英語教育を抜本的に変える3つの方法 --- 本山 勝寛

2013年03月27日 05:00

TOEFLの大学入試と国家公務員総合職試験への導入が本格的に検討されることになり、学校現場においても、英語学習の質の向上がにわかに課題となりそうだ。そこで、日本の学校における英語教育の改革試案を考えてみたい。


1)日本人の英語教員のレベルアップ

・英語教師資格としてTOEFL(iBT)100点以上を義務化

まずは、英語の先生が英語ができなければ話になららない。2007年度の文部科学省の調査によると、英検準1級以上、TOEIC730点以上、TOEFL(PBT)550点(TOEFLiBTで80点相当)以上を取得している英語教員の割合は、高校で50.6%、中学ではわずか26.6%だったという。

TOEFL(iBT)80点、TOEIC730点では、英語の授業がなんとかついていける程度のレベルであって、決して英語を教えられるレベルとは言えない。高校で半数、中学で4分の3の英語教師が、そのレベルにすら至っていないというのが現実だ。

まずは英語教員のレベルアップから始めなければ、教えられる生徒が気の毒だ。英語圏大学院の入学基準値であるTOEFL100点以上を義務化して、英語の先生たちに真剣に英語を学んでいただきたい。大学入試にTOEFLが導入されるのに、先生は受けたこともなければ、受けたとしてもたいした点数も取れていないでは話にならない。

・英語教員へのTESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages/英語教授法)奨励

英語を教えるには、ただ英語ができるだけでは不十分だ。より分かりやすく教えるための特別な技術を学ぶ必要がある。

アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでは、留学生や移民などネイティブスピーカーではない人たちに英語を教えるための方法を体系化したTESOLという英語教授法があり、その資格や修士コースなどがある。アメリカ等で英語を教えているのは、こういった資格をもった人たちであり、彼らが行うESL(English as a Second Language)の授業は全て英語で行われるが、確かに分かりやすい。日本人のなかでも、このTESOLの修士号修得のために留学する人もいる。そういった英語を教えるという専門性を磨くことを奨励し、給与に差をつけてもよいだろう。

2)オンライン英語動画のフル活用

日本人英語教師のレベルアップを図ろうとしても、一朝一夕にはいかない。TOEFL100点以上を義務化した場合、ほとんどの英語教員が資格はく奪になるかもしれない。そこは時間をかけてでも頑張ってもらうとして、今すぐにできることとして、YouTubeなどの英語動画をフル活用することを提案したい。

この時代、ネイティブの英語スピーカーによる面白くて、ためになる映像が無料で無尽蔵に手に入る。つまらないCD教材を使っていても、ちっとも面白くないので学ぶ気にならないが、面白い映像であれば大量の英語に触れることも苦になりにくい。

英語教員は、生徒が興味を持ちそうな英語映像(アニメやスピーチ、芸能人インタビュー、ハウツー映像など)を授業で紹介し、課題で視聴させたうえで感想や意見を述べ合うなどの工夫をすれば、自分がネイティブでなかったとしても、ネイティブの英語をたくさん聴かせることができる。文科省も失敗が分かっている学習指導要領にこだわり過ぎず、現場の柔軟な指導を認定、推奨すべきだ。

3)英語教育のプロであるネイティブスピーカーを主体にした授業

全国の小中高校には、ALT(Assistant Language Teacher、外国語指導助手)と呼ばれる外国人の英語授業助手が派遣されている。その多くは“JET”と呼ばれる、総務省、文科省、外務省、地方自治体が共同で行う英語圏青年との国際交流も兼ねたプログラムによって日本に来た人たちで、毎年4000人以上にのぼる。

私は、留学先でこのJET出身者と出会ってその存在に関心を持ったのだが、ハーバード教育大学院にも多くのJET出身者が学び、その後、学校やNPO、国際機関、大使館などで働いている。これだけの数の英語圏(主に欧米)の若者を日本に惹きつけるプログラムは他になく、長い目で見た「文化外交」としてはある程度の成果が認められるのかもしれない。

しかし、英語教育の推進という観点からは大いに疑問が残る。多額の予算を費やし、25年間継続してきたにも関わらず、日本の学校現場の英語教育の質は一向に改善されていない。日本人英語教師がうまく活用できていないうえに、時々教室に顔を出したときは、単にアシスタントとして会話をしてもらう程度に留まっているからだ。招聘している青年も英語圏出身の大卒というだけで、英語教師のプロではない。それでいて年360万円の報酬が支払われており、報酬額だけでも約150億円が費やされている計算だ。

同じ予算を費やすなら、上述のTESOL資格者など英語を教えるプロを雇い、補佐的立場ではなく、彼らに英語の授業を主体となって英語のみで進めてもらったほうがよっぽどよい。日本人英語教員はそのコーディネートと補習を行う。もちろん小学生や中学1,2年生には難しいだろうが、高校生ならそのくらいの基礎的な語彙や文法は理解しているはずだ。年俸360万円はアメリカの教職と比べても決して低くはなく、成果を出せば雇用を継続することで十分に引きつけられるだろう。

以上3つの施策を、TOEFLの大学入試導入に合わせて実行するなら、日本人の英語教育が幾分改善されるだろう。全ての日本人が英語を使えるようになるべきとは思わないが、どうせ時間とお金をかけて英語教育をしているなら、より効果のあるやり方を進めるべきである。

本山 勝寛
ブログ「学びのエバンジェリスト

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