グローバル時代の企業と若者の生き方

2013年01月31日 12:08

今、20歳の若者が真剣に考えるべきは、グローバル時代に企業がどの様に変貌をし、それに対し自分自身が如何に対応して幸せな未来を構築するかという一点に尽きると思う。


今旬のテーマという事でネットにも多くの記事が溢れている。しかしながら、書いている人が実際の海外勤務の経験がなかったり、海外留学の経験すらない場合が散見される。

ネットから情報を収集して、余り良いとも思えない頭でこねくり回し若者向けの「うんちく」に仕上げている。率直にいって、こんな記事を読むのは時間の無駄と思う。

それではどうすべきかというと、実際の企業活動を精査し今後の進むであろう方向を予測し、その上で自分のキャリアパスを設計するという事だと思う。

先ず、一般的な話から始める。

認識すべきは、日本は最早「輸出立国」ではないという冷徹な事実である。

この記事が財務省発表の数字に従い、過去の「貿易収支」、「移転収支」その結果の「経常収支」の推移を判り易く説明してくれている。

「貿易収支」は赤字で赤字額は増加の傾向にある。一方、海外事業は好調でこの稼ぎの一部を「移転収支」として日本に還流し「経常収支」段階で何とか黒字を保っている構造である。

1985年のプラザ合意以降、「円高」対策として日本の製造業は大挙して海外移転を決行し、アジアに堅牢な「サプライチェーン」を構築するに至った。

そして、現在も廉価な労働力を求め新たな海外移転のブームが起ころうとしている。「アベノミクス」はこの潮流に対しては所詮蟷螂の斧に過ぎず、又、既に海外に出て行った企業が帰って来る事もない。

従って、日本の若者の雇用の受け皿は日系企業海外法人という事になり、こういう職場で活躍可能な人材を「グローバル人材」と囃している訳である。その内、利に聡い予備校辺りが「グローバル人材養成講座」を開始するかも知れない。

私は、若者は余りそういう事に余計な神経を使う事無く、「習うより慣れろ」で実際に現地に飛び込んだ方が良いと思っている。但し、「英語」位は使える様にしておくべきだし、海外の生活に慣れるという意味で一年以上の海外留学も推奨する。

それにしても、「グローバル人材」とは随分と漠然とした言葉である。若者が混乱するのも止むを得ない。

参考までに、私が考える「グローバル人材」とは一言で言えば、海外で「自立」し「稼ぐ事が出来る」人材の事と思う。そして、私の経験から個別の資質として下記を列挙する。

1.日本と変わらず、「快食」、「快眠」、「快便」の生活が可能:

何だそんな事か!と思う人が多いと思う。しかしながら、現地の「食」が口に合わないと体力が無くなるし、矢張り食事の楽しみがない訳で精神的にも参る事になる。

30年も前の話であるが、某重工メーカーの将来の社長候補と言われた辣腕部長が、中東のプロジェクトのプロマネとして派遣された。何とキャンプの夕食で提供されたステーキが部下のものより小さいといちゃもんを付け、結局会社人生を棒に振ったという都市伝説があった。

中東では自然は呆れる程過酷だし、仕事も生活も基本巧く行かない。仕事が終わっても居酒屋に立ち寄ってビールを飲みながら愚痴をこぼして適当にストレスを発散する事も出来ない。だからこういう事になってしまう。

ストレスが溜まると、そこから派生して色んな問題が生じる事になる。従って、現地の料理を美味しく食べる事が出来るか否かは極めて重要である。

それから、海外では「水」にやられて下痢をする事が多い。私も何度か経験したが、酷い下痢をしているにも拘わらず、昼夜を問わず宴席が予定されていて休む訳には行かない。これは、経験した人しか判らないが本当に辛いし、こうなるともう仕事所ではない。

「矢張り海外勤務で重要なのは頭より丈夫な胃腸と思う」

最後に「快眠」であるが、色々嫌な事があっても寝る事が出来る人は割と立ち直りが早い様に思う。悶々として寝れないと言った神経質な人は、「精神」か「体」のどちらか、或いは両方を病んで使い物にならなくなって日本に送還されるケースが多い。

2.問題から逃げずに次から次へと解決に向かう性格:

海外で生活したり仕事をすると、日本では予想もつかない様な問題がが次から次へと起こる。水道の蛇口から水漏れが止まらない。トイレが故障して使えない。電気の配電盤が故障して停電状態。照明が使えないのは取敢えず蝋燭で代用出来るが、冷凍庫に保管中の保存食が駄目になるのは辛い!

会社で手抜きの酷い部下を手続きに従い(警告書を3度手渡す)馘首したら労働事務所に告訴された。その後、法外な示談金を請求して来るので弁護士と相談して裁判で決着する事にしたら、初めは自宅への無言電話から、次には「お前を殺す!」という内容の脅迫状の郵送、車での移動中も気持ちの悪い尾行等々。。。

先送りすると、当然の結果として問題が増えて何から解決して良いか判らなくなる。人の情として難しい事であるが、嫌がらず、逃げず、片端から解決に向かう事を「習い性」にする事。そうでないと多分精神を病む事になる。

3.コミュニケーション能力:

英語と現地の言葉でコミュニケーションが取れる事は極めて重要と思う。可能ならば現地赴任前に日本で日常会話位出来る様になっていた方が良い。

これが駄目な場合は、赴任後出来るだけ早く家庭教師を雇うなどして言葉を覚えるべき。

更に大事なのは「新興産業国」は言うまでもなく、「発展途上国」であっても決して上から目線では無く、同じ目線で会話をする事。その為には何と言ってもその国を好きになる事が大事だと思う。

飽く迄私の経験であるが、赴任地を好きになっている人は現地の人からも好かれており、仕事も比較的順調にこなしていた様に記憶している。

逆に赴任地が好きになれない人と話をしても赴任地の悪口しか出てこない。こちらが聞きたい情報など皆無だし、仕事も上手く行っていない様であった。

赴任地を好きになるためには、日本人としてのバイアスを排除し、目にし体験する文化、社会とその背景となる歴史を理解し尊敬する事に尽きると思う。現地の友人が増えれば当然現地の言葉もマスターし更に友人が増えるというプラスのスパイラルとなる。逆の場合(負のスパイラル)は悲惨である。

4.「山より大きい猪はいない」、「命があればそれで善し」と開き直れる性格:

良い意味での開き直り。何があっても、「実は大した事無い!」、「命さえあればやり直せる!」とピンチに動ぜず、くよくよしない楽天的な性格は本当に大事と思う。

「欧米の先進国ならいざ知らず、海外では何をやっても上手く行かないのは決して異常な事ではなく、当たり前の話」

日本人は真面目で悩み過ぎ、自分を追い詰め過ぎるところがあると思う。とは言え、「真面目」さ故に日本人は尊敬されている、一目置かれているところもある。従って、この辺りのバランス感覚、センスも大事な資質という事になる。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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