もう始まっている日本史の転換 --- 高橋 由佳

アゴラ

先日、日本史には400年ごとに転換点があり、現在は400年続いた江戸から続くひとつの時代から新しい時代への転換期ではないかというような主旨の話を書いた。その際、日本の少子化について江戸期から続く観念から女性が開放されれば、解決策もあるのではないかと提起した。

しかし少子化についていろいろ考えてみて、もうすでに現代の女性は江戸的なものから開放されており、そのため少子化については解決策というものはなく、むしろ日本の人口減少を前向きにとらえた方がいいという考えに思いいたった。


近年世界の先進国ではどこも少子化が進行している。フランスのように少子化に歯止めがかかった国もみられるがたいていの国は出生率が下がっている。米国は比較的に高めにとどまっているが移民によるベビーシッターの供給などが要因かもしれない。先進国で出生率が低下する要因は女性の社会参加や自己実現のため、出産年齢がどうしても高くなるためと思われる。

日本も同様で女性の社会参加とあいまって出生率は低下してきている。このため今後日本社会は人口減少に向かっていく。

どなたかが書いておられたが日本の国が人口減少に陥るのは有史以来初めてのことらしい。これまでは国が興り、拡大し、戦乱はあったにせよ人口は増えてきた。今回このはじめての人口減少こそ時代の転換ではなかろうかと思いいたった。特に戦前戦中の「産めよ増やせよ」や、戦後の会社に仕えるサラリーマンと専業主婦と子供二人の画一家族モデルは江戸の名残であったかもしれず、今さら、元に戻すことは難しいだろう。

これは女性の生き方にいろいろな選択肢が増えたということであり、喜ばしい変化だ。女性が自分のキャリアを築くためには卒後何年間かは働く必要があるし、そうすれば結婚年齢は必然的に上がり、出産も30台前半になるだろう。

このことは少子化に悩む世のお父さん世代も自分の娘さんのキャリア形成を考えると納得することだろう。女性がキャリアをつけてから子供を産むという社会もいいものではないかと思う。

そのためには出産後に職場復帰ができるように保育所の整備も望まれるが、何より長時間労働など男性の視点のみで回っている感がある仕事の現場を保育園に迎えができる時間に仕事を終了できるようにすることやITを使って家庭でも仕事ができるようにするなど育児の視点を取り入れた環境に変えていくことが必要だ。

ただ環境が変わってもすぐに少子化が改善するとは考えにくい。女性の出産年齢があがるのだから子供もたくさん産めないだろうし、やっぱり人口は減っていくだろう。

それでもいいのではないか、そこから新しい生活スタイルや産業がおこるのではないかと思う。

今後の日本は今までの人口増加を前提とした政策、たとえば日本の隅々まで道を作るというような政策から、ある程度拠点を作り、そこにインフラを集中していくなど人口減少を視野に入れた政策に転換していく必要があるのではないかと思う。まだまだ遠い先のことと考えられるかもしれないが女性の平均初産年齢は年々上昇し、30歳を超えてきており、あっという間に状況は変わるのではないだろうか。今、日本は急速に変化している。歴史の転換はもう始まっている。

高橋 由佳
内科クリニック勤務 医師