体罰とパワハラ

2013年02月06日 12:53

大阪の公立高校生の自殺から端を発した「体罰」問題はあっという間に全国の高校に広がり、問題の根の深さを国民に見せつけた。


更には、飛び火して何と日本のお家芸ともいえる柔道界に激震を与えている。今は、強化担当理事という日本柔道界最高幹部の一人、吉村和郎氏と現場の責任者、園田前監督の辞任という段階である。

これで問題は収束に向かうのか?、或いは深層にあると思われる患部に更なるメスを入れる事になるのか?、今は不明だ。

「体罰」に対する私の考えは極めて単純である。以前のアゴラ記事、「体罰問題」をどうやって根治するか? で説明した通り、強い立場にいる者が恒常的に暴力を振るうのは明らかな犯罪であり、「刑事司法」に照らして然るべき裁きを受けるべきというものである。

その意味、強化担当理事吉村和郎氏と園田前監督が客観的な「暴行傷害」の証拠を集め送検すべき「警視庁」所属という事実に、何とも問題の「根」の深さを感じる。

今一つの「パワハラ」問題も「ブラック企業」関連と併せネットでは頻繁に取り上げられている。

私は、決して「パワハラ」は許容すべきと考えている訳ではない。しかしながら、「体罰」とは明らかに異なり、何でも駄目といった硬直化した対応では余り好ましい結果にはならないと考えている。

「角を矯めて牛を殺す」になりかねないと危惧するのである。

現存する企業は「破綻」を回避せねばならない。

従業員に給与を払い続けなければならない。

株主に配当を払い続けなければならない。

国に法人税を払い続けなければならない。

「グローバル時代」は企業に取って嘗て経験した事のない過酷極まりない経営状況をもたらした。曰く、世界規模での、「知恵比べ」、「アイデア勝負」、「スピード競争」。

これに敗北した実例が日本の「家電製造業」ではないのか? 投資家は株価急落で巨額の損失を蒙り、従業員のリストラも待ったなしである。

企業の強さはそこに勤務する従業員の「生産性」に比例する。

従って、企業が生き残りを真面目に考えれば、行きつく結論は今いる従業員を限界まで鍛えるという事になる。従業員としては、目一杯背伸びしているのに、もう二センチ伸びて下さいと要求される訳である。

直接命令を下す上司を「パワハラ」で訴えたくなるのも道理である。

楽天やユニクロといった今元気の良い企業が、従業員に「英語」の習得を義務付けるのも当然である。グローバル時代に戦力となり得るのはグローバル人材のみであるからである。

「英語」が堪能であるから、イコール、グローバル人材とは限らない。しかしながら、出来ない様では話にならない。

企業も個人もグローバル時代を生き残ろうとすれば努力を継続するしかない。難しいのは、「生産性向上」を要求する企業(上司)の要求が、見方によっては「パワハラ」と解釈されかねない事である。

従って、今後従業員は絶えず下記三つの「道」の何れを選択するか問い続けられる事となる。

先ず、勤め先(上司)の無理とも思える要求を受け入れ、自らを成長させ続ける。

次は、勤め先(上司)を「パワハラ」で告訴する。

最後は、「命あっての物種」と静かに退職する。この場合、以降の人生で正規雇用の可能性は極めて低いと思う。

アベノミクスを囃して東京市場は取敢えず活況を呈している。しかしながら、財政出動による好況は所詮一過性のもので継続する事はあり得ない。

一方、日銀による金融緩和も国内での「生産設備投資」に金が回るとは思えず、結果意図した内需拡大には繋がらない。通貨(円)の信任を毀損し日本国債暴落の可能性を高めるのが関の山であろう。

経済の主役は飽く迄民間企業である。従って、国内経済を浮揚さすためには民間企業が強くなり、国際競争を勝ち抜かねばならない。そして、強い企業の原動力は強い従業員という事になる。「現役世代」取分け「若者世代」は気の遠くなる様な重荷を背負っていると思う。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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