科学技術はオープンにしてこそ意味がある

2013年03月08日 11:57

山田高明さんの記事「シャープの凋落に元副社長の佐々木正氏の影あり?」、に、ちょっと違和感を感じたので、理系研究者として、簡単に自分の意見を書いておきたいと思います。 一意見としてお読みください。


科学技術はオープンにしてこそ価値がある

私は、数学の研究をしています。 数学研究の世界では、世界のどこに、どんな研究者がいて、どんな研究をやっているのかは、ほぼリアルタイムに分かります。 

例えば、どこかで誰かが講演し、そのタイトルをネットなどで見れば、その分野のプロであれば、ほぼ、どんな内容の研究で、どんなことをやっているのかは、かなり正確に分かります。 勿論、それを見て、自分のやろうとしていたことが、先に誰かにやられてしまったことを知る、というようなこともあります。  

研究交流も盛んで、優れた論文が発表されれば、それを手分けして読み、勉強会を開いたり、国際的に共同研究をしたりしますし、自分が得たアイデアは、論文にしてarXivなどのサイトに投稿し、誰にでもダウンロード出来る状態にするのが普通です。 

自分のアイデアが、他の研究者の踏み台になることもありますが、それはそれで嬉しいし、逆に、他の研究者のアイデアを踏み台にすることもあります。 というより、今日の研究は、過去の様々な研究者の研究の上に作られているものです。

つまり、研究をオープンにすることで、お互いにメリットがあり、秘密にし続けると研究が進まなかったり、埋もれてしまったりするわけです。

これは他の分野でも、そんなに変わらないでしょう。 たとえば、京都大学の山中伸也教授のIPS細胞の研究でも、IPS細胞の作り方などの、研究の根幹部分をオープンにすることで、世界のIPS細胞の研究が活性化し、多くの研究者の研究が加速しているように思います。 

プロの研究者の最大の喜びは、他人に自分の研究を理解してもらい、有難がられることです。それが、日本人であろうと、外国人であろうと全く関係ありません。 

また、他の研究者の反応で、自分の研究者としての立ち位置が良くわかります。 

よい研究成果を挙げていれば、大きな研究集会の講演に招待されたり、またその旅費の補助を受けられたり、共同研究の申し出を受けたり、科研費などの補助金を得られたりするので、自分の分野での自分の立ち位置というのは、かなり正確に分かりますし、また、それで研究が加速するのです。 

喩えが悪いかもしれませんが、プロの研究者は、芸者みたいなもので、どのくらい、お座敷の声が掛かるのか、で自分の立ち位置が分かるわけです。 

秘密にするメリットの大きさ

科学技術はオープンにしてこそ価値がある、とは言っても、営利企業の場合は、技術を秘密にするメリットは勿論あります。

しかし、そのメリットは、多くの場合、そんなに大きなものとは言えないのではないか、と思います。

それは、要素技術の場合、それによって保てる優位性の寿命が、そんなに長くないだろうと思われるからです。 これは、自分にしかできない、とか、わが社にしかできない、と思っていることでも、所詮人間のやることなので、すぐに追い抜かれるものだ、ということです(これは、プロの研究者として自分も感じるところです)。 

山田さんが問題にしている、半導体技術の流出にしても、日本もアメリカに半導体技術を習ったわけで、技術というものは、広まってゆくのが自然な姿です。  

私は、企業で働いたことがないので分かりませんが、恐らく、企業の優位性は、要素技術というよりも、それをインテグレートするノウハウといった、表に出にくい無形の部分ではないでしょうか。 

これは、その人の論文を読んでも、なぜ、そのようなアイデアが浮かんだのかが分からないが、弟子になったら良く分かった、という種類のことのような気がします。

追伸 日本の半導体技術者の方は、日本の半導体産業の行く末よりも、自らが持っている半導体技術をどうやって伝承してゆくかということを、とても気にされていると聞きました。 これは、私としては非常に共感できます。 

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