IEAの原油生産予測について

2013年03月27日 12:43

IEA(International Energy Agency, 国際エネルギー機関)は、毎年出版されるWorld Energy Outlook などの出版で知られる、28か国が加盟する、エネルギー関係のシンクタンクとしては最もメジャーなものである。 

しかし、21世紀に入り、その予測は、相次いで下方修正されている、例えば、2000年のOutlookでは、2010年の原油の生産量を日量9500万バレル程度と予測していたが、実際には日量8300万バレル程度にとどまっている。

ここでは、IEAの原油産出予測について、 データと共に検証したい。


予測の正当性に関する疑問

前記事で示したように同じくアメリカのEIA(Enegy Information Administration)も相次いで原油生産予測を下方修正している。

IMF-EIA

これは、IEAについても同じことが言える。 しかし、こういった下方修正が相次ぐことは何を意味するのだろうか。普通に考えると、実際の原油生産曲線は、こういった右上がりの直線ではなく、実際には釣鐘型曲線の頂点付近の曲線になっていると考えられるだろう。 つまり、原油生産はピークが近いので、下方修正が相次いでいると考えられる。 

実際、原油生産の時間推移は、次のようなハバード曲線によく適合することが知られている。 

Hubberd-curve2
 

現在は、原油生産のピークに近い状態であると考えられる。

IEAの予測が正しいとしても産出エネルギーは増えない

実は、仮にIEAによる原油産出予測が正しいとしても、ネット産出エネルギーは、ほとんど増えない。 

この事実を解説するために、ここでは、What future for petroleum ?にある物理学者Pagani氏による解説を紹介しよう(元の論説はTuriel氏による、グラフはPagani氏の記事から引用)。

まずIEAのオリジナルの予測(World Energy Outlook 2012)を見てみよう。 
Pagani_Turiel1

下から順に濃い青の部分が、既存の在来型油田、少し薄い青の部分が今後開発予定の油田、水色の部分が、今後発見される油田、薄紫の部分がNGL(天然ガス液)、その上の少し濃い紫の部分が非在来型油田(オイルサンド、深海油田など)、一番上の部分がシェールオイル(タイトオイル)の生産量を表す。 

これを見ると分かるように、既存の油田の生産量は急激に減少するが、開発予定と今後発見される油田の生産により、在来型油田の生産量は横ばいを維持する。そして、その他のNGL、非在来型油田、シェールオイルの生産量の増大により、生産量は2035年まで増大し続ける。  

しかし、これは体積で測った産出量であるから、 ネット産出エネルギーを見る方が正確である。 実際NGLの持つエネルギーは原油の約70%程度であるし、オイルサンドなどの非在来型油田は、エネルギー投資効率(EPR,EROI)が低い=産出自体に必要なエネルギー大きいので、正味の産出エネルギーは見掛けよりずっと小さいので、それを補正する必要がある。 そしてその結果が次のグラフである。  

Pagani_Turiel2

これを見れば分かるように、エネルギー産出で見ると、IEAの予測は、ほぼ横ばいである。

IEAの予測の前提条件は甘すぎる

しかし、そのIEAの予測の前提条件にも、疑義が示されている。 Energy Policy Journalに掲載された、Miller氏の論文について、Future oil supply: The changing stance of the International Energy Agencyに沿って、解説しよう。 

Miller氏の論点の主なものは以下のとおり:


(1) IEA は既存の油田の生産減少を従来の一年に3.5-3.7 mb/d から 3.1 mb/dに下方修正している(mb:100万バレル, d:日量)。 その根拠が何ら示されていない。 根拠がない場合、2030年までにサウジアラビア一国分の生産減少が生じる。  

(2) IEAは原油使用のエネルギー効率の改善を従来の年率2% から 3% に引き上げて需要予測を行っているが、この根拠が何ら示されていない。

(3)  IEA は、ブラジル (2030年までに3.2 mb/d), イラク(+4.5 mb/d), カナダのオイルサンド (+1.7 mb/d)の増産を見込んでいるが、これらの増産には環境面の障害及び、巨額投資という障害がある。 これらの障害についてIEAが検討した形跡がない。
IEAは2030年までに、これら3地域で、940万バレル/日の増産を見込んでいる。 

このように、IEAの予測は、その前提条件が甘いと思われる。IEAの予測がアメリカの圧力で歪曲されたという報道:Key oil figures were distorted by US pressure, says whistleblowerもあるように、IEAの予測が楽観的な傾向にあるのは、政治的な圧力による可能性がある。  

こうした点を考慮して、前節で紹介したTuriel氏のネットエネルギー産出をより現実的なものに改めると、次のようなグラフが得られる:

Pagani_Turiel3

このように、ネットエネルギーは2035年に掛けて減少してゆくことになる。 

IEA Oil-Demand Projection Looks Optimistic: Chart of the Day の冒頭のグラフを見れば分かるように、

    世界の経済成長率 = 原油需要の伸び + 1%

が、リーマンショック前の金融バブルやITバブルなどバブル期を除いてほぼ成り立っている(実際、景気がよくなれば、人やモノの移動が盛んになる)。 これから考えて、原油生産のネットエネルギーの減少は、経済成長と原油使用量のデカップリングの必要性を我々に突き付けていると考えられる。 

これは私見だが、最近のIEAのOutlookは、供給面の伸びよりも、エネルギーの効率化による需要の抑制を強調するようになったように感じるが、これは、供給の増加を予測しても外れるため、今度は需要を小さ目に予測することで、需要と供給を合わせ、供給不安を起こさないような配慮をしているように、感じる。  

毎年、一定程度の正の経済成長を達成するには、エネルギー供給が指数関数的に増大することが必要だが、
IEAの予測でさえ、そうなっていない事実は、経済成長が次第に困難になりつつあることを示しており、上で見たような原油のネットエネルギーの停滞乃至減少予測は、脱石油の必要性を我々に突き付けている。 

そして、現在、石油は運輸部門のエネルギーであるため、脱石油のためには、自家用車の電化だけでは到底足りず、運輸部門でのトラック、バスといったものを、電気エネルギーで動くものに代替してゆく必要があり、これには数十年が必要になるだろう。
 

(注) IEAの予測に対する疑義は、他にもU.S. will not surpass Saudi Arabia’s oil production by 2020など多数ある。 この記事は、前記事に対する池田先生の質問の回答として書いたものである。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑