ユニクロの高い離職率が意味するもの

2013年03月11日 03:07

私の前記事に、山口巌さんが「ユニクロの柳井正社長は嘘つきなのか?」を書いて抵抗しているが、問題の本質を見誤っているようなので、前記事と重複するが、簡単に指摘しておきたい。

私は、ユニクロの経営システムそのものを批判しているのではなく、実態と乖離した「世界一へ、グローバルリーダー募集」といった、プロパガンダを掲げた人材募集の方法に問題があると言っているのだ。


ユニクロの強みは何か?

ユニクロの強みは、価格の割に品質がよいことだ。 

それでは何故、価格が安いのか? それは少品種、大量発注ということも要因として挙げることはできるが、人件費比率が小さいことが大きな要因であることは間違いない。 

それでは、人件費比率が小さいのは、何故か? ということだが、これは

(1)正社員比率が非常に小さい(約10%)。 
(2)店長を管理職にして、残業手当を支払っていない。
(3)社員の教育にコストを掛けていない。

という要因を挙げることができる。

まず、正社員比率が非常に小さいのは、特に問題にはならないが、これは、多くの仕事が規格化されており、高いスキルが必要とされていない、ということを示している。 

次に、店長が労働基準法上の管理職に当たるのか、という点については、「ブラック企業、日本を食いつぶす妖怪」にあるように極めて疑わしいと思われる。店長の仕事は、店舗運営マニュアルに沿って行われ、規格化されており、店長の裁量権は、在庫の発注とスタッフの採用など非常に小さいとされる(「ユニクロ、疲弊する職場」参照)。 

第三の社員の教育コストだが、これがもし高ければ、3年で半数、5年で8割超といった離職率の企業は存続できないはずである。 従って社員の教育コストは安いはずだ。 事実、ユニクロの人材育成はかなりの促成栽培のようだ。 入社後、半年で店長になることを目指すというスピードぶりだ。 社員は、店員として働きながら、10センチにもなる店舗運営マニュアルを手書きで書き写し(社外秘として持ち出し不可のため)、徹底的に暗記することになる。暗記は自宅に帰ってからと休日に行われ、勿論、これには手当は支払われないから、社員の教育コストは、あまり掛かっていないと思われる。 

まとめると、ユニクロのシステムは仕事の徹底的な規格化(マニュアル化)によって、著しいコストカットを実現しており、これが、ユニクロが非常な低価格で商品を売ることを可能にしている。  

徹底したマニュアル化で、労働を細切れにして価値を下げ、謂わば、労働のオートメーション化を行い、店長までも規格大量生産する仕組みを整えているわけで、これは、製造業ではなくサービス業においても、オートメーション化による生産性の向上を行った、著しい成功例と言えるだろう。 

離職率の高さが意味するもの

さて、その一方、3年で半数、5年で8割超といった離職率は何を意味するのだろうか。これには、島田裕巳氏が「誰がユニクロを「ブラック企業」にさせたのか」で主張するような、店舗運営には高度のスキルが必要であり、店舗運営に向かない人材が脱落してゆく、と見る見解もあるようだが、この見方は正しくない。

なぜなら、仮に島田氏の主張が正しいとするならば、高い離職率は、大部分の店舗は、店舗運営に向かない店長が運営していることを意味するからである。 これでは企業として成り立たないはずである。実際、店舗を訪れた実感として、そのような事実は認められない。 

論理的に考えれば、ユニクロの高い離職率の意味するものは、店長の仕事が、著しく規格化されているために、簡単に代替可能である、ということだ。つまり店長は、独立自尊の商売人、知識労働者ではなく、非常に厳しく規格化された部品なのだ。

実際、ユニクロの店長の仕事が、普通の洋品店の店長と異なるのは、仕入れ(しかも仕入れる商品はユニクロのものだけだ)、人件費の管理、広告などの仕事は、大部分、本部が決定している、という点にあり、そもそも独立自尊の商売人としてのスキルを身に付けるのは極めて難しいだろう。  店長を辞めた人には、大したスキルは残らないと思われる。 

「ベテラン社員が語る、ブラック企業・ユニクロが現場にサービス残業&うつ病を強いる実態」を見ると、ユニクロが如何に熱心に人件費カットを行っているかが、分かるが、正直言って、店舗職員には、気の毒な状態のようだ。

労働の二極化に沿った採用をすればよい

私が問題にしているのは、ユニクロの企業イメージと実態の乖離で、ユニクロのシステムを批判しようというのではない。 

高いスキルを持った一握りの人たちに高給を支払う一方、大部分の仕事はマニュアル化され機械化され、IT化されて価値が低くなり、その結果、大部分の低スキルの仕事が、低賃金に甘んじるのは、仕方のないことである。  

私の言いたいことは、労働が二極化しているのだから、それならそれで、就活生に「世界一へ、グローバルリーダー募集」などという実態と乖離したプロパガンダを掲げることを止めて、「グローバルリーダーは(新卒でなくても中途採用でもいいので)、別途採用します」という方が正直で良いのではないか、ということだ。

そもそも、決められたマニュアル通りに働く人材が欲しいのであれば、何も大学を出ていなくても構わないわけであるし、厳しい労働に耐えられる体力と精神力、低賃金でも文句を言わない従順さを持った人材を、選ぶ方法はいくらでもあるだろう。

マニュアル労働の末、大したスキルも身に付けられずに、大量の若者を離職させることは、社会的損失も大きい、私が言いたいのはそれだけだ。  

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑