ユニクロ問題についてー大学教員としての立場から

2013年03月09日 13:29

山口巌さんの「ユニクロというエクセレントカンパニー」を拝読し、あまりに表層的な議論に愕然としたので、ユニクロの問題について、企業へ人材を送りだす大学教員としての私の見解を書いておきたい。 

ユニクロの問題は、「ブラック企業、日本を食いつぶす妖怪」に書いてあるような、名ばかり管理職の問題(管理業務が本務でないと認められるのに、管理職として扱い、残業代を払わない)や離職率の高さ。といった問題も確かにあるが、最大の問題は、ユニクロの持つ企業イメージと、実態の乖離ではないか、と思われる。


店長こそ最終目標

ユニクロでは、店長こそがユニクロの主役であり、社員の最終目標とされる。  

実際、これは柳井正氏の著書「一勝九敗」に明言されている。 柳井氏は、この本の中で、店長が知識労働者になることが必要で、店長を最終目的とすべきだと主張し、さらに 

店長を最高の仕事ととらえ、店長の仕事を全うすれば、本部にいるよりも高収入が得られる。このような仕組みを作らないと、小売業は繁栄しない。(P.156「店長でいることが最終目標」)

と述べる。 実際、東洋経済の「ユニクロ、疲弊する職場」に書いてあるように、ユニクロは、店長を「独立自尊の商売人」であるとして、労働時間管理を不要とする労働基準法上の「管理監督者」として一律に扱っており残業代は支払っていない。 

まとめると、


(1)店長こそユニクロの主役であり、最終目標である。

(2)店長は、知識労働者であり、独立自尊の商売人である。

(3)店長の仕事を全うすれば、本部にいるよりも高収入が得られる

となる。 

柳井正氏は、多くの著書やインタビューで、自らの考えを述べ、これからは、グローバルに活躍する人材が必要と説き、最近の日経のインタビュー記事の中では、大学教育について語り:

――そんな大学で学んだ学生をどう見ていますか。

 「世の中で生きていくのに必要な基礎的な教養や知っておくべきことを知っていないし、知識の絶対量も少ない。そのために適切な判断ができない。もっと知識を詰め込まないと、自分が進んでいる道が世の中の方向性に合っているのか分からない。自分の判断が正しいかどうかを常に意識して行動することを習慣付けるべきだ。実業界は自分で考えて、自分で結論を出して実行できる人材を求めている」

 ――これからの大学は学生に何を教えればいいですか。

 「社会に望まれるビジネスはどのようなものなのか、社会により貢献できる経営のあり方、人間のあり方を教えてもらいたい。会社員製造機関ではだめで、起業家の育成が大切だ。大学や大学院でそうした講座も出てきたが、小手先だ。経営マインドを持つ人材が大学から輩出されないから、そのための機関も自前で作った。世の中を変えるような仕事ができる人材を育てたい」

と述べている。 

このように柳井氏は、「自分で考え、自分で行動する」といった、自立した人材が必要であると繰り返し説き、それが、企業人として自己実現をしたいという大学生にとって、ユニクロを魅力ある企業に見せている。

実際「ユニクロ、疲弊する職場」には、次の記述がある。

「ユニクロの服を着ている人はスタンドアップ。こういう人が、選考の第1候補だ」

2月8日、東京・六本木のミッドタウン・タワー。カジュアル衣料大手のユニクロやジーユーを傘下に持つファーストリテイリングの東京本部で、新卒採用イベント「ユニクロ・ジーユー希望塾」が開かれた。同社の柳井正会長兼社長が開口一番こう語りかけると、800人弱の学生たちで埋め尽くされた会場は、どっと沸いた。

「世界一へ。グローバルリーダー募集」と大書された採用パンフレットには、多くの社員たちの笑顔が並ぶ。「入社1年半でフランスに赴任」「バングラデシュでソーシャルビジネスを起業」といった内容に、学生たちは目を輝かす。

ユニクロの店長の実像は?

しかし、現実のユニクロの店長は、「ユニクロ、疲弊する職場」、「ブラック企業、日本を食いつぶす妖怪」に書いてある記述が正しいとするならば、知識労働者、独立自尊の商売人、 店長の仕事を全うすれば、本部にいるより高収入が得られる、といったイメージとは大きく異なっている。 

特に驚いたのは、分厚い店舗運営マニュアルを手写しで暗記させられ、その通りに動くことを求められる、という部分(「ブラック企業、日本を食いつぶす妖怪」、50ページ)で、その上、店長の権限は驚くほど小さく、店長が独立自尊の商売人、知識労働者とは、とても思えないのである。

徹底したマニュアル化による作業の効率化は、自ら考え、判断し、行動する、という柳井氏の哲学とは、真逆のように見えてならない。 こういった徹底したマニュアル化で、独立自尊の商売人が育成出来るのか、疑問を感じる。 

また、店長といっても、スター店長、超大型店のスーパースター店長、にならないと、本部職員並みの給与は支払われないようだし、スーパースター店長(本部の部長並み)にならないと、年収1000万円に到達しないようだ。 

客観的に見て、柳井氏が日頃言っていることと、実態は大きく乖離しているように見える。 島田裕巳氏が「誰がユニクロを「ブラック企業」にさせたのか」で主張されているように、ユニクロに就職を希望するなら、ユニクロという企業を良く調べることが必要であることは、論を待たないが、実態が見えにくくなっている現状では、ユニクロ批判も必要ではないかと思う次第である。

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