日銀の加速する不動産バブル

池田 信夫

日銀の黒田総裁が打ち出した新政策は、たしかにサプライズだった。政策目標をコールレートからマネタリーベースに変更して2年で倍増するというのもすごいが、長期国債(平均残存期間7~8年)を大量に買うのも驚きだ。この結果、長期国債の7割を日銀が買うことになり、民間銀行が国債市場からクラウディングアウトされる。

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東証REIT指数


その結果、あふれた資金は株や不動産に向かうだろう。今でも住宅ローンの金利は10年物で1.35%と過去最低水準になり、東証REIT指数は図のように半年で6割以上も上がって、2007年のREITバブルのときを上回った。ここまでは株と同じく、リーマンショック以来、萎縮していた市場が活性化したと好意的に見ることもできるが、ここへさらに余剰資金が流れ込むと、未知の領域だ。

REITの価格は、理論的には家賃の収益還元価格で決まるが、半年でオフィス収益が6割も上がるとは考えにくい。不動産業者によれば「短期の回転売買のためのような物件が多い」とのことなので、ますますいつか来た道に似てきた。そのうち銀行が余った金で地上げ屋を使い、低利融資つきで中小企業や退職老人に投資物件を買わせる――という80年代のパターンが再現するのではないか。

日銀は国債を買い占めて実質的な財政ファイナンスに踏み込んだが、これが国債・株・不動産のバブルを同時に引き起こすと、今年の日本経済は大荒れになるだろう。アゴラ金融セミナーアゴラ経済塾では、こうした問題について解説する(途中からの参加も可)。