ジャングルからサバンナへ、社会の二極化

2013年03月05日 10:50

最近、アゴラではブラック企業の問題が、頻繁に取り上げられているようですが、この問題は、企業の体質の問題というよりは、もっと構造的な根深いものであり、法の整備などでは解決しない問題のように思います。 

ここでは、ブラック企業の問題そのものを考えるのではなく、こういった問題が何故起きているのか、その背後にある構造問題について考えたいと思います。


拡大する格差

今、先進各国では、格差の拡大が続いています。

アメリカでは、所得格差の拡大が深刻です。 1979年から2007年の間に、上位1パーセントの収入は、平均すると275パーセント増加する一方、同じ期間に、60パーセントを占める中間所得層の収入の増加は40パーセントに、下位20パーセントの最低所得層では18パーセントの増加に留まっています。 格差が拡がっているのです。 また若年層の就職難も深刻で、アメリカの19歳から20代前半の若者(ハイスクール卒、大学卒)の4割は職がない状態です。その結果、2011年9月”We are the 99%”をスローガンにOccupy Wall Streetと呼ばれる大規模なデモが発生しました。

一方、日本では非正規雇用の拡大が続いています。総務省が19日発表した2012年平均の労働力調査詳細集計によると、雇用者(役員を除く)に占める非正規雇用労働者の割合は35・2%と、1984年の調査開始以来、最も高い割合となりました。前年に比べ0・1ポイント上昇しました。 多くの人が不安定な職に就いています。 

また、正規雇用においても、サービス残業や名ばかり管理職といった雇用慣行が問題化しています。 東洋経済の最新号の「ユニクロ疲弊する職場」を見ると、それが良くわかります。 
 

社会の豊かさと多様性

それでは、なぜ、格差が拡大するのでしょうか。これを理解するには、植物の世界を見れば簡単に分かります。 

次の写真はサバンナの写真です。 

サバンナ

この写真を見て分かるように、サバンナでは、大きな木がまばらに生えている他は、草原になっています。

一方、同じ熱帯にあっても降水量が多いとジャングルになります。ジャングルはサバンナと異なり、多種多様な植物が生えており、植生は遥かに豊かです。 降水量という豊かさの多寡が、サバンナとジャングルを分けているわけです。  

これと同じように、人間の社会も、その豊かさで状態が異なります。

たとえば、江戸時代は身分制度がありましたが、これは、社会が豊かでなかったので、多くの人たちは農民として食糧生産に従事しなければならなかったからです。

また、アメリカの奴隷制度は南北戦争後に廃止されましたが、奴隷制度を廃止したのは、人道主義ではなく、化石燃料の使用による工業化であり、化石燃料のエネルギーが奴隷制度を不要のものにした、と言えるでしょう。   

平等で多様性を持った社会というのは、社会が十分な豊かさを持っていなければ、実現できません。 平等で居心地のよい社会は、社会が十分に豊かであって初めて成立するものなのです。 

日本の明治維新は、サバンナのような社会(富める大きな木は少しで、大部分は貧しい草)が、ジャングルのように豊かで多様性のある社会へと移行する過程でした。  

先進国のサバンナ化

今、先進国で起きていることは、正にその逆、ジャングルからサバンナへの移行です。

先進国経済は停滞し、国民は貧しくなりつつあります。 これは、ジャングルに降る雨の量が減少しつつある、ということに相当する変化です。

この原因は、エネルギー資源の減耗を始めとする地球の有限性の顕在化と、グローバル化による平準化です。

例えば、98年と比較して、現在の日本の化石燃料費は年間20兆円ほども増加しています。これは一人当たり17万円程度の負担増で、それに呼応して実質賃金が低下しています。

これを止めることは不可能です。なぜなら地球は閉鎖系ではありませんが、人類が異常なスピードでエントロピーを増大させているからです。 
 
その結果、社会が貧しくなりつつあり、格差の拡大が起きていると考えられます。 つまり、社会の多様性が失われ、少数の勝者と大部分の敗者に社会が二極化する現象が起きているのです。 

これが、今、我々が目にしている先進各国における格差の拡大、企業間競争に於ける勝者総取りの構造です。 機械との競争、アウトソーシングより、労働の二極化が進み、上位1%の高スキルの労働の価値が高まり、残りの99%の労働は低い価値しかなくなってしまう、ということが起きています。 その結果、労働者の立場は弱まり、労働者を使い捨てにすることが、企業にとって合理的になり、所謂、ブラック企業の問題が起きているわけです。  

社会的な解は存在しない

このような格差の拡大、社会の二極化の問題は、これから益々深刻になるでしょう。 我々はどうしたらよいのでしょうか。

上で見たように、社会が豊かになれば、この問題は解決します。 しかし、よく経済学者の方々が主張される、生産性の向上も、社会全体を豊かにするのは難しいと思われます。実際、地球の有限性が顕在化している現状においては、生産性の高い企業の出現は、世界経済のパイが大きくならないために、別の場所で失業や過当競争による生産性の低下をもたらすために、社会全体を豊かにすることは極めて難しいからです。 経済成長には物理的な限界があるのです。

アマゾンの出現で、電機量販店が経営難に陥ったり、電子書籍の出現で、書店が閉店したり、今起きていることは、正に、ジャングルからサバンナへの移行なのです。 

これは。「生産性の上昇が人を幸せにするために」前記事で書いたとおりです。 社会的にできることは、省エネルギー、省資源に努め、エネルギー構造の転換をするしかありません(間違っても、リフレでみんなが豊かに、などと考えないことです)が、少なくとも短期的には解はないと言ってよいでしょう。

しかし、個人としては、できることがあります。 それは、とにかく高スキルを身に付けることです(必ずしも頭が良くなくても、植木職人として一流になるなど、工夫の余地はあるでしょう)。 私も教育者として、多くの大学生を前にして、彼らが高スキルを身に付け、生き延びてゆけるように、微力ながら努力したいものです。 

このまま進むと社会は否応なく二極化します。 平等や多様性が失われた社会は、居心地がよくないかもしれませんが、我々は、それに適応してゆく必要があるでしょう。  

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