インフレって何?

2013年02月18日 11:59

安倍首相は「2%のインフレを起こせ」と日銀にもとめています。インフレとは、物価が上がることです。たとえばみなさんのおこづかいが1000円だとすると、10%のインフレが起こると100円のチョコレートの値段が110円になって、今まで10枚買えたチョコレートが9枚しか買えなくなります。みなさんはうれしくないと思いますが、安倍さんは何がうれしいのでしょうか?

「値段が上がると思うと消費がふえる」という人がいますが、これはかんちがいです。インフレというのは消費税と同じようなものだから、買えるものが少なくなって消費はへるのです。1997年の消費税率の引き上げのときも、3月まではかけこみで消費がふえましたが、4月以降はへって合計ではマイナスでした。消費税の引き上げにあれだけ抵抗する消費者が、インフレに抵抗しないのは変でね。

「インフレになると売り上げがふえる」というのもかんちがいです。インフレでふえるのは名目の売り上げで、たとえばお店の売り上げが100万円から110万円になっても、仕入れる商品の値段も10%上がるので、お店にとっては得にも損にもなりません。ものの価値は、それがどれだけの商品と交換できるかという実質で決まるので、お金がふえてもへっても実質所得はかわりません。

だから「インフレで景気がよくなる」というのもかんちがいです。お店の売り上げがふえると気持ちはよくなるでしょうが、実際に買えるものがふえるわけではないので、しばらくするとその景気のよさはなくなるでしょう。ただ一時的にかんちがいをおこすと株価などが上がるので、政治家が選挙に当選するためにはかしこいやり方です。

ただ、すべての物価が一度に上がるわけではないので、一時的には効果があります。とくに大事なのは、給料がすぐ上がらないと実質賃金が下がることです。実質賃金というのは給料(名目賃金)からインフレ率を引いたものです。たとえばお父さんの給料が変わらないと、2%のインフレになったら買えるものは2%へるので、みなさんのおこづかいもへらされるでしょう。つまり働く人は貧しくなるのです。

実は、それがインフレのねらいなのです。日本の企業はもうかっていません。その大きな原因は中国から安い輸入品がはいってくることですが、中国のものが安いのは中国の賃金が日本よりずっと低いからです。たとえばジーンズを1本つくる人の時給が日本では800円で、中国では100円だとすると、日本でつくると8000円のジーンズが中国では1000円ぐらいでつくれます。

でも日本の賃金を下げるのは、労働者がいやがります。そこでインフレにすると実質賃金が下がるので、日本の会社はもうかります。たとえば8000円のジーンズを8800円に値上げして給料をすえおくと、値上げの分だけ利益が上がるわけです。会社がもうかると労働者をたくさん雇うので、失業率も下がります。つまりインフレというのは、労働者をだまして会社の利益をふやす政策なのです。


こういう政策に効果があるのは、アメリカのように賃金交渉で毎年、賃金が上がる国ですが、日本では実は給料(名目賃金)は上の図のように下がっています。この15年でアメリカと日本の給料の差は80%以上ひろがっていて、これが日本だけでデフレが起こった原因です。賃金はコストの半分ぐらいなので、日本の物価がアメリカより30%ぐらい下がったのです。

このようにデフレの最大の原因は給料が下がっていることなので、日銀が何をしてもインフレにはなりません。ただ安倍さんのおかげでドル高になっているので、原油などドル建てで輸入しているものの値段が上がる輸入インフレは起こるかもしれませんが、これはいいことではありません。

景気がよくなるとみんながものを買うのでインフレになりますが、逆にインフレだけが起こっても景気はよくなりません。みなさんがかぜを引いて熱が上がったとき、体温計を冷やしてもかぜがなおらないのと同じです。でも「やまいは気から」といいますから「この病気はなおる」と思うことは大事です。その意味では安倍さんのかんちがいも、それなりの意味があるかもしれません。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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