キプロス問題:ユーロ圏の新たな爆弾、破裂! --- 土居 亮規

2013年03月26日 09:15

いったい何個目なんだか(苦笑)……。はい、というわけでまたまたユーロ圏で破綻危機がやってまいりました。他人事で誠に恐縮ですが、読者の方の中にもそろそろ、ユーロ圏で何が起こっても驚かなくなってきた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

さて、今回のキプロス問題ですが、表面上の問題点は「銀行の不良債権が許容度を超えてしまった! ヤバイ!」というだけの話で非常にシンプルです。ですが、よくよく掘り下げていってみると非常に根深い問題が存在するわけですね。というわけで、順次見て言ってみましょうか。


金融業界のタブー、預金課税!

やりましたね……。厳密にはまだ未遂ですが、やるしかないでしょうね。
理由は後で解説するとして、そもそも預金課税がなぜタブーなのか? 金融業界以外の人に向けて簡単に解説します。

単純な話、「あなたの預金に20%、課税します(=銀行にある現金を5分の1、強制的に没収します)」といわれたらもちろん「ふざけるな!!」といいますよね? そして、その法案施行まで時間があればどうするか? ……当然、銀行から預金を引き出します。世間は「やってみなければ分からない!」という時代錯誤な根性論をのたまう方もあふれていますが、子供じゃないんだからある程度はやってみる前に分かります。

さて、では預金が引き上げられるとどうなるか……? 経済が停滞します。分かりやすくするために日本の例にして説明しますと、銀行のビジネスモデルというのは「年利0.02%の預金金利」という人を馬鹿にしたような低コストで資金を集め、それを資金を借りてビジネスをしたい人などに「年利10%」とかで貸し出していたわけです(今は諸事情により、ここまで単純な図式ではありません)。国が違っても大なり小なり銀行のビジネスというのはこんな感じです。さらに物凄く簡単に考えると、預金を引き出されるということは、この「貸し出し」に使う分の資金がなくなり、その結果として経済が回らなくなってしまいます。

これが預金課税がタブーとされるもっとも大きな理由です。

ユーロ圏のタックスヘイブン、キプロス!

そして今回、ここまで問題が大きくなった根本的な原因がコレ。キプロスというのはタックスヘイブン(租税回避地)なんですね。とはい
え、法人税が0%というわけではなく、ユーロ圏では税率が低い法人税10%、というだけの話なんですが。

コレの何が問題なのか? 大きく分けて2つ。

1.企業が集まってくる

当然、ユーロ圏の中で1-2位を争うほど法人税が低いとなると、企業が集まってきます。そうなると……銀行機能が停止し、ファイナンス(資金調達)が行えないというのは死活問題となります。

上記の例で日本の銀行を出しましたが、ぶっちゃけ日本の銀行は預金を集めたがっておりません(2013年現在)。これは景気の悪さが行き着くところまで行き着いてしまい、資金を借りてまで新しい事業を展開する企業がなくなると同時に、銀行側もこの不景気なご時勢にあまり融資はしたくないという後ろ向きな姿勢になって貸し渋りを行っているからです。これについては今回の主題ではないので省略します。

ですが、これが安い法人税により企業がひしめいているキプロスとなると、事情は変わってきます。日本などとは打って変わってキプロスではいわゆる「お金を借りてでも事業展開をしたい企業」が目白押しです(でなければ、わざわざタックスヘイブンに法人を作る意味がありません。ペーパーカンパニーなら話は別ですが)。

また大した産業がないキプロスとしても、銀行や誘致企業がビジネスを円滑に行い、法人税を納めてもらえなければ国は立ち行きません。
こういった事情から、預金課税という行為はキプロスにとって非常に大きなデメリットとなるわけですね(もっとも、こういった状況にも関わらず銀行の不良債権がリミットを超過してしまうような運営を行っていた事は論外ですが)。

2.周りの国(ユーロ圏)が非協力的

さて例えば。

日本の隣(香港等の海向こうではなく、本当に隣)に法人税が日本の半分の国があったとしましょう。当然、日本の企業はそっちに法人を移しますよね? この仮定を現実にしたのがキプロスです。

当然の事ですが、自国から法人を移転させられてしまった企業は税収が減るわけで、それはもう愉快な事でないのは自明の理です。ですが、どんな小国であろうとも「主権がある」という建前で運営されているため、この税制に対して口を出す(内政干渉する)ことはできません。そんなわけでキプロス周辺の国々は煮え湯を飲まされ続けていたわけです。その中で今回の危機が起こりました。

当然、今まで主権を盾に甘い汁をすすっていたキプロスがいざピンチになって「助けてくれ!」と懇願しても受け入れられるわけはなく、周辺国から「100億ユーロ(約1兆2000億円)の支援がほしければ、まず何とかして58億ユーロ(約720億円)確保しろ!!」という無理難題を押し付けられたわけです。

とはいえ、大した産業もない(で、あるからこそのタックスヘイブンだったわけですが)キプロスが自前でそんな資金を確保できるわけもなく、かといって問題を放置するわけにも行かず、苦渋の選択で預金課税という禁断の果実に手を伸ばした……というのが今回の問題の根本的な問題です。

また国民・GDP等がギリシャにくらべて約10分の1程度と、最悪、ユーロ圏から脱退されても問題がないような小国だったというのも今回の問題の一因でしょうね。

マーケットの動き

実は、ユーロ圏の問題が再発したというだけでメディアが大々的に取り上げているだけであって、マーケットでは大した動きは起こってません(苦笑)。もちろん全く影響がないとはいいませんが、ギリシャやスペインの時の乱高下にくらべるとまるで蚊にさされたようなものです。やはり、規模が小さい国だと危機になったとしても大して重視はされないんでしょうね。それが正しいのか、間違っているのか、という道徳的な問題はありますが、それを横に置いておけばそれが現実だということですね。

以上、キプロス問題の解説でした。

土居 亮規(どい りょうき)
ビジネスライブラリーバタフライ CEO

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