日本企業はB787問題を危機管理の教訓とせよ --- 岡本 裕明

2013年02月02日 02:24

B787を運行停止にするという日米当局の決定は航空会社にとってまったくの想定外の話であったと思います。最新鋭の航空機を導入することで経営の効率化を達成できるという期待に夢を膨らませながらも度重なる納期遅延でいつまでたっても初飛行できない状態に全日空は苛立ちを見せました。そしてようやく長く待ち望んだ完成品が空を飛び始めてやっとひと段落というところで再び、トラブルに見舞われたわけです。


もっとも全日空にしてみればB787は全所有航空機の7%程度なので経営上のインパクトはそれほど大きくないとされていますが、長期経営計画に遅れが出ていることを考えれば経営陣としては頭痛の種であることには間違いありません。

一方の原因の究明の鍵とされているバッテリー。それは日本のGSユアサ製。GSユアサといえば世界初の三菱の電気自動車のバッテリーに採用されたことでも有名で圧倒的な信頼がある会社です。自動車用と航空機用のリチウム電池は比べ物にならないのでしょうけれど世界を代表する技術を持っていることは事実です。

日本側として同社に国交省が立ち入り調査をしていましたが1月28日には「問題は発見されなかった」とコメントしています。ではどこでどういう問題が生じたのか、次のステップはGSユアサが製作したバッテリーをフランスのタレス社がモジュールとして組み上げる際にトラブルが生じたかどうかに焦点が移るのでしょうか?

いづれにせよ、親会社のボーイング社での検査はまだまだ続きます。B787が再び空に舞い上がるには最低でも数ヶ月の時間を要するのかもしれません。

社外の危機管理とは何か、といえば自社で完全コントロールできないものに対するリスクをどれだけ取り、経営にどれだけインパクトがないようにするかということです。今回、全日空はボーイング社を信じた納期が何度も先送りされたところからリスクが生じ始めました。

一方ボーイング社は飛行機製造をアッセンブルラインとしました。それは多くの部品を8カ国にわたるアソシエートから納入してもらい、シアトルでそれらをプラモデルのごとく、組み上げるという作業でした。そこには国境をまたいだアソシエートとの絶対的信頼関係が幾層にも形成された上でコーディネーターとしてのボーイングがそこに存在することで危機管理を行っているはずです。

当然、飛行機の購入者である全日空はボーイング社の危機管理の手順の詳細までは見えません。ボーイング社を信じるしかなかったのです。これがここまで裏切られたとしたらば同社としては心穏やかなわけがありません。しかし、一方でリスクをもっと高めに見積もることで代替措置を取ることが出来たとしたら全日空はもっとうまくやれたのかもしれません。

私は海外で21年もビジネスをしているわけですが、基本的に相手を完全に信じることなど絶対にありえません。それにはさまざまな理由がありますが、会社の方針は結構揺らぐ、そしてうまくいかなくなるとどんな理由でもつけて自分に責任はないといい続けるその姿勢は何年たってもまったく変わらないからであります。ビジネスをする時は銀行が担保に掛け目を6割ぐらいにするのと同じで相手の言うことを何パーセント信じ、リスクがどれぐらいあり、そのバックアップはどうするのか、そこまで計算しないととても海外でビジネスなど出来ないのであります。

日本企業はいまや、東南アジアを始め、世界中に再び進出し始めていますが、危機管理とリスク応分の掛け目の設定、更にはいざという時の対策には是非とも注意してもらいたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年2月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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