実は根深いキプロス問題 --- 岡本 裕明

2013年03月25日 12:01

キプロスという文字がメディアの中で踊り始め、ほぼ一週間になります。この地中海に浮かぶ人口100万人程度の島が今、世界の注目の的となりEUのトップは東京での会議をキャンセルし、キプロスの大統領と詰めを行っています。最新の情報からすれば24日(日曜日)にも10万ユーロ(1250万円程度)以上の預金者の口座のみから25%の課税を行い58億ユーロの確保を行うことでEUからの支援金100億ユーロの支援をしてもらうという案で議会の採決を行うようです。


前回の採決では賛成者ゼロという散々な結果に終わった議会ですが、今回は賛同を得ることが出来るのでしょうか? ギリシャの支援の時と似た構図だと思います。今回は賛成者ゼロということはないと思いますが、すんなりいくかどうか、私には予想がつきません。仮に否決されればEUからの資金は入らず、銀行は倒産に追い込まれ、市民生活に直接的に影響が出るほか、国家破綻になる公算が高く、その場合、ユーロ圏からの離脱という最悪シナリオも当然、想定の範囲に入ってくることになります。

私がこの問題を当初から一小国の問題で片付けられないと考えているポイントはいくつかあります。

まず、EU、IMF,ECBがキプロスを小国だということで軽く見てしまったことがあります。これはヨーロッパの金融問題の根本原因であったギリシャを小国で解決は容易、としていた当初のステップと同じであります。

二点目にキプロスの銀行の不良債権に端を発した預金課税の案を強く押しているのはドイツ、そして、その首謀者はメルケル首相であります。ドイツはギリシャ支援の際、国内からの強い反発があった中、ユーロの一枚岩を崩さないという姿勢を貫きギリシャ支援では譲歩を繰り返しながらも今日に至っています。しかし、その間、メルケル首相の所属するドイツキリスト教民主連盟は地方選での敗戦が続き、9月の下院総選挙には黄色信号がともっています。よってここは強気の姿勢、つまり、キプロスの自助努力を前面に出さないと不都合という選挙対策が見て取れます。

三つ目にロシア。目立った動きがあまり見受けられませんが、ロシアは相当怒っています。メドベージェフ首相はキプロスのロシア系の預金が凍結されるなどの「被害」が出ていることを鑑み、クリル諸島(含むサハリン)に経済特区を作るよう指示したとされています。クリルに「オフショア」を作るのはキプロス対策ですが、今回の案を発動したEUに対してはその「対策」を示していません。が、ロシアのことですか何らかの思案はあるものと考えるべきでしょう。

ただ、ロシアにキプロスの何らかの資産、たとえば天然ガスの採掘権を譲渡するといったことでロシアがとりあえず、EUの金融支援案を黙認する可能性はあるでしょう。とすればキプロス政府としてはずいぶん高いもののつきますが。

四つ目にキプロスそのものの将来性です。もともと経済的には観光業が主で実態としては租税回避のオフショアとしての経済活動が大きかったと思われます。その資金が凍結され、挙句の果てに資金流出は目に見えています。埋蔵が確認されている天然ガス開発はこれからで(しかもロシアに譲渡しなければの話ですが、)国内経済への打撃は相当なものになると思います。これをユーロという統一通貨でコントロールするならば国民生活への影響は大きくなるとみるべきでしょう。ある意味、アイスランドと似た状況にあるのですが、同国はユーロ加盟前でローカル通貨があったことが幸いし、経済の回復を遂げました。しかもロシアからの資金援助によってですが。よって、キプロスでユーロ離脱問題は今後真剣に討議される可能性もあります。

世の中、歴史を紐解けば地球を揺るがすような世界規模の問題は小さな事件からスタートしてしています。小さな事件ゆえにその処理の仕方を間違える、ということではないでしょうか?

地中海に浮かぶキプロスの空は蒼いのでしょう。しかし、ヨーロッパを中心とした金融市場の雲行きはそう簡単によくなりそうにもならないような気がいたします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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