「正社員」という「身分」

2013年02月01日 10:29

大学生が熱心に就職活動に取り組むのは、殆どの場合企業の「正社員」という「身分」を獲得するためであると推測する。


オリンピック選手が先ずはメダルの獲得を目指す様に上場企業への就職を希望する。次には、「銅」よりも「銀」、「銀」よりも「金」といった具合により人気企業を目指す事になる。

大学生に何故その企業を目指すのか尋ねたら、多分「仕事にやりがいがある」といった無難な答えが返って来るに違いない。

しかしながら、本音は入社後40年以上に渡って「正社員」という「身分」を保障してくれる可能性が高いといった会社の安定性であったり、「社会的ステイタス」、「世間体」、「収入」といった「正社員」という「身分」がもたらすご利益に惹かれてではないのか?

家電が代表的な実例であるが、このご利益が毀損してしまえば就職市場での人気は暴落する。

問題は「グローバル時代」に、この「正社員」という「身分」ありきの考え方が通用するか否かである。

昨年末この三菱商事のプレスリリース内容、三菱商事、シンガポールに金属資源トレーディング事業の本社機能を持つ子会社を設立 が私の回りで話題となった。

従来の日本企業のグローバル化対応と言えば、楽天やユニクロが有名である。社員の尻を叩いて英語の勉強を強要したり、外国人の採用を増やすと言った、謂わば今迄の経営や組織の延長線上の発想であったと思う。

言い換えれば、既存の日本人社員の立場は尊重されて来た訳である。

これに比べ、三菱商事の戦略が決定的に違うのは、従来の組織(本社)をそっくりそのまま子会社化した上で、業務遂行に最適と判断したシンガポールに移転してしまう事である。

世界から人材を集め業務利益の最大化を目指す事になるのであろう。

仄聞する所、シンガポール新本社で必要としない従来の社員は日本市場限定の「子会社」勤務として、身分は保証するのだそうだ。

「身分」と「待遇」はどう変わるのであろうか?

先ず、シンガポール新会社に移動した社員は早晩シンガポール新会社に転籍となるはずである。従って、「身分」はシンガポール新会社(三菱商事子会社)の正社員という事になる。

待遇については想像するしかないが、トレーディングという高度に専門的な仕事であり、且つ、世界から人材を募集する訳であるから、獲得利益、貢献に応じた出来高払いが予想される。そうでなければ優秀な人材は集まらない。

シンガポールや新会社が「天国」か、はたまた「地獄」かは本人の実力次第という事になる。

一方、日本に残った社員は早晩シンガポール新会社の日本市場を担当する子会社に転籍になるのではないだろうか? 「身分」はシンガポール新会社の子会社(三菱商事孫会社)の正社員という事になる。

三菱商事の事であるから待遇を一気に落とす様な事はしないと思う。飽く迄私の想像であるが、一定期間は三菱商事の年収を維持し、その後長めの移行期間を設定して孫会社の給与体系に合わせて行く様な気がする。

日本を代表する超名門企業三菱商事の今回の取り組みは、日本企業の「グローバリゼーション」対応の一つの雛形になると思う。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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