リフレの損、引き受けるのは賃金下がる私たち--アゴラチャンネル 池田・小幡対談

アゴラ編集部

IMG_0414アゴラは毎週金曜日夜9時から、ニコ生に開設したアゴラチャンネルで映像番組を提供し、読者の皆さまと新しい形のコミュニケーションを作り出す。

生放送の第2回目は2月16日、慶応ビジネススクールの小幡績准教授とアゴラ研究所の池田信夫所長の対談「アベノミクスで日本はどこへ?」が行われた。この対談は、アゴラブックスから電子出版として出版される予定だ。


池田信夫氏による報告『日経平均の根拠なき熱狂
小幡績氏の紹介を兼ねた記事『【告知】アゴラチャンネル2月15日、池田信夫・小幡績(慶大准教授)対談–アベノミクスで日本はどこへ

金融政策でデフレを克服し、財政支出を増やして、インフレを誘導する政策「アベノミクス」。小幡、池田両氏は、その批判の急先鋒でネット上で批判の集中砲火を受けている。小幡氏は『リフレはやばい』(ディスカバー携書)を出版したばかりだ。

そうした批判の論拠は、「株価が上昇し、景況感も変っている。現実を見れば、あなたたちの意見は間違いではないか」というもの。2人はどう答えるのか。

生活感覚の正しさ–物価上昇の直撃

「目先は景気はいいでしょうね。ビジネスを支える態度の乏しいように見えた民主党の退場と、財政出動の期待、そして円安ですから。一部の輸出企業はもうかるでしょう」。小幡氏は述べた。しかし、それが日本経済を持続してよくするとは思えないという。

小幡氏は最近、一番印象に残った経済ニュースは、意外にも何かと批判の多い朝のワイドショーの情報だったという。「生活感覚は正しい。夜の情報番組やニュースよりも、事実を伝えていた」(小幡氏)。ある番組で、東京の商店街で「アベノミクスで良い事ありましたか」というリポーターの質問に大半の人は「関係ない」と答えていた。今のところ客足も給料も変らない。ところがパン屋の人は「円安で小麦が値上がりするので困る」と述べていた。

小幡氏が情報交換するマーケット関係者も冷静という。「日本経済がよくなると信じている人はいないが、トレンドについていこうとする人が大半。逆に、長期的な日本国債のリスクに注目する人が増えていた」。

日経225を構成するのは大企業だ。円安で業績はよくなるだろう。しかしそれは「一部の企業のみ」(小幡氏)。普通の成熟国は通貨高を歓迎する。国の力が世界でそれだけ強くなる事だから。産業構造も、輸出企業主導の経済から変化している。けれども多くの人は円安で景気がよくなると過去の経験で錯覚している。また輸入物価上昇はコストに響いてくる。「これからマイナス面が出てくるだろう」(同)。

56eaed0d-s問題は賃金という。池田氏は一つのグラフを出した(図表)。日本は名目賃金が95年以降、2010年まで1割減少。一方で、米国はこの減少が物価の下落、デフレをもたらした。賃金はどの国でも下方硬直性を持つ。日本が例外なのは、若年労働者を非正規雇用で雇う一方で、中高年の雇用を守る代わりに、賃下げを行う、従業員共同体を守る労働慣行にあるという。

小幡氏はそれに同意した。インフレは実質賃金を下げる効果がある。「生活の中で賃金が切り下がるのに、賃金は途上国との生産競争で上がりづらい。そして、日本はそもそも賃金水準が、20年前のバブル経済以来、高止まりしていた。リフレの生活へのリスクを考えて経済政策を考えてほしい」と指摘した。

安売り競争–今までのやり方を繰り返すな

アベノミクスとリフレを行い、円を切り下げ、賃金を安くしても、結局は、モノ作り競争に巻き込まれかねない。これは今までの日本企業の取り組みを繰り返す「いつか来た道」で、賃金面で途上国にかなうわけがない。小幡氏は語った。「日本は今までのやり方に固執してはいけない。難しい道ではあるが発想を変えて、世界との分業の中で、高付加価値な商品、サービスを提供していくしかない」。

日本経済の未来、そしてマーケットでの対処法までを語り合った、2人の経済論客の議論の詳細は、近日出版される。またアゴラチャンネルは毎週金曜日午後9時から、さまざまな論客、ニュースを、ニコ生を通じて配信する。

言論プラットホーム・アゴラは他のポータルサイトの転載を含めると月500万ページビューの閲覧があり、新しい形のウェブメディアとして成長しつつある。今後はその存在感を活かしながら、読者の皆さまとともに映像という新機軸にチャレンジしていきたい。

(アゴラ編集部)