シェール革命のバブル的側面 

2013年04月09日 17:48

池田先生の記事:「シェール革命の夢と現実」を拝見したが、 楽観的に過ぎるように感じた。 シェールガス、シェールオイル井の生産の急激な減衰曲線などのデータを見る限り、シェール革命は過大に喧伝されているように思われるのである。 実際、シェール革命については、バブルではないか、という専門家の指摘も数多くある。 

ここでは、シェール革命が、バブルに過ぎない可能性についてデータを元に考えたい。 


シェール革命はアメリカプロパーの話

池田先生の記事の

世界のエネルギー産業では70年代の石油危機以来の激変が起こっている。エネルギー輸入国だったアメリカは、「シェール革命」によって天然ガスの輸出国になるばかりでなく、シェールオイルで2020年には世界最大の産油国になる、とIEAは予測している。オバマ米大統領は今年の一般教書演説で「アメリカは今後100年分の天然ガスを国内で自給できる」と宣言した。

という記述を見ると、何だかすごいことが起きていると思ってしまうが、冷静に考えるとIEAのシナリオでは2020年に於けるシェールオイル生産は日量400万バレル程度で、世界の原油生産の僅か5%にも満たない量であり、OECDが、2020年の原油価格は1バレル150-270ドルになるという予測していることが示すようにシェールオイルの生産増で原油が安くなるわけではない。

このことが示すように、シェール革命は、今後世界に波及する可能性もあるとはいえ、今のところアメリカプロパーの話であるし、これから述べるように、それも誇張されている可能性がある。  

100年分のガスのからくり

オバマ大統領の「アメリカは今後100年分の天然ガスを国内で自給できる」という宣言は、実は根拠がない政治的発言である。 このことをBerman氏の論文:After The Gold Rush: A Perspective on Future U.S. Natural Gas Supply and Priceに沿って解説しよう。

アメリカのガス埋蔵量はPotential Gas Committee (PGC)が二年おきに発表する。 オバマ大領領の演説も、このデータに基づいている。このデータの埋蔵量はproven(確認埋蔵量),probable, possible,speculativeの4つのカテゴリーに分けられ後に行くほど不確実性が高い。 

オバマ大統領はPGCの4つのカテゴリーの埋蔵量の合計(2,170兆立法フィート) を2010年のアメリカのガス消費量24兆立方フィートで割って90年から100年分のガスがあるとしている。しかし、この埋蔵量の大部分は濃集が足りず産出不可能かあまりに地中深くにあり産出できない。 従ってproven reserve以外の3つのカテゴリー全ての埋蔵量が産出できるとするのは誤りである。そこでprobable reserveの半分が産出可能だという楽観的な仮定の下で、生産可能な埋蔵量を計算すると次のようになる:

After%20The%20Gold%20Rush_Page_04_04_0

即ち23年分という結果になる。

このように100年分の天然ガスの話は、大きく誇張されたものである。    

シェールガスブームはバブルなのか?

米石油・天然ガス開発会社のGMXリソーシズは1日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を、オクラホマ州の裁判所に申請したと発表した。米国では新型天然ガス「シェールガス」の生産量が急増した結果、ガス価格が低迷。資金繰りが行き詰まった。
 

このことが示すように、現在の100万Btuあたり3ドル前後という価格は、シェールガスの生産コストを大きく下回っている。 現在の安いシェールガス価格を前提に、日本にシェールガスを輸入してエネルギーコストを下げようという話をしても意味がないと思われる。 実際にシェールガス価格が生産コスト以上に上がった場合には、現在のLNG輸入コストを下げられない可能性が高い。

The Fracked-up USA Shale Gas Bubbleが指摘するように、シェールガスブームはバブルの可能性がある。 シェールガスの現在の生産コストは100万Btuあたり8ドル前後とBerman氏は評価しているが、今後、生産効率のよいスイートスポットを掘り尽くせば、さらに上がる可能性は高い。 シェールガスが持続可能な価格になった場合には、決して安いエネルギー資源とは言えないだろう。 

【注目論点】米シェールガス革命は本物かを見ると

大阪経済大学客員教授の岩本沙弓氏は、「Voice」3月号「日米が向かう大バブルへの道」でこう指摘する。
「過去の経緯に鑑みれば、バブルを看過する政府や金融当局がいて、相場の変動から利益を狙う投機家が存在する以上、シェール革命がバブル化する可能性は否めない。オバマ政権の第二期目の2013~15年にシェール・バブルが生成され、16年の次期大統領選挙前後に破裂となるのではないだろうか」

とか

投資家のジム・ロジャーズもシェールガス・ブームに懸念を示す。同じく「Voice」3月号でのインタビューでこう話している。
「シェールガス・ブームについて、報道ではよいことしか述べられていません。しかしじつのところ、それほど明るいニュースではないのです。実際のリグ掘削はこの2~3年で75%減少していますし、シェールガス田用に注文されたポンプの数も50%減っている。掘削した井戸は寿命が非常に短いことがわかったのです。最初の30日はたくさん産出しますが、その後、急に減少する。米エネルギー省も、今年は、シェールガスの産出は2~3%増えるが、2014年には減少する、といっています」

とあるように、シェールガスブームにはバブルの側面がある。 私もシェール革命が、アメリカ経済の復活を世界に印象付けるために演出されている可能性について懸念を持っている。 

経済成長には、安くて豊富なエネルギー資源が不可欠であるが、現在の状況は、エネルギー資源は豊富にあるが、安いエネルギー資源は払底しつつあるという状況のように思われる。 問題はエネルギーコストであって、エネルギー資源の量ではない。 我々は、○○年分のエネルギーといった、埋蔵量に惑わされることのないようにしたい。 

補足 IEAにしろEIAにしろシェール革命でエネルギー問題が解決するとは言っていないわけで、アメリカがエネルギー輸出国になるかも知れない、と言っているだけです。 この可能性はあると思いますが、世界のエネルギー供給の中では数%の変化に過ぎません。 従って、このことを強調して、エネルギー問題に解決の道筋がつく、あるいは安くて豊富なエネルギーが手に入るというのは全く根拠のない話です。 よくある論法は、○○年分の埋蔵量があるから安心だ、というものですが、これはナンセンスです。 楽観論を述べるのなら、IMFやOECDの原油価格予測を覆す必要があります。

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