マレーシアに学ぶ開かれた社会 --- 長井 利尚

アゴラ

今月はマレーシアのペナン島に2週間ほど滞在し、現地のビジネス環境等を調査しました。マレーシアは多民族国家で、昔から国際交流が盛んであるせいか、異文化・外国人に対してとても寛容です。この寛容さは、マレーシア経済が好調である要因の一つでしょう。


イスラム教国ですが、中東と違って怖さは全く感じません。それに対して、日本は極めて排他的であり、それが自滅の理由だと思います。多くの日本企業では、意思決定権があるのは、60歳以上の日本人男性だけです。これでは、うまくいかないのは当然でしょう。これだけ変化の激しい時代に、若手・外国人・女性を排除した経営なんて無理です。そういう会社を政府が延命するなんて、もってのほかです。

トップの意識の高い会社は、社内公用語を英語にしていますが、まだまだ少なすぎると思います。日本語はかなり難しい言語です。優秀な外国人でも、費用対効果を考えると、余程の日本マニアでない限り、日本語を習得しようとは思いません。

だからといって、優秀な外国人を排除して、企業経営が成り立つとは思えません。ビジネス英会話は、日常英会話よりずっと簡単です。日常会話では、どんな話題が飛び出してくるかわかりませんが、ビジネスなら、話の内容はだいたい決まっています。中学英語をよく復習して、業界の専門用語などは辞書をひけば大丈夫です。TOEICなんて、意味があるとは思えません。TOEICのスコアを気にしているのは、日本人くらいではないでしょうか。あまり細かいことは気にせず、ジェスチャーを交えたり、絵や図を描いたりすれば、ほとんどの意思疎通はできます。日本人だけの会議なら日本語を使うのが早くて良いでしょうが、一人でも日本語がわからない人がいたら、中学レベルの簡単な英語を使うべきです。日本国内でも英語を使わざるを得ない場面が多ければ、学校で習った英語を忘れにくくなるでしょう。

東京の都心では外国人のビジネスパーソンをよく見ますが、地方では、ほとんど見かけません。地方では、英語のネイティブスピーカーが働ける場所は、英会話産業くらいしかありません。これは、非常にもったいないことです。日本文化は、海外でとても人気があります。多少税金が高くても、日本が好きだから日本で生活したいという外国人ビジネスパーソンは少なくないはずです。そのような方を受け入れる会社が極めて限られているのは、なんとも情けないことです。

国際感覚に乏しい団塊経営者が居座っているのは、害悪でしかないと思います。彼らをパージすれば、瞬間的に日本は復活するでしょう。経営陣が高齢日本人男性に独占されている会社には、重税を課したら良いのです。 外国人が日本企業の経営に本格的に関与するようになれば、年齢・国籍・性別によって差別するクレイジーな人事制度はなくなるはずです。あらゆる人が働きやすい環境が実現するでしょう。

私は、外国人のマネージャーが日本人を使う組織が良いと思います。日本人は、そういう教育を受けていないせいもあるのでしょうが、組織の長になる資質のある人が少なすぎるように思います。リーダーシップという点では、外国人に完敗です。一方、細かい作り込みなど、外国人にはとても真似のできないことをやってのける人が多く、これは日本人の強みだと思います。グランドデザインを描いたり、組織をマネージしたりするのは外国人(や、それができる少数の日本人)に任せ、大多数の土着日本人は彼らの下で働くのが、お互いのためになるのではないでしょうか。

もちろん、いわゆる「特亜」の比率が高くならないよう、注意する必要はあります。特定の国に偏らず、いろいろな国の出身者が日本に集まって、知恵を出し合って働けるようにすれば良いのです。

長井 利尚
株式会社長井精機 取締役