公務員や会社員は社会保障の利用で実質収入をアップできる --- 金森 徹也

アゴラ

地方公務員の退職金・給与減額が話題になっています。公務員の方は社会保障などの面で会社員よりはるかに優遇されています。公務員と会社員の年収が同じでも公務員の方が金銭的に楽な生活が可能です。残念ながら、優遇されていることを具体的に実現する方法がほとんど知られていないようです。


公務員の場合

一つの例として、「附加給付」の利用方法を説明させていただきます。

その前に、「高額療養費制度」について、簡単に説明させていただくと、健康保険の区分が一般の方は1か月に100万円の医療費が、かかっても自己負担するのは87,430円です。

「附加給付」というのはさらに保障が上乗せされる制度で、上の例のように1か月100万円の医療費でも自己負担は、さらに減ります。

附加給付の自己負担の金額は自治体などにより異なりますが、1か月の負担が4万円とか2.5万円などで済みます。

また、公務員の場合、病気やケガで仕事を休んだ場合でも2年間の給与が減額されずに支払われるなど、保障が手厚くなっています。

この制度を知らずに、民間の医療保険に加入した場合を計算してみます。

実際にアメリカンファミリーのエバー(終身保障、終身払い)で具体的に計算してみます。

例:夫婦共に30歳の場合
入院の日額を1日1万円で試算した場合の月払い保険料と65歳までの支払額、80歳までの支払額を試算結果。
          男性     女性
30歳の保険料  4,030円   4,120円
65歳までの累計 1,692,600円 1,730,400円
80歳までの累計 2,418,000円 2,472,000円

夫婦合計の保険料の累計金額は
65歳まで 3,423,000円
80歳まで 4,890,000円
となります。

1日の入院保険金額が5000円の場合は上記の金額は全て半額になります。

それでも65歳までの保険料だけでも夫婦で1,711,500円となります。

一方、入院した場合の自己負担の上限が1か月に40,000円の場合、60日間入院し、3か月間に渡った場合、最高12万円の自己負担です。

また、ここでは、余裕を持って月4万円として計算しましたが、労働厚生省の指導では月2.5万円となっておりますので、実際は月2.5万円で制度が導入されている所が多いと考えられます。
(注:1か月の上限はその月の1日から月末で計算されます)

65歳までに3か月の入院が夫婦で3回あった場合でも、36万円の自己負担です。

民間の医療保険には1回の入院日数が60日とか120日の限度があります。この例では60日ですので、60日入院した場合では受取り金額は60万円+手術保険金となります。

80歳までの保険料の総額は、およそ500万円ということを考えると、公務員の方は、医療保険はほとんど不要となります。
もう少し年齢の高い夫婦共に50歳の場合の保険料を、試算してみます。
 男性  女性
7,756円 6,264円

80歳までの総支払額は4,939,200円となり、30歳の夫婦の場合と同じく約500万円の支払いになります。

さらにご主人が万一亡くなった場合に支払われる、「遺族基礎年金+遺族共済年金」も会社員より手厚くなっています。
単に公務員の給与や退職金を問題する以前に「お金の専門家のアドバイス」を受けられる状態にしておけば、ムダを省くことは可能です。

それを実現するためにはしっかりした「お金のアドバイザー」を置き、アドバイスを受けることです。
経費として一人のアドバイザーを置いたとしても職員全体の給与と比べると微々たる金額で済みます。

会社員の場合

会社員でも使える場合があります。

また、これらの方法は公務員だけでなく、「附加給付」制度のある会社員でも使えます。
大企業の場合、自己負担の1か月の上限が先に書かせていただいたように月2.5万円の場合が多いです。

また、健康保険組合は従業員700人以上の企業であれば、国の認可を受けて設立することができます。

企業としての損得を計算してみます。

従業員1000人の規模の場合、の制度設計として、月100万円の治療費がかかった場合、健康保険では、元々、87,430円の個人負担です。

ここで、1か月の自己負担を月2.5万円にした場合、健康保険組合の新たな負担は
87,430円-25,000円=62,430円
となります。

従業員1000人であれば一人当たり約62円です。

実際には、もっと複雑な計算になりますが、従業員がこれによっては、医療保険に何百万円も支払うことと、保険料を大幅に減らせることを考える、会社員でも実質収入をアップさせるころは可能です。

また、付加給付は大企業に限られますが、健康保険に加入している会社であれば、傷病手当金という制度で、最長1年半の期間、給与の3分の2が支払われます。

簡単に説明させていただくと、標準月額報酬(年1回4月、5月、6月で決まります)が30万円の人は病気・ケガで働くことができず、会社を連続3日休み、会社からの収入が無い場合に4日目から月20万円の保障があります。

私もマネーの相談件数が1200件以上させて頂きましたが、多くの場合、保険料の払いすぎです。
給与を何に使うかは、個人の自由ですが、1台あれば足りている自動車が、実はもう1台、ただの自動車を持っている、それで、収入が増えない、老後が心配というのは、単なるムダです。

さらに、「附加給付」の知識だけでは、元々「保険」の契約が無い方もいます。「家計診断」「住宅ローン」のアドバイスをできる専門家が必要になります。

つまり、お金のことをアドバイスできる専門家がいれば、実質的な年収アップは可能です。

病気になったら、お医者様に診てもらうように、お金に関することはお金の専門家に診てもらうべきでしょう。

それもできないのであれば、行政や家計のムダを減らすことはできないでしょう。

尚、ムダな保険を減らし、差額を運用する場合、どこで運用するかは、自由です。
もし、貯蓄性の保険を考えている場合は、すぐに見直しが必要です。なぜなら、平成25年4月には、保険会社の貯蓄性の保険は値上がりする予定です。

金森 徹也(かなもり てつや)
アルカディアFP事務所 代表