女性の丸刈りを映す2つの異様な写真--AKB48峯岸みなみ、ロバート・キャパ

2013年02月01日 07:00

AKB48の丸刈りの異常さ

気味の悪い映像を見た。

アイドルグループのAKB48のメンバーである峯岸みなみという20歳の女性が31日丸刈りになって動画サイト「YouTube」に登場。謝罪動画で、同日週刊文春に掲載された彼女の男性スキャンダルについて謝罪した。

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(写真はYou Tubeより。読者の方に不快感を与えたら申し訳ない。私も不快だがこの映像が流布している事と、後述の通り行為への批判のために掲載する。彼女をさらし者にする意図はない。)


丸刈りは犯罪者への刑罰を連想させる。しかも髪は女性にとって大切なものだ。この行動は異常だ。この女性は、一生「丸刈りになった」と刻印を押された。映像は後まで残る。男性と恋愛をしたからといって、ここまでのさらし者になる私的懲罰を受ける必要はない。

彼女のこと、AKB48の管理者、また所属する芸能事務所などマネジメント体制の詳細を私はよく知らない。しかし周囲の大人はこの人権侵害行為によって、一人の女性を社会にさらし者にし、おそらく今後の人生をめちゃくちゃにした。これは異常な行為で批判されるべきだ。

周囲の大人が強制したら、大変な人権侵害行為である。そして、この女性が自発的に行ったら、それを止めない周囲の大人はおかしい。一種の自傷行為だ。その場合には彼女が「マインドコントロール」を含めた危うい精神状態にあることを意味する。いずれにしても、彼女のことを真面目に考える近しい人は、マネジメントをする人々から引き離し、彼女を救済した方がいいだろう。

このグループはCD握手券・投票券などで、ファンに大量に商品を買わせたり、投票でメンバーの順位を競わせたりするなど「泥臭い」商売で稼いでいた。私はファンや、働かされる女性たちが気の毒だとは思っていたが、それは行為者の自己決定によるもので、私は眉をしかめても批判はしなかった。しかし今回は問題の質が違う。

おりしも大阪市立桜宮高校での体罰による高校生の自殺、女子柔道の日本代表での体罰などが明るみに出て、人体への暴力という人権侵害行為が社会的に批判を集めている。こうした状況で、丸刈り女性をさらし者にするAKB48の運営者は、世間常識のない人々だ。もしかしたら、目立とうと「炎上マーケティング」を狙っているかもしれない。非常識さに猛省を求めたい。

こういう人権侵害行為を平気で社会に公知し、認めさせることは、決して許される事ではない。

キャパが「女性の丸刈り」から伝えたこと

丸刈りの写真を見て、私は西欧社会の歴史の暗部を思い出した。西欧諸国では、魔女狩り、売春婦の取り締まりなどで、女性を外見的に辱める時に、丸刈りが行われたらしい。

第2次世界大戦直後も丸刈りにされた女性がたくさんいたことが当時の報道から伝わる。連合軍による解放の後で、ドイツ占領地域だった西欧諸国で、ドイツ軍人と関係を持った女性たちがいた。連合軍による再占領後、その女性たちが西欧各国で公衆の面前で恥ずかしめを受けて「丸刈り」にされた。

ここで私の好きな写真家、ロバート・キャパ(1913-1951)が撮影したフランス解放の報道写真を紹介したい。キャパは、歓喜に湧く人々の姿と同時に、市民の女性へのリンチも伝えている。

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マグナムフォトデータベースより。著作権の問題があるのでホームページ全体を映す。この写真はページ1の右下にある。)

この写真は、構図も絵画のようで、そして背景の物語を連想させる。犠牲者になった女性を、嘲笑するさまざまな年代の女性たちが取り囲む。嫉妬、怒り、優越感がその笑顔から読み取れる。国家権力の象徴である警官が映っている。女性への暴力行為を認めたのだろうが、殺害までは許していないようだ。犠牲の羊を差し出し、市民の怒りをコントロールしているのだ。一方で、敵意を持つ群衆に囲まれる恐ろしい状況にあっても、被害者の丸刈り女性はしっかりと子供を抱き、守ろうとする。おそらくドイツ人との間の子供であろう。この母子は幸せな人生を、このあと送れたのだろうか。

この一枚の写真に人間の醜さと、女性であり母親であることの哀しさと強さが映し込まれている。キャパの才能に深い感銘を受ける。

そしてこれを見ながら、現代日本で1人の20歳の女性が丸刈りになった情景、そして周囲の大人たちがどのような醜い表情でそれを眺めていたかを想像してみるとよい。キャパの写真の偉大さが引き立つであろう。そして私たちの社会に、こうした人権侵害行為が存在することの恐ろしさも認識するだろう。

読者の皆様も一緒に考えてほしい。

石井孝明 ジャーナリスト ishii.takaaki1@gmail.com
ツイッター:@ishiitakaaki

【追伸1】:テレビは見ないが、1日の午前中の民放の情報番組は、この映像をいろいろと伝えていたようだ。映像ジャーナリストにとっては当然の常識であるべきと私は思うキャパの作品さえ知らないのだろうか。

【追伸2】:126013100314916321956ネットとは偉大で、人々の情報で追加で勉強ができた。キャパのこの写真は衝撃を持って受け止められた。1928年製作の無声映画に「さばかれるジャンヌ」というフランス映画がある。フランスの救国の英雄ジャンヌ・ダルクが丸刈りにされた映像が、当時の西側世界で知られていた(写真)。さらに第二次世界大戦中のナチスのユダヤ人強制収容所写真が公開されたところ、女性たちの多くが丸刈りにされていたため、その野蛮性を連想させた。これらの事実が背景にあったようだ。おそらくヨーロッパで女性が丸刈りで謝罪のためにテレビに出たなら、そのテレビは社会的に大変な糺弾を受けるだろう。日本のテレビメディアの後進性を改めて示す事になった。

【追伸3】ちょうど、横浜美術館でキャパ展をやっていた。2月3日訪れた。キャパを紹介した作家の沢木耕太郎氏の講演会を同美術館は大々的に宣伝。ところが、募集方法の変更を明示せず、満杯になったとつっぱね、入れない人が十数人怒っていた。私もその一人。美術イベントで、マネジメント能力のない運営者がかかわると、その芸術家や名前を借り、招いた作家の信頼度にかかわる。同美術館は反省した方がいい。

【訂正】キャパの写真は当初パリ解放としたが、キャプションを確かめるとシャルトルというパリ近郊の都市での写真だった。訂正した。

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