サモア航空の「体重別の航空運賃」は世界に広がるだろうか?

北村 隆司

「やせれば運賃下がります」と言う見出しで日本の新聞に報道されたサモア航空の新運賃体系が世界でも話題になっている。

サモア航空が昨年11月に導入した新運賃体系は、座席ごとに料金を一律に課す代わりに、乗客の体重と荷物の重さのみを基準として航空運賃を算出する方式で、当初は現地の話題になるだけだったが、今月から隣国のアメリカ領サモアへのサービスを開始して「国際航空」の仲間入りするやいなや、「世界初」の試みとしてマスコミの注目を浴びる事になったようだ。


武蔵丸や小錦を生んだ民族だけあり、サモアには肥満の人が多いことで知られており、この運賃制度は“肥満差別”だと言う反対意見が多いと思いきや、子供は体重が軽い分割安になるため、子沢山のサモアでは親子連れには好評だという。

因みに、2008年の世界保健機構の統計に依ると、サモアの肥満度は世界で4番目で、人口の60%が肥満とされおり、サモア航空は国民が健康について考えるきっかけにもなると自画自賛しているらしい。

サモア航空は南太平洋の島国サモアを拠点として昨年発足したばかりの会社で、所有機は9-10人乗りの Britten-Norman BN2A 1機と乗客3人乗りの Cessna 172をそれぞれ1機しか保有していない、多分世界で一番小さな国際航空会社であろう。

南太平洋の超小型航空会社が考え出したこの新(珍?)運賃体系が、直ぐに世界の主流に成ると言う見方は少ないが、運賃問題の専門家を中心に可也の論議を呼んでいる。

燃料費の高騰が続く今日、航空運賃と積載重量の関係は馬鹿に出来ない。特に小型機の運用に頼る小規模航空会社にとっては、重量と料金の関係は死活問題である。

制度や永年の慣行に慣らされた”常識“は、意外に”不合理”なことも多く、この“前例”の無い料金制度で航空機の運用が合理化され、燃料差額が必要なくなるなどの効果が出れば「体重ベース」の運賃体系は、画期的な試みとして評価されるかもしれない。

果たして、サモア航空の新運賃体系が、我々の価値観と将来の世界の航空界の常識を変えるきっかけになるかどうか? 

誠に興味深い、南太平洋発の試みである。

2013年4月6日
北村隆司