「撮り鉄」を収益源に変えよう! ---長井 利尚

アゴラ

例年3月には、JR各社がダイヤ改正を行います。それに合わせて、春にダイヤ改正を行う鉄道会社が多く見られます。

私は、幼い頃から鉄道マニアで、小学生の頃から一眼レフカメラで鉄道を撮り続けてきました。今で言う「撮り鉄」というジャンルです。高校生の頃から、撮影した写真を出版社に貸与し、鉄道趣味誌の表紙や巻頭カラーグラビアなどに使っていただき、お金を稼いできました。

近年、人気列車が廃止される際、最終日に集まる、いわゆる「葬式鉄」のマナーの悪さがクローズアップされています。ここまでくると、もはや業務妨害としか言えません。私は、このような方々とは違いますので、「撮り鉄=迷惑な人」というイメージが流布されることを、非常に迷惑に感じています。

しかしながら、毎年のように同じ光景が繰り返されながら、警備コストをかけるだけの鉄道会社側の対応には、疑問を感じることも事実です。


杉山淳一氏は、以下のように指摘されています。

鉄道ファンは鉄道にお金を払っているのか。ほとんど払っていない。ここが鉄道趣味と他のオタク趣味との違いだ。高級カメラと長い望遠レンズで列車を撮り、高価な鉄道模型を収集する。鉄道ファン向けの書籍、写真集も山ほどある。こうした趣味行動を見ると、鉄道ファンはお金持ちに見える。しかし鉄道ファンのお金は、趣味の対象である鉄道会社にほとんど還流されない。そのお金はどこへ行くかと言えば、カメラメーカー、撮影地に向かうクルマのメーカー、模型、本を作る出版社などである。鉄道そのものを提供する鉄道会社にはほとんど届かない。これが鉄道趣味の特徴であり、他のオタク市場と決定的に違うところである




確かに、鉄道ファンは、趣味にお金をかけます。撮り鉄の場合は、時間を割いて撮影地に行くわけですから、高価なカメラを買える金銭的余裕と、時間的余裕の両方があるわけです。

更に、「葬式鉄」に関する記述が続きます。

“不届き者も目立つ。列車の廃止となればホームからあふれんばかりに身を乗り出して撮影し、危険区域に立ち入ろうとする。そこまでしなくても、立ち居振る舞いだけで、他の客に不快な思いをさせたり目障りだったりする。鉄道ファンが不注意で事故を起こし痛い目に遭っても自業自得だが、鉄道会社としては看過できないので、警備員を雇ったり、駅員を増員したりと経費をかけなくてはいけない。そうして配慮したにもかかわらず、警備員が撮影の邪魔だと罵声を浴びせたりする。格安切符のくせに“オレは上客だ”という態度で誤った規則の知識を振りかざす。これが他のオタク趣味であれば、多少のクレームがあっても「(直接お金を払ってくれた)お客さんだから……」と納得できよう。しかし鉄道会社は我慢するだけ”

この不幸な関係を解決するヒントは、シンガポールのCOE(Certificate Of Entitlement・車両取得権)制度にあると思います。東京23区程度の面積しかないシンガポールでは、公共交通機関の運賃を安くするのと同時に、自動車を購入する人には重い負担を課して、酷い渋滞が発生しないようにしているのです。

「撮り鉄」は、それなりにお金を持っている人が多いですから、人気列車の最終日にホームなどで撮影する権利をオークションに出して売れば良いのです。安価な入場券(120~160円)さえ買えば駅のホームに入れる状況を放置しているので、あまりにも大勢の「葬式鉄」が押し寄せ、鉄道会社は全然儲からないのに警備費用が嵩むのです。

撮影権の数を限定し、Yahoo!オークションなどで販売すれば良いのです。ネットオークションなら、出品側の手間もあまりかかりません。「葬式鉄」には、「10万円払ってでも、最終日の列車を撮りたい」という人と、「そこまでお金をかけて撮りたくない」という人が混在しているはずです。前者の「優良顧客」だけと付き合うことで、増収とコスト削減が同時に実現するでしょう。



長井アソシエイツ
Managing Director
長井 利尚