異次元の金融緩和とその行き先

2013年04月05日 22:24

日銀が2012年末に138兆円だったマネタリーベースを14年末に270兆円まで拡大するという。 この黒田総裁の言う異次元の金融緩和の決定に対して、経済界から歓迎する声が上がる一方、驚きと警戒の声も上がっている。 

ここでは、このような政策が取られる背景と想定される結末について(常識的ではあるが)考えてみたい。


日本経済の低成長の原因

最近の日本経済の低迷の原因は何なのだろうか、これについては、何度も述べているが、次の2つである:

(1) 資源価格の上昇、
(2) グローバル化による新興国との競争。

この2つの要因を克服しない限り、日本経済が高成長を取り戻すことは不可能である。

まず(1)は少なくとも短期的には解決方法は存在しない。 それどころか、今後、確実に深刻化すると思われる。 根本的解決には数十年単位の時間が必要だ。  

(2)については、企業の競争力を付けるため、解雇規制の緩和など、企業が身軽になる政策が重要だと思われるが、これも即効性はなく、効果が表れるまでに10年単位の時間が掛かる。 

実は、「不都合な真実から目を逸らさない勇気を持とう」で書いたように、 問題の本質は有限の資源(特にエネルギー)の先進国と新興国とのバイの奪い合いであって、(1),(2)とも少なくとも中期的にも克服可能な問題ではないので、これから日本の生活水準は緩やかに低下して当然なのであるが、国民は、それを認めない、そのため、政策責任者は、国民を満足させようと無理な政策を探すことになる。 

仮想現実と実体経済

そこで、即効性のある経済政策で景気浮揚を図るというのは、自然な考え方のように思える。 即効性のある手法は、2つ、財政出動と金融緩和である。 この中、財政出動は、90年代に散々試して効果がなかった上に、 厳しい財政状況から難しい。 そこで、金融緩和がクローズアップされることになる。

今回の異次元の金融緩和は、マネーという仮想現実の世界への操作であるから、即効性がある。 

しかしながら、景気低迷の原因である、資源価格の上昇と新興国との競争、そのものには、直接働き掛けない。 円安誘導により、多少の輸出競争力の増強にはなるだろうが、一方で資源価格の上昇は大きい。既に昨年より20%程度の円安になっているが、これだけで化石燃料費が年間5兆円も上積みされる。これは消費税2%分に相当する負担増である。これほどの円安は、日本経済にマイナスだと思われる。 

何れにしろ、この政策は、「新たな量的緩和の効果」で池尾先生が述べられているように、はっきりと定量的に効果の期待できる確実な波及チャネルがあるわけではないし、 財政法第5条で禁じられている財政ファイナンスに当たることは明らかだ。

しかし、本当の問題は、こういった効果の有無といったところにはない。 一番本質的な問題は、仮想現実と実体経済の乖離 (=バブル)と、そのタイムラグである。 

金融という仮想現実を操作する問題点は、仮想現実の操作はノーコストで、しかも即効性があるため、マネーという仮想現実が実体経済に先行して肥大し易いことである。

今回の日銀の緩和策でも発表直後に株価は大きく上げ、長期金利は下がり、為替は円安に大きく振れた。 これは期待先行でバブルが発生したことを意味する。 たとえバブルが発生しても、短期間の中に、実体経済が、それに追い付く形でギャップを埋めてゆけば、問題は起きない。  

しかし、短期間でギャップを埋めることが可能なのは、実体経済が何らかのショックで本来の成長軌道から外れている場合に限られ、現在の日本経済のように本質的な問題で経済成長が低下している場合には、問題の解決に長い時間が掛かるため、短期的には仮想現実と実体経済の乖離は拡大し続けてしまうし、中期的にも、資源価格の高騰も、新興国との競争もなくならないため、マネーの膨張と実体経済の停滞ないし縮小が同時に起きて乖離は拡大する。 

結局、バブルはいずれ崩壊し、そのツケは、何らかの形で、国民が払わなくてはならない。 これは自明の理である。 それは、この場合、国債バブルの崩壊という形を取るだろうし、全ての資産バブルは清算を余儀なくされるだろう。  

「不都合な真実から目を逸らさない勇気を持とう」で書いたように、先進国の経済成長は詰んでいる。 無理に成長させようとすれば、バブルを起こすしかないが、リーマンショックに見られるように、そのツケは大きいのだ。

マネーは経済を写す鏡だが、鏡に映る像だけを修正しても実体は変わらない。 人々を豊かにするのはエネルギーであって、マネーではない。 マネーという仮想現実に捉われることなく、 不都合であっても、ありのままの現実に、正面から向き合う勇気を持ちたい。 

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