興国との競争から価格転嫁できないために、デフレになっていると見ることができるだろう。    

現在、安倍政権は、円安政策と財政出動による経済再生を目指しているようだが、以上のような観点から見ると、円安政策は、エネルギー価格の上昇として、日本経済のマイナス要因になるため、筋違いの観が否めないと思われるが、いかがなものだろうか? デフレ脱却なんて意味はないのだ。 
 

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