若手実務者と研究者による政策提言「ネオ・ヨシダドクトリン」

2013年04月04日 02:37

 私とサイバーディフェンス研究所の宮麻里子分析官、そして複数の匿名の実務者及び研究者は、「安全保障政策の再構築 ネオ・ヨシダドクトリン(2013年3月)」と題する政策提言を発表した。今後10年間の安全保障政策について2011年末から2012年5月にかけて議論を重ね、2012年6月に完成したものである。本提言では、若手の複数の実務者と研究者等が忌憚のない意見交換を行い、いくつかの挑戦的な提言を行った。ぜひ、幅広く御議論を頂戴できればと思う。


本文は、以下からダウンロードいただくとして、ここでは特徴をご紹介したい。
 
 提言本文:「安全保障政策の再構築 ネオ・ヨシダドクトリン」(PDF)
 提言紹介ページ:現代外交政策研究所 第1回政策提言

 本提言の第1の特徴は、タイトルにもあるようにヨシダドクトリンを現在の戦略環境に当てはめて再構築したことである。リチャード・サミュエルズは、ヨシダドクトリンを(1)二重のヘッジ、(2)経済重視、(3)米国の安全保障への安乗りを基軸とする概念としているが、我々は、これを2010年代に当てはめた場合の政策を検討した。
 これはある意味で、「攻撃的ミドルパワー論」とも言えるだろう。添谷芳秀慶大教授は、日本を「戦争を政策手段としえないという意味で大国ではない」と位置づけ、ヨシダドクトリンの延長として、日本の国力を大国外交とは違うニッチな分野、例えば多国間協力やPKO・援助等の非伝統的安全保障分野に集中的に「自覚的」に投入するべきとする「ミドルパワー論」を主張した。
 他方、我々はヨシダドクトリンを継承し、日本を「世界大の政策を構想できる程に長くはないという意味では大国ではない」としつつも、軍事的な手段を忌避せず、政治的な悪影響がない範囲に限って、対中抑止の為の日本版A2/AD、対米引きずり込みの為の準中距離弾道弾等を採用すべきとした。本提言は、日本が「大国」ではないと開き直ることで国力の集中的運用を図り、ヨシダドクトリンを堅持するという意味では、「ミドルパワー論」に近い。しかし、軍事的な手段を積極的に活用することを前提としている点を含めると、「攻撃的ミドルパワー論」と言うべきだろう。

 第2の特徴は、これまでの安全保障関係の政策提言より軍事的な側面にフォーカスした点にある。我々は、中国の台頭等、伝統的な国家間の安保イシューの興隆著しい東アジアの情勢を踏まえて、軍事的側面や国家安全保障に焦点を当てることを強く意図し、国際環境とそこにおける脅威シナリオに対する現実的な評価を踏まえた提言を行った。
 
 第3の特徴は、「戦略的外交」とは何かを再検討し、敢えて挑戦的な提言を試みた点である。本提言は伝統的国家安全保障に焦点を当てた上で、サイバー対策等の新たな安全保障分野、軍事的インフラ、自衛隊等の具体的な構成・運用のあり方も含めた広範な防衛政策について、具体的な施策にまで踏み込みんだ。本提言では、捨てられる恐怖回避の為の「イスラエル・モデル」の採用、日本版A2/ADの採用、対中コミュニケーション・チャネルの拡大ではなく集約等、これまで表立って論じられてこなかった選択肢を推奨している。

 なお、本提言は、様々な若手の実務・研究者が現在の立場を越えて率直に話し合い、挑戦的な提言として成果にまとめたものであるため、個々の参加者等の詳細については公表を差し控えているものの、御意見・ご批判等については歓迎している。当研究所(contact@pfpi.info)等へいただければ幸甚である。ご承諾をいただければ頂戴したものの一部については、研究所のHPに掲載する予定である。

 本提言が、諸先輩方の苦闘によって築かれてきた戦後日本の安全保障の議論に少しでも益することを切に祈っております。

站谷幸一(現代外交政策研究所研究員

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